因幡の国忠臣 木島吉嗣11
「なかなか多多才だな。
しかし、わたしには効かん」
ヒルコがそう言ったとたん腕を覆っていた氷が砕ける。
こいつには有効な攻撃はないのか。
頭に葉っぱを乗せて考えるたぬ姫。
その腕にヒルコの伸びた腕が絡みつく。
そして反対の腕にも。
ヒルコから次々と触手が伸びてたぬ姫の足にも絡みつく。
たぬ姫の四肢はヒルコの触手に囚われている。
「さて遊びはこれくらいにしておきましょうか。
人間、いえ獣人にしてはよくやったとほめてあげましょう。
しかし、神に逆らうなんて無駄なことだと教えてあげないとならないですね。
さっきから、頭が悪いのか。
超えられない力の差があることがわからないみたいですからね。
獣人になったらバカになるっていいますからね。
獣人にもわかるように神の怖さを見せてあげましょう」
ヒルコはそう言うと、たぬ姫を持ち上げる。
みんなに見えるように高く。
そして、まさか。
触手はたぬ姫の身体を引っ張る。
このまま、裂こうというのか。
やめろ。
そのわたしの願いもぬ虚しく、触手はたぬ姫の身体を引っ張る。
「たぬーたぬー」
たぬ姫は身体を捩って逃れようとするけど無理。
わたしも駆け付けて斬ろうとするが、他の触手に阻まれる。
たぬ姫の身体が伸びきる。
だめだ。
そう思ったとたん、その身体は弾ける。
そう引きちぎられる。
「たぬ姫!」
「ウサ!」
「シカ!」
仲間たちから悲鳴のような声が上がる。
「恐れろ、獣人ども。
お前たちごときがわれらに勝てないことを思い知るのだ」
ヒルコはそう叫ぶ。
そういえば獣は無駄な戦いはしないという。
死の窮地にない限り、勝てない相手には挑まない。
わたしはアニマル軍団を見る。
将棋隊は、ひとり残らず、ヒルコを睨みつけるのだった。