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世界は哀に溢れている  作者: 衣月美優
第二部 やめるわけにはいかない旅
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第二十話 真実を知って


 ギルバートの話を聞き終わったが、エミリーはまだ状況を受け入れられなかった。

 当然だ。ギルバートだって受け入れるのに時間がかかったのだから。

 だからこそ、国を出るのに荷物をまとめるのもいれて三日かかった。


「フィルはルーインによって蘇らされて、ルーインの手先になってる……っていうことなのよね?」


 エミリーは冷静に状況を判断しようと、そう言った。

 ギルバートはそれに対して、静かに頷く。


「でも、どうしてフィルが……というよりも、そもそもどうやって蘇らせたの?フィルが蘇ったということは、他にもそういう人がいるかもしれないってこと?蘇らせるってことはおそらく、遺骨、あるいはDNAが必要なはず。ということは、戦争のあと、ルーインは国に入ってきてたってこと?」


 エミリーは疑問をぶつぶつと呟き続けた。

 そうやって、努めて冷静でいようとしているのだ。エミリーの癖でもある。


「俺にもまったく理解ができていない。けど、このままルーインを放っておくわけにはいかねぇ。フィルを止めるためにも」

「……うん。私もついていくよ。だって、フィルが関係してるんだもん。私についていかない理由はない」


 すべてを聞いて、よりエミリーはギルバートと共に旅をすることを心に決めた。

 そんなエミリーに、もう本当に止める理由がなくなってしまったギルバートも心を決める。

 果てしなく長い旅路を共に歩む。大切なもののために。


「──────……わかった。一緒に行こう」


 ギルバートはそう口にした。







 この日は、とにかく休める場所を探した。

 ギルバートは野宿のつもりだったが、さすがにエミリーもいるのにそういうわけにはいかないと宿屋を探そうとしたのだが、エミリーがそれを断った。


「お金もったいないし、野宿にしとこうよ。ほら、そこに林も見えるし」

「いや、けどよ。何かあったらどうすんだよ」

「大丈夫。私があの林の中に一時的に小屋を建てるから」


 その言葉に、ギルバートはその手があったかと思った。

 林の中に入り、ギルバートが木をいくつか斬ってスペースをつくると、エミリーはおもむろに手を前に突き出した。

 エミリーが目を閉じ、何かを念じると、目の前に小屋ができていった。


「うん。結構いい感じにできた。一日は持つと思うよ」


 エミリーの能力の一つ、物を造り出すものだ。


「んじゃ、今日はここで休むか」


 エミリーもギルバートもここまでろくに休んでいない。疲れきっている。

 二人は今後の話をするためにも、小屋で休むことにした。







 二人は小屋に入るなり座り込んで、どちらも口を開くことはなかった。

 お互いに、いろいろ整理したいのだろう。


 十分ほど経って、ようやくエミリーが口を開いた。


「ねぇ、ギル。次にフィルに会ったらどうするの?」


 エミリーはまだフィリップに会ってはいないので、実際のところ、フィリップがどういう状態なのかはわかりきれていない。

 だから、ギルバートがフィリップに会ったときにどうするのかを聞いておきたかったのだ。自分がそのときにどう行動するかを決めるためにも。


 ギルバートは顎に手を当て、しばらく考えてから答えた。


「フィルの出方次第だろうな。できれば説得したいところだが、あいつはたぶん、戦闘に持ち込む。そうなれば、あいつの四肢を折ってでも、とにかくルーインから離れさせる」


 ギルバートの答えに、エミリーも賛成だった。

 だけど──────……


「けど、そう簡単には絶対にいかねぇ。俺たちが相手してるのは、結局のところルーインだからな。フィルを連れ戻すのは不可能に近ぇだろう」


 ギルバートの言う通りだ。


 ルーインがどれほど強大な組織か、エミリーもギルバートもわかっている。

 特に、ギルバートは数多くのルーインの手下たちとの戦闘を経験している。ルーインの中ではかなり下位なやつらではあったが、それでも十分な強さだった。

 そうでなければ、ギルバートはフィリップを死なせることはなかった。


 ルーインは力の強い反社会的な者たちを率いれている。

 だからこそ、その中で下位であっても、実力的にはそれなりの強さを持っている。エミリーとギルバートだけでは、到底敵うはずもない組織。


 フィリップを取り戻すためには、ルーインを倒すことは必須。

 そして、ルーインを倒すためには、二人は相当な力をつけなければならない。


 少なくとも、次にフィリップに会うまでに、もっと強くならなければ。


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