九里の国大名 九里秀平05
わたしたちは前線に到着する。
見晴らしのいいところで不知火軍を待ち伏せることにする。
こういった戦いは虎丸のおかげで慣れている。
最初は恐怖を感じたものだった。
だが、おかげでそれなりに力もついた。
横には、赤鬼と双璧をなす実力者、伊刈高広がいる。
こいつは臆病なだけに、ある意味、赤鬼よりも強い。
赤鬼は単騎であれば最強だったが、まったく連携をとることはなかった。
力で押していくタイプ。
そういうのは、打つ手もある。
だが、伊刈は違う。
太った小男でそれなりに剣の腕もある。
それだけでなく、伊刈の軍は生きているように戦う。
それから、どんな汚い手でも平気で使う。
虎丸がこいつを斥候に使っていたのは適役だった。
こいつのおかげで何度も死線を潜り抜けたことがあるのだった。
「九里殿、何かいやな感じがします」
「そうか」
こいつの危険に対しての嗅覚。
まるで災害を察知する動物のようであった。
普通の軍に対峙しただけでは、伊刈はこんなことを言わない。
相当に注意が必要な相手なのだろう。
まともに戦ってはダメだ。
相手の力を見せてもらって、早く引き上げるに限る。
相手は5人を先頭にゆっくりこっちに迫ってくる。
真ん中にいる背の高いのがたぶん不知火天外。
その右横には長髪の術師の服の男、左横には蛇の目傘をもった少女。
大将が一番先に出てくるなんて、虎丸と同じだ。
こいつも自分の力に絶対の自信を持っているのだ。
その横には小山のような大男、顔に仮面をかぶった子供。
それなりに雰囲気をもった5人だ。
たぶん敵の主力だろう。
いきなり、やつらの後ろから無数の火の玉が飛んでくる。
あれは矢や銃ではない。
妖術っていうやつだな。
彼らの後ろには、鎧に身をつつんだ兵士ではなく、フードをかぶって杖をもった術師が続く。
こいつらは、妖術で戦うのだ。
これはまずい。
武であれば、猫丸殿たちは負けることはないだろう。
だが、こういった力はまずい。
力で押してもだめなのだ。
たぶん、火の玉程度というわけではないだろう。
これはすぐに逃げるだけというわけにはいかない。
見極めてやろう、不知火の力を。
わたしは伊刈と目を合わせ、次の行動にうつるのだった。




