十話
今回、だいぶ短めですがキリがいいのでここで投稿させていただきます。
深夜含め二度目の更新なのでそちらに目を通されてない方は《前の話に戻る》ボタンをクリックorタップしていただければ
誰かが布団の中に潜り込んでくる感覚で眠りかけていた意識が覚醒した。
誰かといってもいるのは渚だけだから渚に他ならないのは俺もわかってる。
寝ぼけた頭のまま目を開けば目の前には案の定渚の顔が映し出される。
「う、ん……なぎさ?」
問いかければ渚はいつもよりも少し頬をほんのりと赤く染めて頷いた。
「うん、来ちゃった」
こんな夜中に何をしに来たんだろうと思ったが、一緒に寝たいだけだろうと思い、そのまままた眠ろうとして明らかな違和感に気がつく。
「……渚、服は?」
あまりにもおかしかった違和感はすぐにわかった。
今まで渚の薄着といっても少し生地の薄いワンピースとかTシャツにホットパンツとかそういうレベルのものだったが、今回は明らかに違った。
生地が薄いとかそういうレベルじゃないナニカを纏った渚が布団の中に潜り込んでいたのだ。
「えと、その……夜這い……しにきました」
なんか色々ぶっ飛んだ発言をした我が幼馴染に俺の思考は停止した。
ただでさえ寝起きでそんな格好されて意味わかんなくて思考停止しかけてたものを今の言葉で一気にとどめを刺してきた。
「あー、その。なんだ、聞き間違いかな……まだ寝ぼけてるかもしれない」
「夜這いを、しにきました」
「………………」
せめてもの抵抗と、聞き間違えたかなと思って聞いてみたが帰ってきた言葉は全く同じもので俺は絶句するしかなかった。
いや、俺は必死こいで我慢してたのになんでこの子はそういうことするかな……
「………………」
「…………何か言ってよぅ」
「いや、急にどうしたんだろうって思って……」
だけど、結局渚にできるのは布団に潜り込むだけでその先はお互いに知らないんだから、どうしようもないだろう。
なんて、思ってた矢先
「……えいっ!」
「うわっ!」
渚に押されてそのままベッドに寝転がる形になり、渚は押し倒した勢いのまま俺の顔の目の前で自分の顔を止めた。
「私、今日は本気だから……」
「え、ええ……」
いつになく真剣な渚の表情と言葉に、俺は動揺を隠せないままだった、今までそんなそぶり見せたことなんて……
そう思って、色々と思い返す。
高校に入ってから、随分と身体に触れることが多くなってたような気はしていたが……
「陽翔……いろいろアプローチしても全然靡いてくれないし……それどころか何事もなかったのように振る舞うから…」
目の前に迫った唇から溢れたその言葉とともに、渚の瞳からはぽろぽろと涙が俺の頬へと落ちてくる。
「わたし、女の子として見られてないんじゃないかなって不安ななったりして……付き合ってからももっとくっつくようにしても……全然ダメだし……不安になって」
どんどん言葉が小さくなっていく渚を見ていると、ああ、そういうことかと納得し始めてきた。
つまり、俺が渚が必死にアプローチしてきてるのに手を出さなかったから不安になってこういう行動に至ったと……
俺が渚のことを考えて、何も言わないで我慢し続けたのが渚を追い詰めていたわけだ。
結局、渚のためにと思ってやってたことが今回も悪手に出てしまったということだろう……
押し倒されたといっても、両手が塞がれたわけじゃない。
空いている両手を使って、渚を抱きしめる。
「え?は、陽翔?」
「正直いうと、毎日すげぇドキドキしてた。渚は無自覚でやってると思ってて、なんとか手出さないようにして。勝手に自分で決め事して、それで渚を不安に思わせてたなら……謝る」
自分で言っててどんどん不甲斐なくなってきたけど、それでも決めたことだから、渚にも話さないといけない。
「俺が渚の人生にきっちり責任を持てるまで……少なくとも高校生のうちは渚に手を出さないって俺は決めてた。渚のことが本当に大事で、好きだから……」
「陽翔……それなら、早く言ってくれれば……よかったのに」
「ごめん、でもこんなこと恥ずかしくて言えないだろ」
「それでも、言ってくれないとわかんないもん」
抱きしめたから、さっきよりも近くなった距離で渚は頬を膨らませて……でも、先ほどまでの不安の色は消えた瞳で俺を見ていた。
「それでも、こんなことされたら俺だって男だしな」
「……え?……んっ」
少し動揺した渚の唇を、俺の唇で塞いだ。
10秒にも満たない、短いキス。
だけど、俺だってこんな無防備な幼馴染を見て欲情しないわけじゃない。
「これで、許してくれないか?」
「あ、うん……き、キスしちゃった……は、はーくんとちゅーししゃった……」
布団から出て、畳んで置いてあった学校指定のYシャツだがないよりはマシだろうと渚に着せる。
自分のしたことだが、それでも恥ずかしくなって俺も少し目線をそらす……だけど
「は、陽翔?」
「どうした渚……!?」
「んっ」
今度は視線を合わせた瞬間に渚の方から唇を塞がれる。
たっぷりと時間をかけて、1分以上にも渡るキスに思考が追いつかなくなる。
「陽翔が、私に手を出さない理由はわかった。けど……き、キスならいいんだよね?」
唇を離して、お互いに紅潮した顔のまま渚は俺にそう問いかけてくる。
自分からしておいて、今更ダメだなんて言えなかった。
「そ、そう……だな」
「そっか、それなら……明日は休みだし……ゆっくり……しよ?」
そして、再び俺たちの顔はゼロ距離まで近づいて……
3度目の口づけを交わした。
その後のことはよく覚えていないが……それでも脳が痺れるようなキスを繰り返したことは、しっかりと記憶に残っていた。
キスの描写ってこんな感じでいいのでしょうか。
あまり濃いものを書くとR15じゃ心ものないんじゃないかと思ってこんな感じになりましたが……
読者の皆様には二人の世界、伝わりましたか?




