因幡の国忠臣 木島吉嗣13
「虫、うまっチュン」
「やっぱ、時代は虫食だゲコ」
雀は嘴でハチをついばむ。
蛙沼は大きな口にハチをほおばっている。
そういえば、街で虫食が流行っているって聞く。
コオロギとか芋虫とかを高たんぱく食として売ってる店があるらしい。
わたしは絶対いやだが、次世代の食料として脚光を浴びている。
そういえば、虫って食物連鎖の下のほう。
蛙や鳥の主食といってもいいのかもしれない。
いつの間にか烏丸殿の口からもハチの足が覗いている。
もしかして、おやつタイムになってんの?
だんだん、ハム殿の身体を覆うハチの繭がはがされていく。
「羽無もたべればいいのにチュン」
「ぼくは虫は苦手ハム」
たしかにハムの餌は木の実とかひまわりの種だったかな。
とにかく、もう蜂の軍団は壊滅状態だ。
「こいつらやばすぎハチ」
炎蜂は子分たちを引き揚げさせる。
指導者として正しい判断だ。
「では、あらためて勝負ハム」
「もう、無理ハチ。
このままじゃ、うちまで喰われちゃうハチ」
炎蜂はもう戦意を消失している。
そのまま、後ろの仲間たちのところに戻る。
「つぎはわたしチョウ。
わたしは胡蝶太夫チョウ。
炎蜂のかたきはとらせてもらうチョウ」
今度も派手な着物の女の人が出てくる。
傾奇者だけに奇抜なファッションだ。
「こんどこそ、ぼくが倒すハム」
羽無殿が前に出ようとする。
「汚名挽回ちゅう」
根津吉殿も前に出る。
そう今日はいいところがなかった2人が先を争う。
「では、2人いっしょにかかってらっしゃいチョウ」
胡蝶は妖艶に微笑む。
「ひとりで十分チュウ」
根津吉殿は羽無殿を押しのけて前にでるのだった。