第三十一話 鬼人
エミリーとギルバートは宛てもなく彷徨うわけにもいかず、とりあえず何でもいいから情報収集をしようということで待ちゆく人たちに聞き込みをしていた。
だが、もちろんルーインのことを知っている人などいない。存在しか知らない、幻のようなものと考えている人たちの方が多い。
「ルーイン?あぁ、あの闇組織?数年前にどっかの国で戦争起こしたって事しか知らないよ」
エミリーたちとそう年が変わらなさそうな女性二人組のうち、一人はそんな風に答える。
「あの、別にルーインに直接関わることじゃなくてもいいんです。悪い噂とか、そういうの知りませんか?」
エミリーがそう問いかけると、二人の女性は顔を見合わせた。この様子では望み薄かとエミリーもギルバートも思ったが、さっき答えてくれた女性が「全然関係ない昔のことならなくもないけど」と言ってきた。これには、エミリーもギルバートも驚く。
たとえ直接関係がなかったとしても、よくない話をたどっていくのも必要なことだ。それが、意外なところでルーインにつながっているかもしれない。
エミリーがぜひ聞かせてほしいと言うと、女性は自分たちの親世代が子どものころに経験したことだと前置きして話してくれた。
「この辺ではたぶん結構有名な話だと思うけど……昔、このあたりの地域は鬼人と呼ばれる人たちに襲われたんだって。それこそ、戦争のようだったって」
鬼人。それは、彼らの俗称だ。襲われた人々が、彼らを示す言葉として、鬼人が相応しいとされた。
個人それぞれにも「鬼」という言葉を使って名前が付けられているらしい。その中でも有名なのが、鬼王、鬼婦人、悪鬼、鬼卑、浸鬼の五人だという。
「その後もしばらくは鬼人たちの動向が耳に入ってたらしいんだけど、ある時からぱったりとなくなったんだって。当時でそこそこ年がいってる人もいたから、さすがの鬼人たちも寿命には勝てなかったかって」
つまり、もう死んでしまったのだろうということが噂されているが、あくまでそれは噂で、本当はどこかで今も生きているかもしれない。けれども、生きていたところで今はそれなりの年齢。そう害になるものでもないと考えているという話のようだった。
生きているか死んでいるか。そこはどうでもいい。鬼人と呼ばれるほどの者が存在したことは確かなことだ。
エミリーとギルバートは少し顔を見合わせ、思案する。そういう人物たちが存在していたのはわかったが、ルーインに関係するか否か。そこが二人にとって最も重要なことだ。
とりあえず、話をしてくれた女性に礼を言い、エミリーとギルバートはさらに歩みを進めた。
ルーインに関係しているかどうかがわかるわけではないが、まずは鬼人について調べよう。二人は、この国で最も大きな図書館へと向かうことにした。
図書館には昔の新聞記事などもある。それらをエミリーとギルバートはそれぞれ見ていき、鬼人に関する記事を探した。
思ったよりもそれらは簡単に見つけることができたし、何より記事の量も思っていたより多かった。それだけ凄惨な事件だったということだろう。
ただ、記事を読んでも鬼人たちが持っているだろう能力についてはわからなかった。せめて能力が分かれば、もしも今ルーインに所属していたとしても対策の考えようもあったのに。それに、ルーインが欲しくなるかどうかだってわかったかもしれない。もっとも、鬼人たちが強いということは確かなので、ルーインが手に入れようとしないということは考えにくいが。
とはいえ、ルーインの目的がエミリーにもギルバートにもわからない。強い組織でありながら、今もなお仲間を増やしている。それは、死人であるフィリップを蘇らせてまでも。
一体、ルーインは何がしたいのか。何のためにフィリップを蘇らせたのか。
謎は増えるばかり。いつか、その答えを得られる日は来るのだろうか。




