因幡の国忠臣 木島吉嗣25
「昔はわしも求道者だったガオ。
剣王この名を聞いたことはないかガオ」
「それはわしの理想の剣士クワ。
わしは剣王の伝説を追いかけてきたクワ。
剣の道のみに生きた漢クワ」
「それは昔のことガオ。
わしも剣の道を極めたつもりでいたガオ。
だから剣王なんて恥ずかしい名を名乗ってしまったガオ。
わしにも到底及ばない世界があることを知らなかったガオ」
「まさか…おまえが…
剣王は突然姿を消したクワ。
それはこの日輪に敵がいなくなって海の向こうに行ったとか言われているクワ。
いいかげんなことを言うなクワ」
「わしはその剣王だガオ。
しかし、わしの剣も猫丸殿や白猫殿に簡単にひねられてしまったのだガオ」
「それはお前が弱かったということだクワ。
失望した。剣王もただの作り話だったということかクワ。
わしは最後に剣王と戦って剣王の名を奪うのが夢だったんだクワ」
「それは悪いことをしたガオ。
剣王の名ならくれてやるガオ。
悪いことはいわん。それを持って帰るガオ」
「くれてやるだって?
わしはおまえからそれを奪うのだクワ。
そして、白猫、猫丸とやらと戦って真の剣王となるクワ」
「それは無理ガオ。
おまえではわしにも勝てないし、そもそも兎なんかと戦ったら殺されるガオ」
確かに兎や鹿と戦ったら加減はしないだろう。
まあ、やつらなりに加減してるとは言ってるが。
わたしも鍛錬と言う名のイジメにあっているとしか思えない。
「さっき戦ってわしの力はわかっているクワ。
どの口でそんなことが言えるクワ」
「では、教えてやるガオ。
わしが剣王として修行して悟ったことを。
勝負というのは、戦う前に決まっているガオ」
「どういうことだクワ」
「戦いを極めると気の流れを読めるのだガオ。
その者のまとうオーラみたいなもんだなガオ。
それがわからない時点でお前はわしには勝てない」
そう言って獅子舞殿は吠える。
タテガミが逆立ち筋肉が盛り上がる。
獅子舞殿の身体が光に包まれる。
なんか、スーパー〇イヤ人になったみたいな感じだ。
ってスーパー〇イヤ人ってなんだっけ?
そして、わたしも何か大きな力を感じるのだった。