表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は哀に溢れている  作者: 衣月美優
第四部 狭間に揺れる葛藤と破壊
49/56

第四十八話 休まらない日々


 能力を扱うこと。この世界でのそれは、子どもが成長とともに言葉を覚えること、身体の使い方を覚えることなどと同じこと。つまり、特別な訓練の場などはない。日常生活の中で身に着けていく力だ。

 だけど、特にその能力を使って人々を、国を守る戦闘員には特別な訓練の場が必要だ。能力をうまく、強く扱うため、能力の幅を広げるために。

 その訓練メニューは個々に合わせて作られる。そのメニューは今も、二人を支えるものとなっている。


 しかし。


 多能力者のエミリーには、そのメニューが本当に自分に合っているものなのかわからなかった。多能力者というほとんどいない存在に合ったメニューなど、そうそう組み立てられるはずがない。

 本当はどんなメニューが効率がいいのか。

 どんなメニューならもっと能力を伸ばせるのか。

 どんな能力を伸ばすことが一番いいのか。

 そのすべてが謎だらけ。多能力者だからこその悩み。


 それに、鬼婦人が言っていた。



 ──────……娘、その力は神のものだ



 神の力だというのなら、どうしてルーインの脅威となれないのだろう。鬼婦人に敵わないのだろう。

 もっとちゃんと能力を伸ばすことができたなら、脅威となれたかもしれないのに。


「……壊す方に使えば、楽に」


 そんな風に能力を使うつもりはないけれど、でも。

 エミリーは今、ルーインを倒すために能力を使っている。それはルーインを壊すことにつながるはずなのに、楽にはならないし困難な道だ。


 だから、あれはただの戯言。そう思いたいのに、鬼婦人があまりにもしっかりと断言するものだから、そう思えない。

 エミリーの存在意義は何なのだろうか。


「おい、エミィ」

「わっ、びっくりした……」


 いろいろ考えこんでいると、すぐそばにギルバートが立っていて、エミリーは驚いて振り返る。

 

「何回も声かけたぞ」

「うそ、ごめん。気づかなかった」

「……お前、最近」


 そこでギルバートが言葉を止めるものだから、エミリーは不思議そうに首を傾げた。


「最近、何?」

「……いや」

「何よ、気になるじゃない」


 教えてよ、と何度か声をかけると、ギルバートは観念したように口を開いた。


「最近、なんか変じゃねぇか?」


 でも、あまりにざっくりしすぎていて、エミリーの頭にはクエスチョンマークがたくさん浮かぶ。

 というか、変っていったい、どういう風に変だというのか。


 そんなエミリーの考えを見透かしたのだろうギルバートが、躊躇いつつ言葉を続ける。


「なんていうか、何か……考え込んでねぇ?」

「え……」

「いや、悪い……俺のせいなのもわかってる。幾度となくフィルに連れ去られるし、暴走もするから、不安にさせてるって。けど、それだけじゃねぇように思う」


 エミリーは驚いた。まさかそこまで気づいているとは思わなかった。と同時に、エミリーも心配をかけていたのだと、少し反省する。

 だからといって、この件をギルバートに話すつもりはないけれど。


「あー……ごめん。ちょっと最近、いろいろあったから思うところがあって。答えのない問題を考え続けてるっていうか……でも大丈夫だから」


 エミリーは笑顔を見せてそう言った。

 大丈夫。何も心配することはないと。一時的なものだから、すぐに元に戻ると。


「ギルも、自分を責めなくていいよ。不安にさせちゃうのはきっとお互い様だし。私はギルが生きてそばにいてくれるなら、それで十分だよ」


 ギルバートはいつだってエミリーを支えてくれている。それは紛れもない事実だ。ここまでの答えはどれも嘘ではない。


 だけど、ギルべーとの視線がほんの少し鋭くなったことに、エミリーは気づかなかった。


(けど、ちゃんと、休めてんのかよ)


 本音を隠したがるエミリーに、ほんの少しの怒りをにじませていたことに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ