私は伝説のオーブリー(2)
「っうそ………。リリアンが………」
「アンナ。大丈夫だ。あれは昔の話で………。」
「でも、でも皇子は確かに一つ………。」
二人とも青白い顔をして震える声で話している。私はそれを理解できず、黙って見つめることしかできない。
オーブリーに何か関係があるの………?私どっかでそれを………。
「ライ、どういうこと?」
お兄様達がお父様の足元で話すのが聞こえた。お兄様は知っているのかな。
「………オーブリーというのは精霊に愛される少女のことで、確か………必ず桃色の目の色をしているって本に書いてあった気がする。ベドフォード家にはそういう女の子が産まれることが本当に稀にあって、そういう子のことをそう呼ぶんだ。オーブリーは魔力が高くて、精霊に愛されるから、オーブリーが産まれれば皇族に献上してたって………。」
オーブリー……… 精霊に愛される……… 皇族………
必死にキーワードを頭に並べる。
何かを思い出しそうで思い出せない。絶対どこかで聞いたことがある………!
オーブリー、リリアン・ベドフォード………
オーブリー………
桃色の………………ひとみ………………………………?
あっっっ!!!!
これ………前世で読んだ、小説だ………!
一気にその内容を思い出す。確か、題名は。
クリスタル王国物語………だったか。
記憶を辿って一つずつ思い出す。
始まりは、皇子が魔法を一つ、手に入れられないことから始まった………。
クリスタル王国の皇太子は五大属性と呼ばれる、
火、水、風、土、闇 の魔法を使えなければならなかった。それを使えることが王になる条件だったから。
だけど皇太子はそのうちの一つ、闇の魔法が使えなくて、オーブリーであるリリアンを婚約者にした。でもそれでも、闇の魔法は使えなくて、皇太子はリリアンを疑いはじめる。本当にオーブリーなのかと………。
そんなときに、王国にある少女がやってきた。彼女は神秘的な黒髪黒眼を持っていて、人々は天使としてあがめ、皇太子も彼女に恋をした。そして天使もまた、皇太子を愛した。
二人は結婚を望んだが、王国の影の支配者とも呼ばれるベドフォード家のリリアンを今さら邪険に扱うこともできず、リリアンを忌々しく思っていた。
リリアンはそれを知りながらも皇太子のために、己の命を犠牲にして皇太子に闇の魔法を与えた。
………皇太子を、愛していたから。
そうして皇太子と天使は末長く、幸せに暮らしました。
………………っていう………なんともひどい小説だったような。あのときの私もこの小説は嫌いで、一回読んだっきりだった。だからすぐ思い出せなかったんだ。
………まって。じゃあ私、
皇太子と婚約したら死ぬってことじゃん!
「やぁぁぁぁっ!(絶対いや!)」
お父様たちに意思を伝えるために思いっきり手を伸ばして叫ぶ。
お父様たちは私が話を理解したとは思っていないようだけれど、私の目を見てうなずいた。
「………大丈夫だ。リリアン。アンナ。カイにライも。昔とは違う。
………皇族にリリアンを渡すものか。」
怖いくらいに真剣な顔をして言うお父様。さっきまでの優しい態度とはまるで違い、一家の当主である厳格な雰囲気をしていた。
この世界の人の本気をはじめてみたような気がして、言葉を失った。
「「~~~~っ! 俺たちも守る!!!」」
お兄様達まで………
みんな………
「ばぶぅあっ!(ありがとう!)」
………………まずは言葉の練習だわ………。