二話
依存系ヒロインって難しい……
もっとこうしたらいいんじゃない?ってアドバイスとかあったら感想とかで教えて欲しいです。
高校生活も始まってから今日で1週間だ。
そうなればクラス内での役員決めが行われるのは至極当然だろう。
クラス内はそれなりに盛り上がって、担任の先生が役職を黒板に書き連ねるとまずはじめに決めるのはやはり学級委員長だろう。
そして、そこで視線が行くのは当然渚の方だ。
何せ入試ですら満点通過の文句なしの首席合格者だ。
次々と渚への推薦が男女問わず上がれば、先生も困った顔をして渚へと頼むしかなくなるのは必然だっただろう。
「風祭、頼めるか?」
「はい。そのかわり副委員長は陽翔……新海君でお願いします」
先生が頼めば渚は快く受け入れた。
しかし、予想外の条件とともに
「だそうだ。新海もそれでいいか?」
「え、普通に嫌なんですが……」
今まで過ごしてきた中でそういう役員はあえて避けてきた俺は半ば反射的に拒絶の言葉を口にした。
「えー、いいじゃん。渚ちゃんご指名なんだし、やってあげなよ〜」
「風祭さんに指名されて拒否る男とか男じゃないだろ……俺がむしろやりたいくらいだぜ」
そんな声があちこちから上がる中、俺はそんなことを口にした本人をちらりと見た。
瞳を潤ませながらスカートを掴んで下を向いてしまっていた。
そんなことをされてはいくらやりたくなくてもやるしかないだろうに……
「あっ、ハイ。やらせていただきます」
「おう、そうか。それじゃあ、後の進行は2人に任せたぞ」
先生が黒板に渚と俺の名前をそれぞれ書いて教卓から離れる。
渚は俺がやると言った瞬間からさっきでの泣きそうな顔が嘘のようにニコニコしていた。
2人で教卓の前に立てば、渚が口を開いた。
「それでは、これから学級委員長を勤めさせていただきます風祭渚です。副委員長の新海君共々よろしくお願いします」
パチパチと拍手が上がる中、俺は渚に問いかける。
「あっ、俺に自己紹介はさせてくれないのね」
「だって、陽翔は何も考えてないでしょ?」
「そりゃいきなり指名されて考える暇もなかったからな」
「ふふっ、ドッキリ大成功……だね?」
唇に人差し指を当てて微笑む渚に少しばかり見惚れていると教室の他の生徒達からブーイングが上がり始める。
「おーい。早く進めてくれー」
「二人の世界は別の場所で作ってねー」
わいわいキャイキャイと次第に声が大きくなっていき、そこで渚の顔が真っ赤になってまた、下を向いた。
「はぅ……またやっちゃった」
ただ、このクラスはたったの1週間で渚が噂よりも親しみやすい女の子であると理解してくれたのは俺としても嬉しかった。
クラス委員決めはその後は持ち直した渚の進行でサクサク進み、直ぐに先生へとバトンを返すこととなった。
学級委員長 風祭渚
副委員長 新海陽翔
学級書記 七海湊
学級書記 朔月七々
学級会計 香坂日菜
学級会計補佐 進藤連夜
黒板に書かれた役職とその隣に書かれた名前を見て俺は席に戻ってため息をついた。
なんとか湊を道連れにしてやったが、この一年間このメンバーと何かしらやっていくと思うと自然とため息が出た。
4限が終わり昼休みに入ると自然とクラス委員に選ばれた6人は学食に集まって1つのテーブルを囲んでいた。
俺は渚と湊に無理やり連れてこられたに近いけど。
「取り敢えず、今日から一年間よろしくな!」
そう口にしたのは会計補佐の進藤連夜だ。赤い髪に高い身長で少し青っぽい瞳のとんでもないイケメン生徒だ。
「よろしく、進藤君。私の補佐だけど普通に会計の仕事もやってもらうからね?」
「おいおい、うっそだろ」
小悪魔的に笑って進藤を絶望の淵に立たせたのは会計担当の香坂日菜。
生まれながらにして艶のある漆黒の髪を持つにも引けを取らないほどの超絶美人の1人だ。
「私も書記として頑張るね」
両手をぐっと握ってニコニコしているのは書記の1人である朔月七々。
渚と同じく黒い髪に黒い瞳、しかし少し童顔なせいで美人というよりは可愛い系の女の子といったところだろうか。
良くも悪くも男子受けしそうな感じの子である。
「まあ、俺は陽翔の道連れみたいな感じになったけど。任されたぶんにはきっちり働くからよろしくな」
そうして視線を集めた友人の七海湊はそのまま俺の方へと視線を向ける。
言っておくが、湊自身もかなりの美形だと俺は思う。
中学からの付き合いだから性格がイケメンなのも知ってるし、今だに何故俺と友達なのかわからない。
「えと、副委員長として主に渚のサポートしていくつもりなんでよろしく」
無難な挨拶をすればみんながクスリと笑った。
「本当に渚ちゃんが言ったて通りの挨拶だったね」
「だね。本当に無難って感じの挨拶で安心したよ」
「いったいどんな説明したんだよ……」
首をガックリと落としてうつむけば他の5人は笑いを堪えられなかったかのようにその声を大きくして笑った。
「それじゃあ、最後は私だね。ありきたりだけど、クラスみんなで楽しめるような一年にしようね」
渚がそう言えばみんなが目を合わせて頷くのだからこれはこれで良かったのかも、なんて俺は考えていた。
下校時間になり、新しく任命された俺たち新学級委員の仕事は特にはまだないらしく、その日はそのまま解散となった。
ちなみに俺や渚以外はバイトや部活があるからとその日は何もなく解散となった。
そうなれば俺はそのまま家に帰るわけで。
そうすれば自然と渚は俺についてくるわけで。
まあ、それだけならまだいいんだけど。
「ふふっ、ぎゅー」
「ねえ、何してんの」
「今日は陽翔と2人でいる時間が短かったからハルトニウムの補給中」
「え、なにそれ」
突然抱きついてきて訳のわからんことを言いはじめる幼馴染に俺は困惑を隠しきれずにそう問いかけた。
「話せば長くなるけど、聞く?」
「いや、結構です」
「なんだよう……聞いてくれてもいいじゃんかよう」
ぶーぶーと文句を言う渚を無視して俺は歩き続ける。
人通りの少ない住宅街だからこそこんなことができるのか、そもそもこんなことをする子じゃなかったような気がすると思ったのもほんの一瞬だけだった。
そういえば、昔から暇なときはずっとくっつかれてた気がする……
もう家の近所までたどり着けば見知った顔のおじさんやおばさんなんかはニコニコ笑いながらこっちを見ていた。
「おい、見られてるぞ」
「近所の人たちでしょ?いいよ別に、私は学校でもこうしてたいくらいだよ?」
「やめてくれ……」
少し疲れたように答えを返せばくっついたまま顔を少し上げて上目遣いになったまま渚は口を開く
「陽翔は私が一緒にいると嫌?」
そんな縋るような目で見られると『嫌』とははっきり言えない。それに、渚と過ごすのが嫌だったら既に別の場所に引っ越してるだろう……追いかけてきそうだけど
「そうじゃないけど、もう高校生になんだし慎みとか周囲の目とかそう言うのあるだろ」
「私は気にしないよ?」
「俺が気にするの」
「えぇー」
あーだこーだ言ってる間に高校入学とともに借りたアパートの前に着く。
家賃とかその辺は親が払ってくれてるし、月ごとの生活費だって送ってくれてるからなんの問題もなく過ごせる予定なのは正直ありがたい話ではある。
「それじゃあ、あとでご飯作りに行くね」
そう言いながら隣の部屋の鍵を開けてそのまま中に入っていった渚を見送って俺はため息をつく。
「ほんと、どうしてこうなった」
カバンから鍵を取り出して俺も住み始めて一週間ちょっとになる我が家に足を踏み入れた。