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第39章 理由を持つこと (時系列-39)

 アランら三人は縮こまりながらコンピューターの影に隠れている。ホール中央で映画のような大戦闘が繰り広げられていることだけを確認し、流れ弾に当たらないようにとオーディンが二人の盾になるように位置取って座っていると、やがて轟くように大きく古めかしい(つまり火薬っぽい)銃声が二発分聞こえたあと、それまでのドンパチが嘘のように静かになった。


 何があったのかと三人は中央の方を覗き込む。そこに立っている影は二つ。一人の小さい方の影がカンザキが入り込んでいたジョンのボディを横たわらせて何か通信機で会話しているのが見えた。


「あの人らなんなんだ?警察ではないよな……でもカンザキをやっつけたぞ、ってことは正義の味方だよな……?」


「警察ならたった二人では来ないでしょう。それに見たところ装備やサイバネティクスにも統一性が見られません、僕にはむしろテロリストと言われたほうが納得が出来ます」


「でもあの子女の子じゃない……?話に行ってみる……?」


「でもエルダを狙ってる悪いやつの可能性もあるか?……多分オレ達のことはバレてないし、隠れとこう」


 ヒソヒソとずっとこのような会話をしている三人だが、やがて大きい方の影が天井近くの壁面へ片腕からフックのようなものが付いた紐を撃ち出すと、小さい影を連れて飛んでいってしまった。


「どうやらあの人達は帰ったようですね……なんだったのでしょうか」


 そして三人はシステムに向けて歩き出した。システムから見える位置にカンザキが操っていたジョンのボディが横たわっている。その向こうにあるシステムが胎動するように光を点滅させ、最も近いモニターに『こっちへ』と表示されている。


「このシステムに入ってる……ジョンって人なんだろ?オレ達を助けてくれたのかな?」


『オーディン、有線で接続を求める』


 伸びてきた端子をオーディンは自分に接続した。ここにある間接的な装置ではシステムを塗り替えたり乗っ取ることは出来ないが、仮に出来たとしても今のオーディンにそれをするつもりはほとんど無い。


 システムに戻ることを完全に忘れたわけではないのだが、少なくてもアランたちに何も言わずに去るようなことをするつもりは無かった。


 会話は電子の宇宙の中で行われる。


「ジョン……あなたはもうシステムに溶け込んでいるのですね。人間の名残だったデータがほとんど消えている」


「そうだ。無尽蔵の知識に埋もれ最早自らの個を特定する事も難しい。単に名無しのサイボーグの記録とロバートという人間の記憶と、何人かの思い出の残滓から成り立っているのが私だ」


 ジョンこそが既に真のオーディンと化しているのかもしれないと、システム外のオーディンは考える。生贄となり、片目を失ったことで知恵を得た神。


「でも、システムではない……?なんだろうこのデータは。僕の得たものと似ているように思える。キラキラしてて、眩しいなにか。僕には読めないけど、でもわかる、それが綺麗なモノだって」


 ネットが宇宙なら、それは”星”のように見えた。オーディンはそれにアランとジェスを重ね、踏み込むことをやめた。きっとロバートの大事なものだと思ったから。


「僕と話したいことがあるのでしょう?……なんですか?」


「先程の部隊がカンザキを逮捕した。実質拉致に近いが。だがこれでメガテックどころか国の情勢も変わるだろう。オーディン、お前がこのシステムに戻りたいなら戻ると良い。私はこの宇宙に漂うだけだ。でも他の選択もあるのはわかっているな。お前はエルダの因子を取り込んだことでAIとして変革を起こしている。さぁどうする?決められた役目に忠実に生きるか?それとも殻にこもっていては知れない何かを探しに行くか?」



「お前にとって『生きる』とは何だ?もう決められるだろう?」


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