第17章 疑惑 (時系列-23)
とある部隊、作戦展開への移動中の車内にて
「少佐、そういやあの大尉の件、気になってたんでこっちの伝で追ってたんですがね」
「大尉? 何の話だ?」
「ほら、目玉溶かされた大尉ですよ、ハイリボ大尉。あの件」
「あぁ、ばばあが我々を送った意味がわかったのか?」
「糸口にはなるかもしれませんね」
「なんだ? やはりマサムネ基地か?」
「それがどうにも軍の上層部では二つの思惑があったようなんです。一つはおっしゃる通り、ホクアーのマサムネ基地の件ですね。敵の戦力をナンクに集め、その穴を叩いて敵の拠点一つ潰すことだったんだとか」
「わかりやすい囮作戦だ。もう一つは?」
「それが……どうやらナンクの拠点にはメガテックカンザキの技術者が入り込んでたみたいで。新兵器の試しに軍が使われてたみたいなんですよ。戦力分布の比重二割がその兵器によるものでした」
「メガテックといえばサイバネティクス事業と、最近じゃ裏で軍とべったりして兵器も作ってるんだったな」
「そうです、メガテックカンザキはある兵器の実地試験を実施したかったそうで……そのための目くらましに大きな戦場を作る必要があった。それで予めナンクで幹部の暗殺が行われる情報をリークして、逆に反撃させる予定だったみたいで」
「じゃああの大尉、目玉まで焼かれてメガテックに付き合わされてたってことか」
「実はそれにも妙なところがありまして。手術を担当した医師や軍、家族らはロバートが死んだとしているんですよ、かなりあっさりと」
「あの状態だったしな。普通に死んだんだろう?」
「それがですね、俺の古くからの知り合いがその病院で医者やってるんですが、そいつは大怪我からのサイバネティクス適応手術をかなりの数成功させてきたやつで、最初はそいつに大尉が回されたらしいんです。片腕、片足と目が欠損してましたけど、そいつがね、目はともかく『俺なら手足は治せた』って言ったんですよ。でも手術前に別の医師に回されて、いつのまにか手術が失敗してたんだとか」
「なるほど……それも調べるべきかもしれんな。ナンクの特務部隊に生き残りがいてはまずいのか、それとも何か別の意図があるのか」