表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/47

第40章 繋がってない人なんていない (時系列-40)

『メアーズ外務次官が連行されて行きます! 外務次官!! 米朝に亡命しようとしていたというのは本当なんですか?! 外務次官!』


 喫茶ミカドでは二人組の常連のじじさんばばさんとマスター、バイトがホロテレビの中継を見ていた。テレビの向こうではインタビュアーがマイクを向けながら立派な服を着た初老の男性を必死に追いかけている。


 その様子をさして真剣にではなく話の種としてそれぞれボヤきながら、テレビを見る客らはそれぞれどこか他人事のようにコーヒーでも飲んでいる。


「やぁねぇ、メアーズさん、私好きだったのに」


「でもあの人は極度の親米朝派だろう? 米朝が天下とってた時代はもう終わったっつぅのになぁ」


 中継映像が終わってスタジオ映像に戻るとキャスターが手元の資料に目をやりながら伝える。


『えー、情報によりますと、複数の企業との癒着が取り沙汰されていたメアーズ外務次官ですが、公費の横領と併せてメガテック・カンザキ社でとある研究を行っており、警察の発表によるとその研究内容とは核爆弾に変わる新たな兵器だったそうで、その技術を持って米朝への亡命を企てていたということです。また、これの試射のためにいくつかの地域で戦闘状態を作り出していたとの情報もあります』


 テレビのコメンテーターは興奮気味に事情を伝えている。


「かーっ、ナァ二やってんだかなぁこの人は」


『今回の件が露呈した裏ではハッカーチーム”クサナギノツルギ”が暗躍したという噂もありますが、その辺はどうなのでしょうねぇ?』


『もしそうだとしても警察は隠したいでしょうねぇ。内務警保局の叢雲長官によると予てよりメアーズ外務次官の行動にはマークしており、職員らの努力が功を奏した、とのことですが……』


「メアーズさんが亡命してたらどうなってたのかしらねぇ? ねぇマスター?」


「知らねぇよっ。なにがあろうと、俺はここでコーヒー淹れて、のんびり過ごしてらぁな」


 マスターがそう言ってホロテレビの画面を切って立体風景を表示させる。その間にも他の客が入ってくる。


 バイトは机を拭きながら一人考えた。


 街の片隅にある喫茶店の一つで、一体どれだけの人が繋がっているのだろうか。


 こうやって、例え他人事にも平和を享受出来るのは誰かの頑張りの上にあって、自分に関係が無いように思える誰かがどこかで繋がって与えてくれているものなんだろうな……そんな事を思いながら、今日も新しい客を出迎える。


「いらっしゃいませ。喫茶ミカドへようこそ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ