閑話休題02
「数年前も同じようなことがありました。
八十神様という神が手っ取り早く日輪の国を治めようとしたのです。
八十神様っていうのはわたしの先輩神で、わたしの教育係でもありました。
わたしは彼の荷物持ちをさせられていたのです。
彼はアマテラス様に次ぐ神で、手っ取り早く日輪の国を治めて自分の手柄にしようとしたのです」
オオクニヌシは語り始める。
「そのころ、将軍である京極家は二つに別れていました。
って言っても、別に大きな戦があったわけではありません。
都は一種のお家騒動が長年続いていました。
もちろん、自分のことで精一杯な将軍家の目は地方に届かなくなっていました。
それで地方の武士団が力をつけ始めました。
それが、戦国大名となっていくのです」
「そんなことわかっています。
今はそれどころじゃないです。
今にも、猫丸たちがやられそうなときにそんな話」
「黙って聞きなさい。
八十神様はその将軍家の一方に与して泥仕合のようなお家騒動をおわらせようとしたのです。
方向としては正しいのかもしれませんが、それは人間の力で行わなくてはならないのです。
決して神が行うべきではないのです。
八十神様は京極正教に味方しました。
それに対して京極正親は地方大名に助力を求めたのです。
その一人が因幡虎丸でした。
虎丸は八十神様と戦って惨敗しました。
しかし、神が参戦したということに憤慨した一団がありました」
「まさか、それが」
「はい。猫丸殿を中心とする将棋隊です。
神と戦うために全国から猫丸殿のもとに強者たちが集まりました。
神との戦いは苦戦の連続でした。
八十神様はスサノオと違って上級神です。
それでも最後に猫丸殿が八十神様を退けたのです。
神界に追いやられた八十神様は失脚することとなりました。
結局、八十神様の思惑は外れましたが、お家騒動は終わったのです。
そのかわりに将軍の力は地に落ちました。
戦国大名が好き勝手に領地を増やし始めたのです」
「それでは、猫丸たちは…」
「はい。しかし、可能性の問題です。
ただ、スサノオは下級神です。
八十神様ほどの力はないでしょう。
それに、猫丸殿たちは獣化の呪いを受けているのです」
オオクニヌシはうなづく。
「わかりました」
「それでは見守りましょう」
そう言ってオオクニヌシは因幡の国のモニターをのぞきこむのだった。