神界02
「オオクニヌシのやったことは神としてやってはならないことだと思います。
先に失脚したヤソガミと同じく、左遷するのが適当だと思われます」
イザナギが追い打ちをかける。
ヤソガミが飛ばされた理由は、伏せられていた。
人間に負けたなんてことは公言できることではなかった。
そのことは関係者以外に知らせることはなかった。
「そうね。
オオクニヌシが地上の混乱を狙ったのなら大問題ね」
アマテラスは地上のモニターを見て考える。
「ほら、また猫丸は公務を放棄して、屋根の上で遊んでいるではないですか。
こんなことでは日輪の国は治まりません。
すぐにまた元の戦国時代に逆戻りです」
イザナミはアマテラスに進言する。
「猫丸は猫になったってわけね。
わかりました」
アマテラスはオオクニヌシの方を向く。
「はい、猫獣人となってしまいました。
それは猫丸殿がこの世界を救わないともとに戻りません」
「オオクニヌシ!」
アマテラスは声を大きくする。
その後ろでイザナミとイザナギはほくそ笑む。
「グッドジョブ」
アマテラスは笑って親指を立てる。
「えっ?どういうことですか。
オオクニヌシは日輪を無茶苦茶にしたんですよ」
イザナギがアマテラスに確認する。
「だから、猫ちゃんが日輪を治めているんでしょ。
すごく楽しいじゃない」
「ええ、でも。それでは日輪の平和は…」
「よく見てみなさい。
日輪の国の民たちの幸せそうな顔を、町の活気を」
壁一面に日輪の国の様子が映し出される。
それは、もはや鬱屈とした戦国の時代ではなかった。
活気ある市場、楽し気に畑を耕す農民たち、芝居小屋の前の喧騒。
民たちの顔は笑顔にあふれている。
「とにかく、日輪の国の戦国時代は終わったのです。
ね、オオクニヌシ」
「はい。これから平和な時代が訪れるでしょう」
「そうね。猫ちゃんがこの国を治めているんだからね」
アマテラスとオオクニヌシは顔を見合わせて笑いあうのだった。