第三十ニ話 敵襲
ルーインの謎は深まるばかり。
鬼人たちとルーインが関係を持っているかどうかもわからない。そもそも、鬼人たちが今も生きているのかどうかさえ分からない。
ただ言えることは、鬼人たちとルーインが手を組んでいたとしたらとてつもない脅威だということ。そして、脅威である鬼人たちが生きているとするならば、今もなお仲間を増やし、死人さえも蘇らせるルーインが手を組もうと考えないわけがないということ。
もしも鬼人たちが生きていてルーインと手を組んでいたら、エミリーとギルバートが太刀打ちできるかはわからない。ルーインに関しても鬼人たちに関しても情報が少なすぎる。せめて、鬼人たちの能力だけでもわかれば何か違ったかもしれないのに。
とはいえ、情報がないものはない。図書館で調べられるものは全て調べつくした。
エミリーとギルバートはそのまま図書館を後にし、とりあえずは先へと進むことにした。おそらく、ルーインは様々な場所に何かしらの施設を持っているはず。“闇都市”から離れていけば、また新たな施設を見つけられるかもしれない。
それは、ただの願望で、淡い期待でしかない。でも、どこかで確信のようなものを感じてしまう。
それが、施設があることに対してなのか、はたまた、この先のどこかでルーインに関係する人物に接触するかもしれないことに対してなのかはわからない。けれど、そんなものはどちらでもいい。何らかの形で接触でいるなら、それが一番の情報を得るチャンスだ。
とは思っていたけれど。
「……!ギル、何か──────……」
来る。
エミリーがそう言おうとした瞬間にはもう、それは二人に襲い掛かっていた。
街中、というわけではない。けれど、全く人がいないというわけでもない。周りにいた人たちは突然の出来事に逃げ惑う。それを庇いながら、エミリーとギルバートは人がいない方向へ抜ける道筋を探していた。
狙いが二人であることは、先ほどの攻撃からわかっている。二人がここから離れれば、周囲の人たちの安全が確保されるだろう。
ただ、問題なのは、何の目的で二人を襲ってきたのかということ。一体、襲ってきた人物は誰なのだろうか。
攻撃によりたった砂埃の中、エミリーとギルバートは敵を確認するために目を凝らす。その先から聞こえてきたのは、高笑いだった。
「今のを避けられるのか。それなりに腕が立つようじゃのぉ……」
容姿も声色もエミリーたちとそう変わらない年齢──どころかもっと若く──に思えるが、話し方は老人のような少女。そこに違和感を覚えつつも、追及する暇はエミリーとギルバートにはなかった。彼女が間髪入れずに攻撃を繰り出してきたからだ。
下手に動けば、周りにも被害が及ぶ。エミリーとギルバートは少しずつ人気のない方へと誘導するように動きつつ、攻撃を躱していた。
「攻撃を避けながら人気のない方へ移動するか。余裕じゃのぉ」
人気のない方へ誘導していることは気づかれている。となると、この敵がどう出るかは気になるところ。
もしも、誘導には乗らないと抵抗するとすれば、手っ取り早いのは周りの人間を人質に取るなどの行動だろう。周りの人間を巻き込むような真似をされれば、エミリーとギルバートはこの敵の要求をある程度飲まなければならなくなる。
けれど、その心配はいらないようだった。
「別に構わんよ。わしは戦う場を選ばん。ただ、殺したい奴を殺せればそれで構わんからな」
この言い方からして、やはり標的はエミリーとギルバート。この敵の言葉を信じるならば、周りへの危害は加えられないはず。
ただ、やはり気になるのはなぜ標的がエミリーとギルバートなのかということ。しかも、今の言い方だと殺したいほどの人間だという。面識もないのに、なぜそんな話になるのか。答えは敵が教えてくれた。
「わしの後輩のフィリップが世話になっとるようじゃからのぉ……先輩として、挨拶するのは当然のことじゃろう」
その言葉に、エミリーとギルバートは顔を強張らせた。




