因幡の国忠臣 木島吉嗣20
蜻蛉は地面に強くたたきつけられる。
その上には鷹匠殿が乗っている。
空の王者って鷹匠殿のことか。
この人ってスナイパーじゃなかったか。
直接攻撃でも、強いんだ。
とにかく、蜻蛉も将棋隊の前に倒れた。
傾奇者の数も相当に減った。
あとカブトムシ男を含めて4人だ。
こっちは将棋隊がほとんど揃っている。
ついに猫丸殿が到着する。
「デアルカ」
猫丸殿は猿爺殿に戦局を聞いている。
「おまえが、猫丸カマ」
やせぎすの背の高い男。
「そうにゃん。
因幡の町で暴れたらだめにゃん」
「俺は大蟷螂団十郎カマ。
都の傾奇者カマ。
おまえに恨みはないが、この不平等な世の中を変えるために倒させてもらうカマ」
そう言って若殿のところに突っ込んでくる。
だから、猫丸殿は前に出すぎだ。
こんな小競り合いは部下に任せればいいのだ。
「若殿がでるまでもない。
わし、将棋隊金の一、平手猿翁が相手をする、ウキキ」
その前に猿爺が立ちふさがる。
いや、その語尾、無理やりつけただろ。
普段つけてないよな。
このアニマルルール、意味がわからない。
「ではお前から斬るカマ」
両手に鎌を持って構える。
猿爺は仕込み杖だ。
ゆっくりと刃を抜いて前で構える。
先代虎丸殿の頃、四天王と呼ばれていた豪傑。
一軍にも匹敵するといわれていたが、わたしが知る限り、隠居をして猫丸殿の教育係をやっている姿しかみたことがない。
どんな戦い方をするのだろうか。
もう、歳も歳だからそこまで強くないだろうと思うが、最近でも一色の軍勢を退けたと聞いている。
「それでは相手をしよう」
猿爺は目を見開く。
それを合図に大螳螂が動く。
長い手で鎌を薙ぐ。
そのトリッキーな動きを猿爺は避ける。
まるで空気のように自然に。
そう、仙人のようなふわりとした動き。
大蟷螂は連続して鎌を振り猿爺を襲うのだった。