因幡の国忠臣 木島吉嗣25
「そろそろ疲れてきたようだな」
「そうにゃん。
疲れてきたニャン」
「それが人間の弱点だ。
神はこれくらいで疲れることはない。
一週間くらいは余裕でたたかうことができるのだ」
「戦うのはめんどくさいニャン。
もうそろそろやめるニャン」
「では降伏するのか」
「猫丸も成るにゃん」
「え?成るだって?
玉と金は成ることはできないだろう?」
「それは将棋の話ニャン。
猫丸は成ることができるにゃん」
玉が成るだって?玉の裏ってたしか何も書いてないだろう。
「では行くにゃん」
「無駄だ。おまえごとき、俺に勝つことできない!」
「わからないにゃん」
そう言って構える。
猫丸殿が視界から消える。
どうして?
いきなり、スサノオの前に現れる。
猫丸殿は剣を一閃させる。
紙一重でスサノオはそれを避ける。
スサノオの頬に一筋の傷。
猫丸殿は一度離れる。
「玉が成ったら無だニャン
無は剣術の極意だニャン」
若殿はまた気配を消す。
「そんな、小手先の技、俺には通用しない。
俺は戦神だ。
見えなくてもおまえの剣に対応することができる」
「そうかなニャン。
しかし、ぼくは剣術を極めているニャン。
剣術の極意は無であり有だにゃん」
そう言っていきなり現れ剣撃を加える。
スサノオはそれを避ける。
スサノオの顔に笑みが浮かぶ。
この程度なら避けられるという余裕。
しかし、次の瞬間その笑みは消える。
スサノオの前に2人目の猫丸殿が現れる。
そして後ろには3人目、右には4人目、左には5人目。
その剣撃がスサノオを捉える。
スサノオは猫丸殿の剣撃を受け、後ろに飛ばされるのだった。