因幡の国忠臣 木島吉嗣04
上手い。
大男は足を攻撃するのが定石。
どうしても体重を支えている膝に弱点があることが多い。
羽無殿と根津吉殿は一本づつの足をターゲットとしたのだ。
あのタイミング、たぶん刀で足を斬ったはず。
「ちっ、刀が通らないチュウ」
「硬いハム」
2人の攻撃はきかなかったようだ。
「わしにはその程度の攻撃は通じん」
羽無殿と根津吉殿は跳ぶ。
そう、足がダメなら、攻撃されにくい上の方。
頭が弱点?
あきらめず切り返す。
それが阿吽の呼吸で行われる。
それも達人レベルの2人がだ、
ただ、ノミノスクネはそれをまとわりつく蚊を払いのけるような感じだ。
まったく、ダメージを受けない。
羽無殿たちはいろいろな攻撃を試す。
しかし、攻撃は通じない。
「あーうっとおしい。
なにをしても無駄だ」
そう言って張りてを繰り出す。
普通なら捕えられないスピードだが、さすがにが神といったところか。
羽無殿が吹っ飛ばされる。
「羽無っ」
一瞬、根津吉殿が羽無殿を見る。
それが一瞬の隙になる。
このノミノスクネ、巨体なのに動きが速い。
根津吉殿の動きを捕えている。
そして、根津吉殿を張りてで捉える。
羽無殿と同じく吹っ飛ぶ根津吉殿。
なんとか羽無殿も根津吉殿も立ち上がるが、勝機はない。
でも、また走り出す。
どこか痛めているのかさっきのような鋭さはない。
そういえば、獣は人間ほどの持久力がないっていう。
人間より速く走れるが、長く走ることができない。
もちろん頭を使わないから、ペース配分なんてできない。
全力で敵を倒すだけだ。
それが獣の戦い方なのだ。
何度も張りてで飛ばされる。
でも、すぐに立ち上がる。
「弱い。
しかし、うっとおしいな」
そう言ってノミノスクネは、羽無殿たちを睨みつけるのだった。