閑話休題01
「オオクニヌシ様。
神が人間の世界に手を出してはいけないのではありませんか」
ツクヨミは神の国から人間界を覗いて言う。
「ええ、しかし、そういう輩もいるのです。
我々は見守るだけなのです。
ただ、それが我慢できない神がいるのです。
気が短い神がね」
オオクニヌシは穏やかな顔でツクヨミに答える。
「でも、それは禁止されたことなのでは」
「そうですね。
しかし、それでも我々にはなにもできないのです」
「それでは、人間は彼らにしたがうしかないのですか。
そんなこと納得できません」
「ただ、神界も動き出しています。
彼らを罰するためにね」
「それまで、ほっておけというのですか?」
「あれっ、ツクヨミくんは猫丸殿には日輪はまかせられないと言ってませんでしたか。
猫丸くんがやられたところで、特に問題はないはずでしょう」
「え、しかし。
あのバカの肩を持つつもりはありませんが、神界のルールはルールです。
何か打つ手はないのでしょうか」
「なかなか猫丸くんに入れ込んでいるみたいですね。
しかし、今我々にできることはありません」
「そんなことはありません。
ただ、猫丸が日輪を平和にしたら呪いは解けるのです。
それなのに、こんなことになってしまうなんて。
今からわたしが行って、スサノオを止めてきます」
「それは許しません。
そんなことをしたらあなたまで罪を犯すことになってしまいます。
それに」
「それに?」
「どうも後ろで手を引いている神がいるようです。
それと、人間界の自浄作用もバカにしたものではありませんよ」
「どういうことですか?」
「すこし昔の話をしましょうか。
って言ってもそんなに昔ではありません。
ほんの数年前の話です」
そう言ってオオクニヌシは微笑みを浮かべた。