因幡の国忠臣 木島吉嗣20
ただ、オロチは牛鬼殿と駛馬殿を退けた武神。
その武力は本物だ。
いままで、因幡城の城門を破ったものはいない。
それは駛馬殿と牛鬼殿が腕自慢たちを退けたからだ。
その中には世に名を知られた武芸者もいた。
それなのに2人をまとめて葬ったオロチ。
ただ、成ったとはいえ、こいつは簡単にはいかない。
「おれの相手は誰だ。
おれはいままでの奴らといっしょにするなよ。
いままでのやつらは下級神。
おれは中級神だ」
「そうかヒーン。
しかしこっちも引けないなヒーン」
「わしらもいままでのわしらではないモー」
駛馬殿牛鬼殿も構える。
この人たちも元気になっている。
「おまえらさっき貫いたはず」
「ああ、これで防いだヒーン、
まあ、かなりのダメージだがなヒーン。
少し休んだから大丈夫だヒーン」
駛馬殿は上半身を覆う帷子を見せる。
「ああ、俺もだモー」
牛鬼殿も同じだ。
「つめが甘かったようだな。
人間ごときと思っていたが、本気でいかなくてはならないようだ」
「望むところモー」
「いや、ここは俺に行かせてくれヒーン」
「わかったモー。
敵がひとりならいくら強くてもひとりで当たるもモー。
それがわしらのやり方だったなモー」
「ああ、悪いなヒーン」
「おまえらバカか。
俺の力はわかっているだろう」
「ああ、だから自分の力を試したいんだヒーン」
駛馬殿はそう言って着ている帷子を脱ぐ。
そして、地面に落とす。
ズシンという感じで地響きが伝わるような感じ。
どんだけ重いもんきてたんだよ。
「待たせたなヒーン」
そう言って駛馬殿は腰の位置に槍を構えるのだった。