因幡の国忠臣 木島吉嗣24
御山は二刀流だ。
それも長刀を二本。
根津殿のような小刀二刀流ではない。
まるで鍬形の二本の角のように構える。
それに対する獅子舞殿は大剣一本。
普通であれば持ち上げられないような太い剣。
それを苦もなく構える。
「いざ参るクワ」
そう言って、二本の剣を振り下ろす。
その軌跡にそって、2本の空気の刃が地を走る。
獅子舞は微動だにしない。
地を走るものは、獅子舞の身体すれすれを走り去る。
「衝撃波というわけだなガオ」
「そうだクワ。
今のはわざと外したクワ。
ただ、狼狽えて動いたらおまえはやられているクワ。
一歩も動かないのが正解だクワ。
その意味で、おまえを戦うに足る相手と認めようクワ」
「こんどはこっちの番ガオ」
そう言って今度は獅子舞殿が大剣を振り下ろす。
その、剣の軌跡に竜巻が生じる。
その竜巻は御山に向かう。
御山は刀をクロスさせて、外向きに薙ぐ。
御山の前の竜巻が消える。
「衝撃波はそれ以上の力で斬れるクワ。
おまえの剣波より、わしのほうが上ということだクワ」
「そうなのかガオ」
「そうだクワ。
おまえが角だとしたら、将棋隊も大した事はないクワ。
因幡の国の強者たちの話も眉唾だったというわけクワ。
本当に失望したクワ」
「まあ、われわれはそんなに強いわけではないガオ。
たぶん、普通くらいガオ」
「では、とりあえず、お前を倒して、そのあとに猫丸を倒させてもらうクワ」
「いや、それは無理ガオ。
おまえ程度では若殿の遊び相手にもならないガオ」
「どういうことだクワ。
わしは天下の御山鍬形だクワ
とりあえずお前を秒殺してやるクワ」
そう言って御山は二刀を構えるのだった。