公爵家の跡継ぎにばれてしまいました
「は、はい………。そうです。」
乾いた笑いを浮かべたいところをぐっと押さえて言った。
「やっぱり。その素晴らしい金の髪。ベドフォード家の方々はみんなお美しいからね。」
勿体なきお言葉ですと、これ幸いとばかりに礼を深くする。
ずっと膝を折った姿勢を続けていたため、足がしびれて震えてきた。
「どうしたの?もういいんだよ。ほら。」
ちっ近づいてこなくて結構ですぅ!!
私の方へ歩み寄る足が見えて、礼の姿勢のまま後ろへあとずさってしまった。
………………あぁ………。私はなんで、膝を折ったまま下がろうとしたのだろう。しびれる足で。
ぐらっとからだが傾いだ。一気に頭の方へ傾いた重心を腕でとろうとしたが足がもつれ、私の最後の抵抗は虚しく終わりを告げた。
転ぶ………! 覚悟した瞬間、
倒れる私に焦った顔をして駆け寄ってくる彼が視界にはいった。
「あぶない!」
え………………。
ドサッッッッッ!!!!
「………いた………」
彼の腕を下敷きにした背中が地味に痛む。彼はもっと痛いことだろう。せめてあまり体重をかけないように、反射的に背中を反らせる。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
栗色の髪が彼の顔を隠してしまっていて表情が分からない。
「………うん。頭打ってない?」
そう言いながら彼が頭を降って髪をどける。彼と目があって正気に戻った。
………いや、大丈夫ですけれども。頭はあなたの手によって完全に包み込まれていますし。お尻だってあなたの腕が仕えて地面についていませんし。
………そこじゃないわ。
私の頭を覆うように抱いている右手、私の体に巻き付けられた左腕、私の足を割っている恐らく右足。
辺りには脱ぎ散らかされた私の靴。極めつけはそこに抱き合って倒れる髪の乱れた男女。女の方はまだ少女。
………事故としか言いようがない。
自分の顔色が悪くなるのを感じた。誰かに見られたら一貫の終わり。腕でぐっと彼を押し退け、体を起こしながら距離をとった。そして同じく座り直した彼を見る。
「た、助けてくださってありがとうございます。ですが誰がに見られたら………。」
言いながらきづく。彼が呆気にとられたような顔で私を見ているということに。
………………髪がボサボサなのは許して欲しいとか最初に思った私のばか。
「………………………目が………。」
「え………?」
バッと目を覆った。
ばれた、ばれてしまった。
震えながら指の間から様子を見ると、彼はまだ呆然としている。
どうしたらいいのか、分からなくなって困惑した私は、
「もっ申し訳ありませんでしたぁっ」
後ろを振り返って、脱兎のごとく駆け出した。