因幡の国忠臣 木島吉嗣17
「鹿ちゃんずるいウサ」
もう一度飛び上がって、スクネを踏み潰す。
もう伸びてるのに、追い打ちをかける。
たぶん、死んだな。
「なんかこのデブむかついたシカ」
「うちもウサ」
2人はハイタッチをする。
極悪兎鹿コンビ復活だ。
「使えねえな。
まあ、ノミノスクネはただの荷物持ちだからな。
しかたねえか」
ヒノカグツチが前に出てくる。
「こんなモブ。おまえで十分チュウ」
根津吉殿は羽無殿を前に押す。
羽無殿はヒノカグツチの前に出る。
「モブだと!」
「違うハム。
言ったのは根津吉殿ハム」
「じゃあ、強いのかチュウ」
「それほどでもないハム」
「何だと!」
「いや、ちょっとは強いハム。
え、違って強いハム」
「この鼠野郎共、2人でかかってこい!」
「2人で戦うほどでもないハム」
申し訳なさそうに言う金色ハムスター。
相手は神だぞ、大丈夫か。
怒り心頭のヒノカグツチは炎に包まれる。
彼が持つ刀も炎をまといはじめる。
「全部燃やしてやる」
カグツチはそう言って羽無殿のところに飛び込んでくる。
金色のハムスターは逃げない。
カグツチを迎え撃つ。
羽無殿も走る。そしてカグツチと交差して離れる。
そのとたん、カグツチの炎の刀が落ちる。
いや刀だけではない。
それを握っている腕も肘のところから斬られて落ちているのだ。
「もしかして、このハム野郎も神の力を」
「いや、これは剣技ハム」
「どうしてだ。炎は斬れないはずだ」
「これは剣の理ハム。
炎にも弱点はあるハム」
「炎は最強だ。それに神の炎だ。おまえ如きに斬れるものじゃない」
「いや、神の炎であろうと、空気がないと燃えないハム。
だから、真空斬りをしたハム。
刀を高速で振ることによって真空空間を作り出すハム。
たいした技じゃないハム」
いや、やばいだろ。
剣の達人、天才だからできる技だろ。
「そんなことできるわけない。まぐれだ」
カグツチはもう一方の掌を羽無殿にかざす。
その掌から炎の竜が現れ羽無殿を襲う。
しかし、炎の竜は細切れにされて消える。
そのまま、走り込む羽無殿。
すれ違いざま、もう一方の腕も落ちる。
「もうやめておくハム」
羽無殿はそう言って振り返りカグツチを睨む。
カグツチは蛇ににらまれた蛙のように座り込むしかないのだった。