因幡の国忠臣 木島吉嗣03
羽無殿と根津吉殿を睨みつける男。
その圧は凄ましい。
本当に神かもしれないと思ってしまう。
普通の人間ならこれだけで動けなくなるだろう。
「神が人間に手をあげるとは、おまえらのほうが邪神じゃないかチュウ」
「この俺が邪神だと!」
「そうだチュウ。神なら人間社会のことに手をだしたりはしないチュウ」
「おまえら獣人は猫丸の仲間だな。
一緒に倒してやるよ」
「上等だチュウ」
根津吉殿は少し離れて構える。
根津吉殿は羽無殿に比べて冷静さに欠ける。
ブラックアニマルズはけんかっ早いのだ。
「スサノオ様が出るまでもありません。
わしがこんな奴ぶっ飛ばしてやります」
小山のような大きな男が前に立ちふさがる。
人間というより巨人。
それにくらべて根津吉殿と羽無殿は小柄なほうだ。
「わしはノミノスクネ。
スサノオ様につく神だ」
「俺は将棋隊8の歩、清水根津吉だ」
「ぼくは9の歩、羽無太郎左衛門」
羽無殿と根津吉殿が名乗りをあげる。
最強の将棋隊が2人がかり。
それだけの強敵認定なのだろう。
将棋隊のみんなは気負いがない。
わたしなら下手な面子にこだわって一騎打ちを挑むだろう。
だが、羽無殿は勝てる方法を考える。
われらは負けてしまったらなんの意味もないのだ。
根津吉殿が走る。
同じタイミングで羽無殿が走る。
べつに合図をしていた感じはない。
以心伝心って感じだ。
敵はどっちを攻撃していいか迷う。
その迷いは羽無殿たちのスピードから考えて命取り。
結局どっちも捉えられない。
それに低い攻撃は大男にとって弱点。
2人はノミノスクネの足元を走り抜けるのだった。