表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は哀に溢れている  作者: 衣月美優
第二部 やめるわけにはいかない旅
22/56

第二十一話 些細なことだけど


 エミリーとギルバートは宛があるわけではないので、ただ歩き続けながら、ときには力をつけるために二人で模擬戦闘を行っていた。

 エミリーとギルバートの力関係はほとんど互角。能力を使わないなら、幾分かエミリーの方が強いかもしれない。


 エミリーは能力よりも自分の力に頼るタイプで、体術、武術に秀でている。

 一方で、ギルバートはもちろん鍛えてはいるが、どちらかと言えば能力で相手を蹴散らすタイプだ。


 二人は国で戦闘部隊の戦闘員として働いていた頃、国のトップ十位以内に入ると言われていた。若い世代では最も強いとさえ言われていた。

 だけど、それはあくまで国の中での話だ。外に出ればもっと強い者はたくさんいる。エミリーとギルバートだって、無敵なわけではない。


 闇組織、ルーインは強い。二人だけでは敵うはずもない。

 それでも、無謀にも二人はたった二人で相手にしようとしている。


 それは別に、この世界のためではない。自分たちのためだ。

 フィリップを連れ戻す。救い出す。

 ただそれだけのために、無謀な戦いに、旅に、赴いている。







 小国も抜け、新たな国にエミリーとギルバートはたどり着いた。

 ここは賑やかな国で、さっきまでの小国とは全然違った雰囲気だ。


「ねぇ、どこかでごはん食べようよ」

「そうだな。最近、大したもん食ってなかったし」


 というわけで、二人は自分たちの国を出てから久しぶりに、まともな食事を摂ることにした。

 とはいえ、節約はしたいのでなるべく安い店で済ませることにする。


「あたりまえだけど、ルーインに関する情報は全然ないね」


 エミリーはちょっと遅めの朝ごはん、サンドイッチを食べながら言った。


「あぁ、そうだな。まぁ、気長に行くしかねぇだろ……って言っても、こう情報がねぇとどうしようもねぇからな」


 何の情報もないと、どこへ行けばいいのかも何もわからない。

 でも、そんな簡単に情報を得られるのなら、あんなにも国が滅茶苦茶になることもなかったし、何より、とっくの昔にアジトぐらいわかってもいいはずだ。

 ルーインは本当に謎が多すぎる。まるで、謎が謎を呼んでいるかのようだ。


「でも、フィルがギルに宣戦布告したってことは、そのうちフィルの方から現れる……ってことよね?」


 エミリーの言う通り。

 二人がどこへ向かおうが、必ずどこかでフィリップの方から姿を現すはずだ。それが、一人なのか複数人なのかはわからないけれど、どのみちフィリップは他の人に邪魔をさせる気はないだろう。少なくとも、個人的なギルバートとの戦いにおいては。


 ただ、それを待っているだけでは、フィリップを連れ戻すどころか負けてしまう。

 突然現れれば、瞬発力や咄嗟の判断力が必要不可欠だ。


 エミリーもギルバートも、元戦闘部隊の戦闘員として、それなりの対応力は持っている。そういう相手との戦闘経験は少なくはない。

 でも、ほとんど平和なこの時代に、戦闘が起こることがほとんどなかった。戦闘部隊は飾りかと思うほど、大した仕事がなかった。

 だからこそ、平和ボケをしていたのだ。そうして、そこを狙われた。


 誰かのせい、とも言い難いが、最終的にはやはり、一般論として戦闘を起こした者が悪となる。

 本当にそれが正しいのかどうかはわからないが、でも、どんな理由があろうと関係のない人たちを巻き込むのは、やはり悪だとは思ってしまう。


「ルーインは結局のところ、何が目的なんだろ……」


 エミリーはそう呟いていた。

 ルーインは反社会勢力である、ということはわかるのだが、何をしたいのか、何を目指しているのかは全くわからない。


「何が目的だろうが知ったこっちゃねぇ。フィルを連れ戻すのを邪魔すんなら、ぶっつぶすまでだ」


 エミリーの呟きに対し、ギルバートはそう答えた。

 ギルバートの答えにエミリーは少し呆気にとられていたが、やがて、ふっ、と笑った。


(何か、やっとギルらしさを感じられた気がする)


 そんな些細なことが、エミリーにはとても嬉しいのだ。







 朝食を食べ終え、エミリーとギルバートは目的もなく街を歩いていた。

 そんなとき、細い路地で何やら言い争う声が聞こえてきた。


「やめてくださいっ!これは渡せないと何度も言っているじゃないですか!」

「こっちも何度も言ってるだろ?力ずくでも奪ってやるって」

「こっちは男が三人。女のお前が一人で勝てると思うか?」

「諦めて、それを寄越しな」

「嫌です!」

「その人、嫌がってるじゃない。男三人で女一人相手に何してるの?」


 エミリーは音もなく男三人の背後に立ち、そう言った。


「な、何だ、お前!?」

「今のうちに逃げた方が身のためだと思うけど?」


 エミリーは好戦的な笑みを浮かべながら、相手が驚いていることなど気にせずに言った。


 困っている人がいれば助ける。

 元戦闘部隊として、それぐらいは当然のことだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ