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第28章 ハロー・ストラクチャー!!! (時系列-33)


 学校に連れてくるエルダはほとんどの授業は黙って退屈そうに過ごしていたのだが、経済学の授業においては興味津々だった。


「……というわけで、アンドロイドによる経済支配が進む中で娯楽は非常に重要な役割を持っていると。まぁ百年以上前からオタク産業というのは経済の重きにあったんですけどね、今じゃバーチャルキャバクラなんてのまでありますから……話がそれました。さて、それでは考えてみましょうか、娯楽以外で更に経済を発展させるための方法は何でしょう?答えはいくつもありますし、理想論でも構いません。誰かありますか?」


 ローム・エルダは授業中、小さな眼鏡型サイバネティクスをつけたインテリ中年な先生の方をじっと見ながら話を聞き続けていた。それでこの問題が出た時。アランの足をぴょこぴょこ叩いて「抱き上げろ」のポーズを取ったのでアランは机の下でエルダに「何?」と尋ねた。


「僕わかりますよアラン。答えは……」


「アラン、どうしましたか?」


 アランが机の下でコソコソ喋っている様子にを先生が気付いて彼を名指しした。


「いえ、うちのロームがわかると言っていて……」


 すると先生は少し面白がるように手でロームを上にあげるように指示したので、アランがヒョイとエルダを抱き上げて立ち上がる。


「ではアランのロームくん。名前は?」


「僕の名前はエルダです」


「ではエルダくん。君の答えを聞こうか」


「はい。現在の経済を更に発展させる方法は戦争です」


 エルダの淡々とした答えに教室内がぎょっとする空気を感じるアラン。だが先生は面白がっている。


「そうだね、それも答えの一つだろう。歴史的に見ても戦争によるGDPの増加はしっかりと現れているからね。技術だって進むものだ。でもエルダくん、戦争による経済活性化は長続きしないんだ。結局供給元を潤すのは一時的なものだし、戦場となった国は生産どころではなくなってしまう。それに戦争という手段に頼りたいと思う人は少ないと思うよ」


「どうでしょう。それはこれまでの戦争が経済目的ではなかったからではないでしょうか。なんらかの意図によって行われた戦争の副次効果によって経済活性が生まれていた。そしてそれが小さくない数字であったために戦争に経済効果があると言われ、それが時代と共に否定された。しかし経済目的の戦争であればどうでしょう。適正な価格による兵器の販売、戦場の提供がなされたらどうでしょうか。需要に応じて企業が戦争を起こし買うのです。生産性の少ない貧困地区は戦場として処理することで一掃する事ができますし、そこに生産施設を置くことで雇用も増やせるでしょう。それにお金を貯め込む富裕層に対しても同様、資産を使わせることが出来るのです。裕福にも関わらず資産を使わない者がいる区域に戦争を売ることで解決します。結果、戦争では何もかもが必要になり、お金が回り続けるので経済の水準上昇が見込めると思います」


 戦争による経済の回転。どこかで聞いた話だ。アランは気まずそうにローム・エルダを机において座った。


「話としては面白いね。アラン、君は経済学について家でも熱心に取り組んでいるということかな。だが残念ながらそれが可能なのは所謂ディストピアという世界になるだろうな。経済目的の戦争が是認されるということは今の倫理がひっくり返ることになるだろうからね。でもうん、発想は本当に面白いよ」


 人工知能と人間の面白いやり取りが聞けたと教室の生徒達は皆真剣な表情を作っていて、アランだけが恐縮そうにしている。


「えっへん。どうですかアラン、先生に褒められましたよ」


 ローム・エルダはぴょこんと誇らしげに座った。


「うーん、褒められたけどさ、一体どこでそんな話仕入れたんだ?」


「最初から持っていたと思います。なんだか自分の中で断片化したファイルにそんな知識があって……他にも人材の有効活用というようなデータも……」


 この件でアランはエルダの過去、つまり人型ロボットにあったときの事に興味を持ったし、エルダも自分の記憶デバイスが欠落している事を思い出したのでその件について話せば直ちに二人の利は一致して、早速次の休日にデータのサルベージを行うことにした。

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