七話
今回、また新キャラが現れます。
そして始まります学校編。
出来るだけ甘いものを書いて行けるよう頑張りますので応援していただければ幸いです。
余談ではありますが本日3/19日の0時の時点で【日間 現実世界 恋愛】タグにて9位獲得させていただきました。
読者の皆様には本当に感謝してもしきれませんが本当に、ありがとうございますm(_ _)m
ドタバタした週末も終わりを迎え、俺たちは学校へ向かうために家を出た。
先週までの気持ちの違いは渚が正式に俺と付き合ったことと依存気味だと思っていたことを気にしなくて良くなったことだろう。
そして、それは通学中の渚の行動にも変化が現れた。
「なあ、渚」
「ん?どーしたの?」
「ちょっとくっつきすぎじゃね?」
「そう?いつもどーりだと思うけど?」
「どう見てもいつも通りの登校風景ではないよな」
腕を絡ませて……というよりももはや抱きつくと言ったほうがいいような体制で渚は俺の隣を歩いていた。
「歩きにくくないの?ってか恥ずかしくないの?」
「私は大丈夫!そしてちっとも恥ずかしくないです!」
周囲からの射殺すような視線と好奇の視線が突き刺さって少し居心地は悪いけどまあ、それならいいかと考えるのをやめた。
普段なら学校に入って靴を履けば普段は別々に教室へ向かうのも
「陽翔、いこっ!」
俺の手を取ってそのまま教室へ向かって行ってしまった。
そのおかげで
「「…………おめでとう!!!!」」
教室に入った瞬間全てを察したのかクラスメイト全員がそんな言葉を口にした。
「ふへへ、ありがとう!」
ニコニコしたまま手を離して自分の机に歩いていく渚を見送って俺も自分の席へと向かう。
「おい、この土日で何があった」
「聞かせてくれ新海」
詰め寄ってきたのは湊と進藤だった。
その目には好奇と祝福と色々なものがごちゃまぜになったようなものが含まれていた。
「……まあ、付き合い始めたってのがただただ事実なんだが」
「え、新海と風祭さんって付き合ってなかったのか?」
「信じられないことにな。高校生活始まって数日でクラス公認カップル呼ばわりされてたのにも気がつかないレベルの鈍感カップルだけど」
驚く進藤とやっとかと呆れたと言わんばかりに首を振る湊。
「で、色々解決したのか?」
湊にはこれまで沢山のことを相談して助けてもらっていた。
特に渚関係のことばかりだが、それでもいつも真摯に答えてくれて、最後にはいつ告白するんだと言われて『釣り合わないから』と答えをはぐらかしてきた。
「まあ、ひと段落ってところ。俺の方もいろいろ気持ちの整理とか覚悟とかできたから」
「そか、よかったよ」
「なんだよ。なんの話?」
「同中で親友の俺だけが知る特権情報だな」
「んだよそれ!ずるくねぇ!?なあ、新海!俺たちも親友になろう!ああ、そうしよう!」
勝ち誇ったような湊と悔しがって俺に詰め寄る進藤。
困ったなと渚の方を見れば朔月と香坂に詰め寄られて困り果てて俺の方を見ていた。
目線があって2人揃って苦笑する。
まあ、こんなことも覚悟してたと軽く言えるならカッコよかったんだろうけどな俺も渚も
あーだこーだ言ってるうちに始業のチャイムが鳴り、先生が入ってくれば進藤は仕方ないと言わんばかりの顔で自分の席へ戻っていく。
とはいっても俺の後ろなんだけど
時は流れ昼休み。
「よっし、新海。親友の第一歩として俺と飯を食おう」
「そういう空気読めないところがダメだよな連夜」
終業のチャイムがなった瞬間、進藤が俺と湊の隣に来てそんなことを口にすれば呆れたような顔で湊が口を挟む。
「はあ?いいじゃねえかよ一緒に学食行くくらい」
「お前な、陽翔と渚さんが付き合って初めての登校日だぞ。色々あるだろ?渚さん的にもさ」
ちらりと2人が渚を見ればこっちをチラチラ見ながら2つ分の弁当箱を持ってそわそわしていた。
「……ごめん、俺間違ったわ。行ってやれよ新海、俺は……七海と飯食うからさ!」
「わり、俺朔月と食うから」
「こ、この裏切り者めぇぇえええ!」
「し、進藤はそのうち一緒に飯でも行こうな」
「絶対だからな!忘れんなよ!」
進藤に一声かけて賑やかな2人を背に俺は渚の元へと向かう。
「進藤くんも湊くんも賑やかだね」
「渚も香坂と朔月と仲良くできてるみたいでよかったよ」
「うん、2人とも多分まだ私のこと全部知らないし。まだ気楽に話せるかな」
結局、俺と渚以外のクラス委員でメシを囲んでる4人を見てきっとこいつらなら大丈夫だろうと思い始めていた。
あいつらは……湊は元からだけど。
きっと、才能だけで渚と付き合うような奴らじゃないって漠然とだけどそう思っていた。
「天気もいいしさ、中庭で食べないか?」
「うん、そうしよ」
教室を2人で出て、靴を履き替えて中庭のベンチに座り、渚から弁当箱を受け取る。
「えっと、朝ドタバタしてたから。朝ごはんと昨日の夜のあまりだけど……」
申し訳なさそうにする渚の顔を見ながら俺は昨日の夜と朝ごはんの献立を思い出す。
うん、普通に美味かったし何の問題もないだろ。
それに、渚が作ったメシなら何だって美味しくいただいてしまう自信がある。
「大丈夫、渚が作ってくれるだけで嬉しいから」
「えへへ、そう?ならよかった」
周囲にたくさんの生徒がいるけど、その中でカップルぽいのはおそらく先輩達の数名の組み合わせだろう。
ただ、その全ての先輩達が俺たちを見てニヨニヨしながら弁当を食ってるのが地味に気にくわない。
おまけに今よく見れば草むらとかに数人で座ってる男子生徒グループや女子生徒グループもやけにベンチから遠い位置に座ってる。
そんなものなのだろうかと適当に思考の隅に追いやり弁当箱を開ければ想像していた料理を綺麗に敷き詰めたお弁当が眼前に広がった。
「おお……美味そう」
「もう、昨日と今日食べたやつだよ?」
「それでもだろ。俺には味がわかってる分、それが間違いじゃないの知ってるからな」
箸をとって、弁当を口に……って、箸は?
「渚さん、箸がないです」
「えっ!?うそ!?」
ニコニコとしていた彼女の表情が驚愕に変わる。
あ、この表情の感じ、本気で入れ忘れたなと何となく察した。
「えと、ごめんね。私の箸でよければ使って?」
「そしたら渚が食べらんないだろ。午後の授業持たないぞ」
「私より陽翔の方が男の子なんだし食べないと……」
お互いに一本の箸を譲り合っていたところで周囲の先輩カップル達が突然大きな声で
「はい、あーん」
「あ、あーん」
一斉にそんなことをやり始めた。
この先輩達、それをやることにためらいはないのか!?
しかも全員一斉とかマジでわけわかんないんだけど!?
「は、陽翔!」
「どうした、渚……って、え!?」
顔を真っ赤にしながら卵焼きを箸で掴んで俺の口元まで持ってきていた渚が目に入る
「あ、あーん」
「え、ちょっと……え!?」
「は、恥ずかしいから……早く食べてぇ……」
そんな渚を見た先輩達(女生徒)はニヤリの口角を上げ、先輩達(男子生徒)は早く行けという顔をしている。
そして目の前の渚は顔を真っ赤にしながらプルプル震える手で箸で掴んだままの卵焼きを俺の目の前で固定させていた。
俺は色々なものに悩まされた結果。
それをものすごい勢いで口にすることにしたのだった。
それから20分後、先輩達と外野に終始ニヨニヨされたままあーんしたまま食べさせ合うという羞恥プレイをお互いに完了させてお互いに顔が真っ赤のままだった頬もだいぶ熱が冷めてきた頃、渚は俺の肩に頭を乗せてこっくりこっくりと舟を漕いでいた
「寝てもいいぞ、五分前になったら起こすから」
「……寝ないもん、私がはーくんに膝枕するんだもん」
「完全に眠たくなってるじゃないか」
渚の頭を膝の上に乗せて、横になってもスカートの中が見えないように着ていたブレザーを渚の腰にかけてやる。
そして、渚が眠れるように優しく頭を撫でてやればすぐに眠るはずだ。
「はーくんの膝、安心するぅ……すごいしあわせぇ」
「そっか、ほら、ゆっくり寝て。一緒にいてあげるから」
「うん、おやすみ……はーくん……」
すぐに規則正しい寝息を立て始めた渚の頭を撫でる手を止めて彼女のあんまりにも幸せそうな寝顔を見ていたら何だか俺も眠たくなってきた……
こくんと瞬間的に意識が飛びかけるがなんとか持ち直したりすること数回
「後輩くんも寝ていいよ。20分経ったらあたし達が起こしてあげるから」
正面に座っていた先輩カップルの2人が俺の前に立っていて
「すみません……おねがい、します」
そうして、俺は微睡みの中に意識を手放した。
「……きて、……起きてよ後輩くん」
そんな声と肩を揺すられたことで目を覚ました。
そこにはさっき声をかけてくれた先輩が立っていた。
「おはよう、よく眠れたか?」
「まあ、こんなに可愛い子の寝顔見てたら眠くなっちゃうよね。後輩くんの優しさとか色々見れたし♪」
「おはようございます……すみません、起こしてもらっちゃって」
膝の上ですうすうと眠る渚を起こさないように少し小さめの声で話せば先輩2人はクスリと笑って俺を見た。
そしてこの先輩方、よく見ればとても整った顔立ちをしている。
まさに美青年美少女カップルと言っても過言じゃないだろう。
「ま、こうして知り合えた仲出しさ、ちょっと連絡先交換しようよ。先輩とか後輩とか気にしないでフレンドリーに行こうね」
「おい、美咲。後輩相手にそうグイグイいくなって」
「えぇーいいじゃん。こんな可愛い後輩ちゃんと優しい後輩くんのカップルとか応援したくなるじゃん。和樹だって気にしてたくせに」
「それは……その、初々しくてな」
あははと笑う美咲先輩と少し照れながら肯定する和樹先輩に俺は静かにスマホを取り出してチャットアプリの友達追加画面を開いてIDを表示したまま2人に見せた。
「えっ!?いいの?」
「あのな、幾ら何でも少し信用しすぎじゃないか?」
「先輩達2人は信用できるって判断したからです。よかったら仲良くしてください」
2人合わせて顔を見合わせてそのIDをスマホに入力すると新しく2人の友達追加申請のメッセが飛んできた。
「水樹美咲、3年だよ。よろしくね」
「氷川和樹、同じく3年だ。よろしく頼むな」
「新海陽翔です。よろしくお願いします水樹先輩、氷川先輩」
軽く自己紹介を済ませれば2人はまた顔を見合わせて笑う
「名前呼びでいいよ陽翔くん」
「そうだな、美咲も言ってたけど学年なんて気にしないでフレンドリーに話しかけてくれ。友人に苗字で呼ばれるとむず痒くてな。頼むよ陽翔」
頬をかいたり頭を照れながらかく2人の先輩に苦笑しながら俺は2人の名前を呼んだ。
「それじゃあ、美咲先輩、和樹先輩でいいですか?」
「まだ固いけど、まあいいか」
「妥協点だよ陽翔くん」
そして、2人はスマホの時計を見てそろそろ教室へ向かう時間なのかそのまま軽い別れを告げて教室へ戻っていった。
思わぬところで上級生の先輩と仲良くなれたことが今日の昼休みの大きなイベントだったと言えるが……
俺もスマホの時間を見て渚を起こすことに決めたのだった。
「渚、起きて。時間になったぞ」
「ん、うん?はーくん?」
寝ぼけた目で俺を見てまた幸せそうに笑う渚を見て俺も自然と笑みが浮かぶ
「おはよう、時間だから起こしたよ」
「おはよう……すごく気持ちよく眠れたぁ。膝枕最高……」
「それは良かった。それじゃあ、教室戻ろっか」
「うん」
渚のスカートを隠すためにかけていたブレザーを回収してそのまま制服の上に羽織って2人で教室へと向かっていった。
そして後で気がついたことなんだが
このブレザー、自然に羽織ったけどずっと渚の脚にかかってたってことだよな……
意識したらすごくいろんなものがこみ上げてきたからすぐに脱いでそのあとは椅子にかけたまま残りの2限を過ごした