オーブリーなのに剣術ができてもいいですか?
パアッ
「………。」
手の中に光る小さな球を見つめ、言葉にできない思いがこみ上がってきて、思わず涙をこぼした。
どうしてなんだろう。オーブリーだから頑張ればすぐ皇太子様を越せるほどの魔力を持てると思ってた。
なのに、普通の貴族の令嬢たちと同じ、ううん。さらに低いレベルの魔法か使えない。
陛下にも要検討と告げられて、お父様にこれ以上頼るわけにはいかない。
「っ………ぐすっ」
自分が光属性しか使えないことを知った日から、私は泣きながら眠る夜を繰り返していた。
「リリー起きろっ!訓練場行くぞ」
「んぅぅ…?くんれん………」
「一時間後こいよ。」
「んー。
………………………え!?」
ガバッと跳ね起きたがもうすでにライお兄様は出ていったあと。慌ててオリビアに動きやすい服を頼む。
「ああ、それと!朝ごはんも急いで用意するよう伝えて!」
「かしこまりましたお嬢様!」
オリビアは私の専属メイド。今15歳で、一番年が近くて優秀なメイドであるオリビアは、三年前から私のそばにいてくれる大好きな人。
オリビアが出ていくのを見届けて、急いでベッドからおりた。
「一時間後なんて無茶です、お兄様。」
「ほい。」
!?
朝から急ぎすぎてぐったりしている私に、お兄様は何かを放り投げてきた。慌てて受けとると、それは剣だった。
剣!?なんで私に
困惑している私に、お兄様は言いはなった。
「おれはこれから、心を鬼にしてリリーに剣術を教える!」
「………は?」
ーーーー二時間後ーーーー
「はぁ、はぁっ」
「よし、さすがリリー!筋がいいな。」
体術、剣術の天才ライお兄様もまだ十二歳の子供。
遠慮がなかった………………。
肩で大きく息をついて、こめかみから流れる汗をぬぐった。
私、まだ七歳なんだから………!!普通の子なら無理だから!
魔法の訓練をしてたお陰で、体力がある程度あってよかった。
「それじゃあ今日はこれで終わり!おーい!!」
ライお兄様の掛け声とともに女の人たちが私の前にならんだ。じりじり近づいてくる。………何か嫌な予感が………。
「マッサージだ。受けてこい。リリーの大事な体を壊すわけにはいかないからな。」
お兄様がにっこり笑った。
ま、まっさーじ………
体が痛いのは事実だったし、逃げることはできなそうだ。
大人しくされていくことにした。
ーーーー二ヶ月後ーーーー
「………………どうしてこうなった?」
「カイが原因ですね。」
ライがいつも通りの落ち着いた口調で言う。なぜそんなに落ち着いているのか分からない。
「私がリリーに剣術を教えるように言いました。リリーが執着していたのは強さでしたから。」
ライが言ったのか!!
それがこの結果だと………
ベドフォード家当主の目の前には、倒された自分の騎士達。皆二ヶ月前の自分と同じように頭を抱えて落ち込んでいる。重たい雰囲気の訓練場の真ん中では今まさに模擬訓練が行われている。片方は自分と同じくらいの体躯をした騎士、片方は………………
………我が娘、リリー………………………。
キンッッ
金属音をならして剣が飛ぶ。リリーの勝利だった。