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レインボウ アーツ  作者: ニョグタさん
2/4

ナスビ

長い休みというのは、どうもやる気まで

削いでしまいますね。

 「王都新聞、号外だよ!」

 「ホムンクルスが逃げ出した?」

 「気味悪いなぁ」

 「しかも結構ジマリハと近ぇじゃねえか!」

 「石の腕が付いてるらしいわよ」

 「ひぇ〜おっかねぇ〜」

 「何かありゃ村自慢の

  デカ牛がブッ飛ばしてくれるだろ!」

 「そうだが…山には近づかねぇ方が良いな」


 魔物の出ない平和な村、ジマリハに

 悩みの種が生まれた頃、


 私は家で寝そべっていた。


 「アルカ〜?」

 「ん?何?母さん」

 「ここの近くでホムンクルスさんが

  逃げたらしいわよ?」

 「ふーん」

 「あら?興味無いの?こういうの

  好きそうなのに」

 「…興味はあるし会ってみたいけど

  今は気分じゃない…

  あー、あっちから会いに来ないかなぁー」


   ガチャン


 「ただいまー

  …今日は一段とやる気無さそうだね…」

 「んー、

  シエル、ホムンクルスに会った?」

 「そんなの話題になってたね

  はい、お母さん、卵とオマケの茄子」

 「黒い茄子なんて

  また面白い物貰って来たわねぇ」

 「卵と茄子、ねぇ…」

 「て言うかお姉ちゃん、

  ホムンクルス探ししないの?

  もうしてるかと思ってた」

 「いや…明日で良いかなって…」

 「多分、明日、ジマリハ山方面

  封鎖されると思うけど…」

 「んん〜…大丈夫でしょー

  ジマリハの平和ボケ、舐めんなよ」

 「全く嬉しく無いなぁ…」

 「シエル、夕ご飯の支度手伝って〜」

 「はーい、

  …お姉ちゃん、一寸位手伝ったら?」

 「今日は、皿配りすら

  やる気が起きんのだよ…」

 「…やっぱり王立行く以前に

  お姉ちゃん変革させないとなぁ…」


 私ことアルカと、妹のシエル、

 母のアルコ、父のバレイドの

 四人家族、


 今日もトワイド家は平和だ。

  ・

  ・

  ・


 次の日


 「トワイドんとこの嬢ちゃんかい?

  悪いが、ジマリハ山には行けねぇぞ?」


 平和ボケなんてして無かった


 「うーん…どうすっかな…

  火葬場との距離的に今日が

  ぴったしなんだけどなぁ」


 別に、昨日探しに行かなかったのは

 やる気が無かっただけという訳では無い。

 確かに逃げ出した場所、火葬場から

 ジマリハ山は近いけど、

 子供型のホムンクルスらしいから、

 一日で動ける距離はそこまでだろうし、

 ホムンクルスって子供でも

 大人並みに丈夫だから、

 魔物が出ないジマリハ山で

 野垂れ死ぬ事も無いだろうしね。

 何より、私の体力は限られているし、

 見つかる可能性が高い日を選んだのだ。


 頭の中の二割もこの考えが有ったのだ。

 決して、やる気が無かっただけじゃ無い。


 しっかしどうしたものか、


 「…これは久々に“探検”、かなぁ」


 一つ思い付いたので、村の南西に向かう。

 そこには、

 ポツンと枯れ井戸が有るのだが、

 実は、ちびっ子達の穴場スポット。

 井戸の底に小さなトンネルが有るのだ。


 「問題は、通れるか、だけど」

 

 鞄小さめにしといて良かったなぁ…

 替えの服もあるし、汚れても大丈夫。


 枯れ井戸まで来たけど誰もいない。

 ホムンクルスが怖くて

 家に籠もってるのだろう。

 今の私には都合良い。


   ギィ…ギィ…

    キュッ

    ヒュイッ

    キュッ

    ヒュイッ


 私お得意の魔法っぽい力で

 井戸の屋根から吊るされた縄を

 安全に伝っていく。

 その力というのは、物と物をくっ付ける、

 というもの。

 今は自分と縄をくっ付けている。

 一フィート程離れていても

 くっ付けられるから、隙間に落ちた物を

 手繰り寄せたり出来る。

 意外と便利だ。

 

 縄が途中で千切れる事は無さそう。

 私の重みで千切れたら、

 何かこう…悲しい…。


 …底に着いたけど、試練はここから。

 直径一フィート程しか無い穴を

 くぐり抜けないといけない。

 十歳のシエルに、身長差

 四ポンド以下に迫られている、

 小柄な私の体型を活かす時…!


   よじよじ…


 …すんなり入れたなぁ…

 シエル…大きくなれよ…


  穴の中での出来事


 一・五フィート地点、

  入ったばかりだが、

  暗闇バッタ(カマドウマ)

  が顔に飛びかかり、ビビる。


 三ヤード地点、

  汚れた巾着袋を見つける。

  中身の“宝物”からして、

  ちびっ子が落としたのだろう。

  後で枯れ井戸の縁にでも置いておこう…


 七ヤード地点、

  ねずみさんを発見。

  可愛いけど、病気は勘弁。


 十ヤード地点、

  ここから上へ斜面になっていて、

  先に光が見える。


 十ニヤード地点、

  暗闇バッタ、再来。

  今度は大丈夫だった。

  よく見ると、意外と可愛い。


 十五ヤード地点、

  穴を抜ける。


 穴を抜けた先は、

 上にぽっかり穴が空いた空間。

 そう、ここは村の外の枯れ井戸なのだ。


 今通ってきたトンネルは、

 冒険者を志す男児の心を鍛える為のもの。

 平和なジマリハならでは、だ。

 十五ヤードもの暗闇の道は、

 村の大半の人がトラウマを抱いている。


 私は、九歳辺りで同年代の男共に

 おちょくられ、挑戦した事が有った。

 その時は、涙やら鼻水やらで顔面崩壊

 しながら抜け切ったっけ。

 暗闇が永遠続くかと思う程長いんだよね。

 成長した私ですら長く感じるからなぁ。


 私は、井戸の中に垂れている

 縄を手繰って登る。


 結構疲れてきたが、

 探索はここからなのだ。

 登ったら、気合い入れて探す…ぞ…?


 井戸の中から顔を出した私の前には、


  白い何かがいた

 

 「…!あっ!ぶな!」

 

 びっくりして手を離してしまったが、

 縄と私をくっ付けていたお陰で助かった。

 私の力様様である。

 それより目の前の何かだ。


 よく見ると、白いのはボサボサの

 髪の毛だった。その両側から

 石っぽいのがはみ出ている。

 …石?巨大な手みたいだな…


 「! ホムンクルス!」


   ビクッ!

  スタタタタ…


 あっ逃げる!追いかけ…


   ドテッ


 …コケた。


 「よいしょ、大丈夫?」


 …可愛らしい顔だなぁ…

 髪整えたらもっと可愛くなるだろうね。


 「傷、見せてみて、

  切り傷なら治せるし」


 白い子は、石の腕で左膝を指差す。

 よく見たら酷い格好だなぁ

 服ボロボロだし、下は履いてな…


 …あっ、やっぱ女の子だ。

 確か、大きめのコート

 あったはずだし後で渡そ…


 傷は切れて結構血が出ている。

 石にぶつけて切れたのかな。

 思いきりコケてたもんなぁ…でも、


   キュッ


 「取り敢えず塞いどいたよ

  でも、汚れ洗い流さなきゃいけないし

  川まで来てくれる?」


 「……ウん」


 良い子だなぁ、

 何でこんな子が

 廃棄されちゃうんだろ。


 ジマリハ山の水は綺麗だ。

 魔物が出ない原因、特殊な魔素の効果で

 汚れが綺麗さっぱり無くなるからだそうだ。

 勿論、傷口を洗うのにも使える。


 「一寸我慢してね」


   ヒュイッ

  バシャバシャ…


 「…んっ!」


   キュッ


 「タオルで拭いて、と

  後は着る物着る物…

  あったあった、はい、これ着てね」


 渡しそびれていたコートを渡す。

 大きい石の腕は袖に通らなそう。

 元々の服も、布一枚を

 首と腰で結んだ感じだったし

 結構不便だろうなぁ、この子。


  「…そういや名前、何て言うの?」

 「…」

 「…無理して言わなくて良いよ、

  一寸、お話しようか」


 川辺に生える木にもたれる。


 「…私の名前はアルカ、ここのすぐ下の

  ジマリハって村に住んでるの。

  あなたも分かると思うけど、

  ここら一帯魔物が出ないんだよね。

  でも昔、村に魔物が入って来た事が

  あったんだ。入れたのは私だけど。

  その魔物は赤ちゃんだったんだけど、

  冒険者…冒険者って分かる?

   「分カる…怖イひト…」

  おっけおっけ、その人らが恐れる

  様な強い魔物の赤ちゃんらしくて、

  村だけでは収まらない、それこそ

  国ぐるみの問題になりかけたんだけど、

  村の秘密にする事にしたんだ。

  何でかって言うとね、

  その魔物が凄く可愛くて

  お利口さんだったからなんだ。

  勿論、利口なフリをするヤツもいるけど

  真実を見抜くとか何かで有名な

  冒険者さんに見てもらって、良い子の

  お墨付きを貰ったんだ。

  その人も、“こんな綺麗な心を持った

  魔物は見たこと無い”って驚いてたなぁ。

  その魔物なんだけど、牛に似てるから、

  今は村の牧場で牛に紛れてるんだ。」


 あの時はみんな優しかったなぁ…

 私の無茶を受け入れてくれて。

 ちなみに一年も経たない内に国に

 バレたけど、冒険者さんのお陰で

 お咎め無しだった。

 冒険者さん様々だ。


 「…」

 「何が言いたいかって言うと、

  良い子に出来るなら、村の人らは

  受け入れてくれるはず。

  だから、村に来て欲しい。」

 「…良イの?」

 「これは私の我が儘だから、

  一概に良いとは言えないけど、

  多分大丈夫だよ、みんな優しいし。」


 いけるいける、オーロク(魔物の名前)

 の時よりか受け入れ易いでしょ。

 腕以外人だし。


 「…だイ丈夫?」

 「大丈夫大丈夫!こう見えて私

  顔広いから!

  村の人気者なんだぞ〜?」

 「…本トうニ?」

 「…信用されてないなぁ…

  初対面だけどさぁ…」


 “信用されてないなぁ…初対面だけど”


 「…なスび…」

 「茄子?それならまだ家に…

  「ナ前」

  えっ名前!?」

 「…村に行ク」

 「…!ありがとう!」


 それからもう少しお話をして、

 ホムンクルスのナスビちゃんと

 結構仲良くなった。

今回の内容について


主人公、アルカの人となりについては何となく

お分かり頂けたでしょうか。


主人公の住む村、ジマリハの特色については

近くの話で取り上げます。


前回の後書きは長くなりましたが、基本、

これからはこれ位の長さになると思います。

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