なんちゃって数学論
数学の話をしよう。
と言っても、難しい数学的命題についてではない。そんなもの私にはさっぱりだ。ここでの話とはもっと俗っぽいもの、「数学って面白いよ」という話。
さて、こういう流れで必ず話題にされるものがある。数学と現実をつなぐ代表選手、三角関数だ。かの世界一の三角形フリーク、オイラーが生み出した三角形同人ファンブックである。
この偉大な発明品は、今なお世界中の三角形フリーク達を魅了してやまない。日々自分の頭の上にどでかい三角形を浮かべては、座標を確認してニヤニヤしている人々で溢れている。世はまさに大オイラー教時代だ。工事現場のおっちゃん達は敬虔な信者である。
このビッグウェーブに乗って布教活動を。そういう話ではない。三角関数はビッグウェーブすぎて、私では波に飲まれてしまう。神は偉大なり。あまり適当なことばかり吹いていると、夜道で薄くない本で殴られそうだ。
では何の話をしようか。そう思って見回してみて気がついた。そうか、君達がいるじゃないか。
満を持して登場し、数多の数学嫌いに止どめを刺してきた最強のヒールタッグ、微分と積分だ。
教科書に登場すると同時に「お前ら何なの」と言われ続け、終いには「お前らの存在意義が分からない」と言われてしまう。そんな彼らの、これは、ちょっとも為にならない話。
微分と積分、一体彼らは何なのか。言ってしまえば彼らは、数学が生み出した最強の物差し、万能の分析ツールである。世界を切り刻み、積み重ね、見通しを良くしてくれる縁の下の苦労人。タバコの似合うニヒルなナイスガイ達だ。
今日の昼食、あなたは何を食べただろうか。カレーライス?生姜焼き定食?ハンバーガー?バナナは昼食に入りません。
突然何の話なのか。微分と積分の話だ。
微分の仕事は切り刻むこと。小さく小さく、それはもう偏執的に小さくすることが彼の生き甲斐だ。
生姜焼きを切り刻み、あなたが豚肉と思っていたものは実は豚ロースで、国内産だと教えてくれる。お袋の味だと思っているセットの味噌汁を作っているのは、実はおっさんだということもお見通しだ。
家政婦ばりに覗き見しまくる微分に対して、積分はどうか。彼の仕事は積み重ねること。全てを積み重ねて全体を見渡す。ビルの最上階から下界を見下ろして「人がゴミのようだ」とか言っちゃうタイプのクソヤローだ。
積分はあなたが先月昼食に何を食べたのか、全て知っている。正規に頼んだもの以外にも、友達の皿から強奪した唐揚げのこともバレバレだ。そうして全てをまとめたリストを片手に「食い過ぎだ、この卑しい豚め」と罵ってくるのだ。マルコに謝れ。
つまり微分と積分とは何なのか。変態とクソヤローの最低タッグである。語る価値もない。害悪そのものである。
あれぇ〜?