因幡の国忠臣 木島吉嗣11
語尾からして、蜂の虫人か。
蜂の武器といえば、針。
どんな攻撃をするかわからないが、ゴキブリやアリと違って明確な攻撃手段を持つ。
たぶん、いままでの2人は前座だ。
ここからが本当の勝負だ。
「羽無太郎座衛門、参る」
こっちは羽無殿が進み出る。
どんな敵がきても羽無殿の剣技は本物だ。
この人が歩の九というのは斥候役という意味なのかもしれない。
でも、さっきみたいに雑巾がわりに使われるとか。
いじられキャラっていうのもあるかもしれない。
「うちは炎蜂、蜂の力をもつ傾奇もんさハチ」
羽無殿は刀を抜いて炎蜂との距離をつめる。
そして、刀を振る。
炎蜂を捉えたと思ったが、直前で刀は止まる。
何か黒いもやみたいなものが刀にまとわりついている。
「無駄ハチ。
そんな刃はわたしまで届かないわハチ」
「何故ハム」
「うちは女王蜂ハチ。
うちが戦うわけないハチ。
戦うのは下僕共ハチ」
炎蜂のまわりのもやが葉が羽音をたてて動く。
そうもやにみえていたものは無数の蜂。
それが、集まって炎蜂の盾となったのだ。
「おまえたち、やってしまいなさい、ハチ」
炎蜂は羽無殿を指さす。
羽無殿をめがけて蜂の大軍が押し寄せる。
羽無殿は刀を振るが、目で確認できる量ではない。
それに刀は小さなものを斬るには適していない。
「さて、おまえのような剣士に蜂の攻撃は防げるかしらハチ」
「ハムー」
羽無殿は動き回って蜂の一刺しを避けている。
でも、やがて膝をつく。
「刺されたハム」
「フフフ、わたしたちの針には毒があるのハチ。
それも強力な毒がねハチ。
死ぬほどではないけど、おまえくらいなら動けなくなるハチ」
炎蜂は笑う。
そして、動きの止まった羽無殿を無数の蜂がつつみこむのであった。