女神ツクヨミ01
それにしてもあの猫丸が最強だったなんてね。
オオクニヌシさまもちゃんと言っといてくれたら、あんなことしないのに。
オオクニヌシさまって温厚だけど、若い者を信用しすぎだよ。
わたしがオオクニヌシさまの下に配属されたとき、みんなうらやましがった。
それはオオクニヌシさまが他の神と比べてやさしいからだ。
だいたいの神は神のくせに人格が崩壊している。
人間を導く立場なのに、どう見ても手本になる人格者は少ない。
その少ない中の一人がオオクニヌシさまだ。
ただ、先輩には一番厳しいと言う神もいる。
それは、オオクニヌシさまの教育方針。
自分で考えなさいって方針だ。
たぶん、今回のことの責任はオオクニヌシ様がとるつもりなんだろう。
下界のパワーバランスを大きく狂わせたことを他の神が知ったら。
オオクニヌシ様にどうするつもりだって詰め寄るだろう。
特にオオクニヌシ様は多くの神に慕われる存在。
次の大神のひとりと目されているのだ。
そのオオクニヌシ様の失敗を待ちわびている勢力もあるのだ。
それがイザナミとイザナギの双子だ。
イザナミは女神でイザナギは男神。
彼らにこのことを知られたら、とんでもないことになるだろう。
わたしたち神は下界であがめられればあがめられるほど、力が強くなる。
「あら、ツクヨミちゃん。
浮かない顔してるわね。
何かあったの?」
あ、やばい、イザナミだ。
うわさをすればなんとやらってやつだ。
とりあえず、やりすごそう。
「いえ、なんでもありません」
わたしは目を合さないようにする。
「ほんとに?
なにか、虎丸の息子の猫丸が九里を打ち負かしたらしいじゃん」
え、こいつわかってんの?
わたしはイザナミの目を見てしまう。
「聞くところによると、猫丸が猫獣人になっていたって聞くわ。
なんでかなぁ。
あそこってオオクニヌシの担当地域だったよね。
ツクヨミさん、何か知ってる?」
「それは…」
「だれかが呪いをかけたらしいわ。
これって大問題だよね」
イザナミはそう言って意地悪そうな笑いを浮かべるのだった。




