因幡の国忠臣 木島吉嗣21
大蟷螂の鎌は容赦なく猿爺を襲う。
それをふわりと避ける猿爺。
たしかに達人の動きだ。
ただ、大蟷螂もそれなりの武人なのだろう。
攻撃を修正している。
最初に比べて猿爺の避け方は余裕がなくなってきている。
ついに大蟷螂の鎌が猿爺を捉える。
そう思った時、猿爺は止めようと杖を出す。
その杖は真っ二つになる。
しかし、その間にギリギリ避けることに成功する。
紙一重といった感じだった。
それにしても仕込み杖は中に鉄が入っているのに、それを豆腐を切るように真っ二つにされてしまった。
「この鎌に斬れないものはないカマ。
鉄でも岩でも関係ないカマ」
そう言う大蟷螂の鎌に黒いものがまとわりつく。
あれは何かの能力を使っているのだ。
しかし、すべてのものを斬るとなると、避けるしかなくなる。
厄介な敵だ。
「なかなかやるな。
まあ、そうでなくては面白くない」
猿爺は笑う。
「うきき」
語尾をつけ忘れたみたいだ。
きちんと付け足す。
それっているのか?
でも、もう猿爺には打つ手はないだろう。
それなのに、歯を剥き出して嬉しそうに笑う。
そのまま、刃が半分になった仕込み杖を構える。
「今度はこっちから行かせてもらうウキ」
今度は猿爺から飛び込む、
猿獣人らしい速い動きの攻撃。
大蟷螂は防戦一方となる。
攻撃こそ最大の防御。
この攻撃を続ける限り大蟷螂には攻撃できないだろう。
ただ、折れた刀でどこまで攻撃を続けられるのか。
猿爺の刀がまた折れる。
攻撃を鎌で受け止められたのだ。
黒い刃は猿爺の刀を根元から斬る。
もう、猿爺の手元には仕込み杖の柄だけとなっている。
これでは攻撃もできない。
「これで終わりカマ」
大蟷螂は鎌を振り下ろす。
その鎌は猿爺の手前で止まる。
鎌を受け止めているのは黒い靄。
その靄は刃のように猿爺の杖の持ちてから伸びているのだった。