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世界は哀に溢れている  作者: 衣月美優
第二部 やめるわけにはいかない旅
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第二十九話 意味不明な行動の理由


 ギルバートが再びワープゲートに吸い込まれたとき、エミリーもまたワープゲートに吸い込まれていた。

 そして、気づけば二人揃って“闇都市”の入口まで戻ってきていた。


「ギル……!」


 エミリーはギルバートの姿を見た瞬間、安心したようにギルバートに声をかける。

 だけど、ギルバートの表情が硬いような気がして、すぐに心配そうな顔になった。


「ギル?大丈夫?」


 ギルバートは頭を押さえ、深いため息を漏らす。


「……大丈夫だ」


 ギルバートはそう答えたけれど、エミリーの心配した顔は晴れない。

 だけど、一旦ここを離れて、落ち着いた場所で話をしようとギルバートが言うので、それに従うことにした。







「つまり、またフィルがギルの前に現れたってこと?」


 エミリーはギルバートから話を聞いて、簡潔に尋ねた。その声は冷静ではあるけれど、困惑の色も滲んでいる。


 今回の件は、以前ギルバートの前にフィリップが現れた時以上の疑問点がある。

 まず、フィリップがギルバートの前だけに現れた点。以前はそばにエミリーがいなかったのでエミリーの前に現れなかったのは頷けるが、今回は違う。エミリーはギルバートの側にいたのに、ギルバートだけが連れ去られ、フィリップと対面した。

 次に、フィリップがギルバートにエミリーを連れていることに関して忠告した点。「優しいから」とフィリップは言っていたようだが、フィリップが忠告するメリットがない。それに、ギルバートの前にだけフィリップが現れた点を踏まえると、むしろフィリップにとって不都合があると言っているようにも聞こえる。それをフィリップ自身は否定したようだが、実際のところはわからない。

 さらに、以前ギルバートがあったときに宣戦布告をしてきたくせに今回も何もせずにギルバートを帰した点。宣戦布告をしたうえでわざわざ攫ったのならば、何かしらの戦闘が行われてもおかしくないはず。それなのに、何事もなくギルバートは帰された。そこに、何か意味はあるのだろうか。


「あいつが生き返ってから、あいつの行動は全部意味不明だ。ルーインに従うと言っていたり、個人的な宣戦布告だと言っていたり……何もかもが定まらない」

「それが私たちを惑わせるためなのか、はたまた、ルーインの洗脳が不完全なのか、わからないわね。なんにしても、警戒心を緩めるわけにはいかないけど」


 今のギルバートやエミリーにできることは限られている。ただ、どんな状況でも警戒心を緩めるわけにはいかないということは確か。フィリップを追うということは、その後ろのルーインを嫌でも相手にしなければならないのだから。

 そして、そのルーインが二人のことをどこまで把握しているのかもわからない。常に危険が付きまとうと言うのは、フィリップの言う通りだ。


「エミィ」


 ギルバートはエミリーをまっすぐ見つめた。


「お前は俺が絶対に護る。だから、離れるなよ」

「……うん。私も、ギルを護るよ。だから、背中は預ける」


 二人はお互いを信頼している。だから、背中を預けられる。

 お互いにお互いを護り、突き進んでいく。絶対に、離れたりしない。


 この旅は、フィリップを救うまで終わらない。失くしたものは戻らないかもしれないけれど、それでも大切なもののために諦めるわけにはいかない。


 二人ならくじけない。

 二人ならどこまでも進んでいける。

 二人なら強くいられる。


 やめるわけにはいかない、この旅を続けるために、二人は決意を新たに先へと進んでいく。

 その先に待つものが、たとえどんなに残酷なものだったとしても。


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