表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は哀に溢れている  作者: 衣月美優
第三部 ルーインとの衝突
40/56

第三十九話 今は



 ──────俺はお前をフィルだとは認めねぇ



 ギルバートのその言葉に、少しばかり真剣な、冷たい目をするフィリップ。


 しばらくは睨み合いの膠着状態となったが、フィリップのため息とともにそれは破られた。そのころにはもう、フィリップの表情も元に戻っていた。


「……まぁ、別にいいよ。認めてもらうとかもらわないとか、そんなことは別に重要なことじゃないしね」


 その言葉は本心なのだろう。特に何の感情も込められずに発せられる。


「ただね、ギル。僕が誰であろうと、君を狙っていることには変わりない。君は邪魔なんだよ」

「俺にとってはお前が邪魔だけどな」

「……そうだろうね。まぁ、僕には関係ないけど。でも、そうだなぁ。僕と君とじゃ、相手を邪魔だと思う度合いが違うと思うな」

「そりゃそうだろ」

「そうなんだけど、そういうことじゃなくて。うーん……まぁ、これくらいは教えてもいいかな」


 どういう会話になっているかはわからないが、どうもこの会話は何か重要なことが隠されているらしい。その重要なことを聞き逃さないように、変に刺激をしないようにギルバートは会話を進めていく。


「一つだけ、教えてあげるよ」


 フィリップはそう前置きをして、ギルバートを見つめた。


「僕は君に宣戦布告したけど、今すぐに君を殺すつもりは全くないよ。そうしたら、僕にとっては面倒なことが起きるからね」


 フィリップの言葉に、ギルバートは少し目を瞠った。


 今すぐにギルバートを殺すつもりはない。それは、容易に予想できたことだ。もしも今すぐに殺すつもりなのであれば、毎回何もせずにギルバートを返すわけがない。

 今日までギルバートが生きている。そのことが、フィリップの言葉に信頼性を持たせる。


 それよりも、ギルバートを今殺すことで起きる、フィリップにとって面倒なことの方が気になる。

 そもそも、フィリップにとって不都合なこととは何だろうか。フィリップはルーインについているようで、そうではないように見える部分もある。ギルバートへの宣戦布告がその一つだ。


 どこまでがルーインからの指示で、どこからがフィリップの意思なのか。

 ルーインはフィリップを使って何をしたいのか。

 フィリップはルーインに身を置いて何をしたいのか。


 すべてが謎に包まれている。

 フィリップがルーインに身を置く理由は、洗脳や蘇らせてくれた恩があるのかもしれない。でも、それ以外の部分は何一つとして可能性すら思い浮かばない。


「……面倒なことって何だ?」

「一つだけって言っただろ、ギル。これ以上は教えないよ」


 フィリップは笑ってそう言う。それに対して、ギルバートは怪訝そうな顔をすることしかできない。これ以上、詮索したところで、何も答えてくれるはずがないとわかりきっている。


「ただ言えることは」


 だが、意外にもフィリップはその後も口を開いた。

 面倒ごとについて、核心を突くようなことは言わないだろう。ただ、何かしらのヒントは口にしてくれるかもしれない。そんな期待を込めて、ギルバートはフィリップをまっすぐに見た。


「その面倒ごとが起こったらルーインが成しえたいことの一つを成しえなくなり、僕が用済みになって消されるだろうね」


 だから、今は殺さないよ。そう言って、フィリップはギルバートの額に人差し指を突きたてた。


「賢い君は、この情報をどう読むかな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ