第二十四話 ネックレスの奪還
エミリーは、走りながら能力を使うために集中していた。
「おい、エミリー。犯人の居場所、わかんのか?」
「まかせて。さっきのギルの情報と、あのネックレスのことがわかっていれば、多分なんとかなる」
エミリーそう答えて、能力を発動させた。
「──────……わかったわ。このさきの細い路地。人数はまだわからないけど、多分そんなに多くないと思う」
エミリーが発動させた能力は、物や人の居場所を探る能力だ。わかっている情報が多ければ多いほど、正確に場所がわかる。
ただし、感知できる範囲は決まっている。今のエミリーは、その範囲があまり広くない。
というのも、この能力はあまり扱いなれていない。
だから、確実にそう遠くない場所にいるものしか探すことができない。
「ったく、羨ましいぜ。何でもできるもんな、多能力者さま?」
「何でもは無理よ。ちゃんと使い方がわからなければ。っていうか、そういう言い方やめてくれない?」
小言を言いつつも、二人は目的地に向かって進んでいく。
今、ギルバートが言ったように、エミリーは多能力者だ。
多能力者とは、簡単に言えばどんな能力でも使える者のことだ。今、生存している人の中では、エミリーしか存在しない。とても貴重な能力者だ。
だが、エミリーが言ったように、何から何まですべて扱いきれるわけではない。その能力の存在、使い方などがわからなければ使うことはできないし、それがわかっていても簡単に扱えはしない。
だからこそ、エミリーは自分が使いたいもの、伸ばしたいものだけを特化してうまく扱う練習をしている。
もちろん、どの能力者も能力をつかうためにあらゆる練習、修行を行っている。はじめから簡単に扱える者などいないのだ。
「この辺りだな」
ギルバートはそう言い、エミリーと共に周囲を警戒した。
少し先に人影を見つけて、昼間と同じようにエミリーがその人に声をかけ、ギルバートは身を潜めた。
「あの、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど」
エミリーに声をかけられた人は、急なことにビクッと肩を揺らした。
「な、何だよ」
「失礼ですが、バルフォア家の家宝である水晶のついたネックレス、持ってるんじゃないですか?」
「な……!?いきなり何を!?そんなもの、持ってるわけないだろ!」
慌てふためく男の様子など気にもせず、エミリーはにこやかに笑って続ける。
「でしたら、ポケットの中など全部見せてもらえますか?持ってるわけないんですよね?」
「そ、それは……!」
男は少したじろぎ、やがて声をあげた。
「──────……くそっ!お前ら、やっちまえ!」
それと同時に、十人ほどの若い男たちがエミリーを囲んだ。
わかりやすい展開。そんなものに、エミリーが驚くはず怯むはずもなかった。
「思ってたより少ないな。まぁ、でも、私はあなたからネックレスを取り戻すだけ」
エミリーは周りに聞こえるか聞こえないかくらいの声でいい、ネックレスを持つ男との距離を一気に詰めた。
エミリーが動くと同時に、周りの十人ほどの男たちもエミリーに向かって駆け出したが、ギルバートによってそれは阻止された。
「どっから……!」
「てめぇらごときに追えるスピードじゃねぇからな」
まさに、一瞬で十人もの男たちをギルバートは倒してしまった。
「弱ぇな。能力使うまでも無ぇ」
そうギルバートは呟いた。
一方で、エミリーは戦っている最中でありながらも、笑顔でいた。
エミリーの拳や蹴りは、確実にヒットしていたが、あまり効いている気がしない。
「……これ、あなたの能力?あんなの連れてなくても、あなた一人で十分強いんじゃないの?」
「そうだよ。こうしたら、少しは油断してもらえるだろ?」
彼の能力は、攻撃を無効化するものらしい。攻撃はヒットしているのに、まったく効いていない。
「まぁ、ネックレスさえ返してもらえれば、私はそれでいいんだけど」
「そう簡単に返すかよ。売ればがっつり稼げるのによ」
「じゃあ、しょうがない。ちょっと手荒になるけれど……メリッサさんのためだもの」
エミリーはそう呟いて、能力を発動した。
「うぉっ!?」
急に攻撃が入るようになり、男は驚いて体勢を崩し始めた。当然、エミリーは攻撃をさらに強める。
男は完全に倒れ、起き上がるのが困難な状況だった。
「……お前、何をした?」
「あなたの能力を無効化させてもらったの」
能力の無効化という能力は、わりと使えるのでエミリーはそれを習得していた。
とはいえ、どんな能力でも無効化できるわけではない。何より、能力を使っている人に触れていなければそれはできないのだ。
「それじゃ、返してもらうわね、このネックレス」
エミリーは男のポケットからネックレスを取り、ギルバートと共に宿へと帰っていった。




