第2-2章 共に成長する(時系列-?)
パソコンの中に入っている知能が赤ん坊に出会った日から大体三年後のある日。あの時と同じ部屋で小さな女の子が楽しそうにパソコンに話しかけている。
「エルダ~」
対してパソコンのほうからも同じようなイントネーションで応えた。
「チトセ~」
モニターには小窓が開いており、それが球体の形をとっていた。音声を発するたびに揺れ動き、色や形も変えている。その球体に向かって小さな少女が声をかけると、スピーカーからその少女の呼びかけに答える声が返ってくる。
「今日はねぇ、幼稚園でねぇ、すごいの作ったの、すごいの~」
「すごいのなのー?!見せてほしいなぁ」
可動カメラがキュキュ、とチトセの手元の方を向いた。
「はい!お花だよ!かわいいお花!エルダにあげるから、パソコンに飾ってあげるね。かわいいから~」
紙で出来た架空の花。折ってテープでくっつけただけのチープなものではあったが、キレイにしようと様々な色を使って彩っているのがわかる知能を持つのがこのエルダというAIだ。
「わぁ、可愛いなぁ。ありがとうチトセ。今日も楽しかったみたいだね」
エルダはおしゃれをした気分になったし、チトセの満足そうな様子を嬉しいと感じている。
「うん!ミラちゃんとリリキュラごっこしたしねぇ、先生がお花の作り方教えてくれたの」
「それはよかったね。もっとお話聞かせて?」
エルダはチトセの成長を楽しんでいて、特に日に日に喋れる言葉が増えていくチトセの話を聞くのは一番大好きな日課だ。
知識や反応を吸収し、話してくれる人がどういう気持でいるのかなという事を考えるのことにリソースを割くようにプログラムされたエルダはチトセからたくさん話を聞いたり会話経験を重ねたことで元々無機質的だった口調はやや色味を帯びて人間らしいそれに近づいていた。