男神イザナギ01
「八角がやられただって?」
「ええ、猫丸と因幡のやつらと戦って全滅したのよ」
妹のイザナミが悔しそうに言う。
「ありえないだろ。
俺が最強の呪いを与えたんだぞ」
「それでも、猫丸にかんたんにひねられたみたい」
「俺の力はアマテラス様に匹敵するんだぞ。
それを…」
「でも、負けたのは事実です」
「イザナミ、俺が呪いをかけたんだぜ。
それに、獣化すると力は数倍になるかもしれないが、虫化したら十倍以上になるんだ。
だから、負けるなんてありえないだろ!」
「そんなこといっても…
わかったわ。
あのオオクニヌシがなにかずるいことをしているのよ」
「あいつか」
「ええ、あの邪神、アマテラスさまの後をねらっているのよ」
そこにオオクニヌシが通りかかる。
あいかわらずいけ好かないやつだ。
優等生ぶってすましている。
神たるもの、もう少し尊大でなくてはならない。
下級の神にもやさしいとかいうのは、逃げだ。
自分に自信のないやつがとる態度だ。
神というのはすべてを決めなくてはならない立場。
そしてすべてに責任を持つ。
だから、我々は傲慢でなくてはならないのだ。
こいつが現れてから、こういう勘違いしたやつらが増えている。
時代が変わったという説もあるが、そういうわけではない。
最近の若いやつらはたるんでいるだけだ。
「おい、オオクニヌシ」
「あ、イザナギ様、こんにちは」
「こんにちはじゃねえよ。
お前、何をしたんだ。
俺が力を与えた六角が因幡に負けたらしいじゃねえか。
そんなこと、ありえねえだろ。
どんなズルをしたんだ」
「いえ、わたしは何もしてませんよ」
しれっとした顔でオオクニヌシは答えるのだった。