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公爵家の跡継ぎにお願いされました


 「精霊を探す………?」


 「ああ。」


 精霊を探すって………。



   いったい何億体いると思っているんだろう?



 ポカンと口を開けていると、クララック様はますます申し訳なさそうに私を見つめた。


 「無謀なことだとは分かっているんだ。でも、僕だけじゃ見つけられない。オーブリーである貴方の力を借りたい。」


 切実な目を真っ正面から向けられうっと詰まった。オーブリーであることを黙っててもらうから、とかいう以前に、こんなに真剣に(しかも七歳の少女に)頼んでくるひとの断りかたなんて、私は知らない。


 「………分かりました。」


 「いいの?」


 「はい。」


 頷くと、クララック様は微笑んでありがとう、と言った。

 それを見たまわりの精霊達が一気に浮かれ出す。


 "ね?リリアンは優しいの" "リリアン好き~。"


 あれ?


 そんな精霊たちを見て考える。

 こんなに仲良くしてくれる精霊たちがいるなら、この精霊を連れてきて欲しい!って言えばいいんじゃないのかな。

 それを伝えるとクララック様は首をふる。


 「教えない、と言われてしまうんだ。」


 教えない?クララック様のこと大好きみたいなのに。


 「精霊たち。前言った方の件なんだけど………。」


 証拠を示すようにクララック様がまわりの精霊達に言った。


 "前の方?"


 「僕が前に、探して欲しいと言った………。」


 "やだ~"  "教えな~い。"


 ひゅんっと風をたてて精霊たちがいなくなる。

 こうなった精霊はどうすることもできない。精霊は嫌と言ったら嫌なのだ。その状況を見て頷いた。


 「なるほど。私が探すしかないようですね。どんな精霊なのですか?」


 私の言葉を受けて、ゆっくり思い出すように空を見上げた。


 「銀色の髪に青い色の目をした綺麗な精霊でね、幼い頃、僕を助けてくれたんだ。」


 助けた………?


 「僕がちょうど君ぐらいの年齢の時、この先にある深い森で迷ってしまってね。」


 クララック様はルアン様のいる茂みのさらに奥を指差した。 


 「そこで、命にかかわる大ケガをおってしまったんだ。

僕は歩けなくなって、ある湖にたどり着いた。そこで彼女と出会ったんだ。」


 ………彼女。

 その表現が引っ掛かった。クララック様はその精霊を人を呼ぶように言った。つまり人間型っていうこと?


 「彼女は大ケガした僕を治してくれたんだが、代償を受けてしまったんだ。羽を片方、なくしたんだよ。」


 「羽………。」

 

 思わず呟く。

 精霊は羽をなくすと致命的。常に飛んでいるから。


 「謝る僕に、彼女は言ったんだ。なら契約精霊ができた時、二人で私のもとへ来てって。」


 それで探してるってことね………。


 「分かりました。探してみます。」


 できる限り協力しよう。


 「本当!?」


 でも………


 私の表情が暗くなるのを読み取ったクララック様は居心地が悪そうに聞いてきた。


 「やっぱり難しい?」

 

 「………ええ。これほど精霊たちがいやがるのは訳があると思うんです。時間がかかるでしょう。」


 とても申し訳ないけど………一年では済まないかもしれない。


 「分かってる。それでも構わない。どちらにせよ君の力がなければ見つけることは不可能だ。」


 今さらクララック様が逆上するような人間だとは思わないけど、それを聞いてほっとした。頷いて立ち上がる。


 「それではこちらの方で進めさせていただきます。本日はこれで失礼いたしますわ。」


 「帰るの?」


 クララック様も慌てて立ち上がった。


 ライお兄様がきっと心配してるから………。

 

 「はい。兄も心配してるでしょうし………。兄は完璧主義者なので、相当落ち込んでいると思うんです。」


 頬に手を当ててわざとらしく悩ましげに言ってみた。それを見て精霊が集まってきた。

 

 "かえるー?"


 「ええ。」


 "じゃあおくるー。そこにたって。"


 精霊にお礼を言って言われた通りにする。クララック様の深い海のような色の瞳が私を静かに見つめる。


 「クララック様、今日は大変お世話になりました。またお邪魔してもよろしいですか?」


 精霊を探しに。


 「!もちろん!!いつでも来て欲しい。今度はお菓子を用意させておくよ。」


 ………精霊をさがしに、ね?


 

 

 



































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