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第13章 夜雲は星を覆う (時系列-6)


 軍に呼ばれたセイはある病院を訪ねていた。ロバートが入院している大病院である。待合室、病室をいくつか通過したが、今の彼女に他の患者は全く見えていない。


 セイは予め説明を受けている。最初、ロバートの体は損傷が激しくサイバネティクスによる治療を試みるしか無いと聞いていた。だがボロボロになった彼に普通のサイバネティクスは適応出来ないと聞かされ、軍の請負をしているサイバネティクスの一流企業「メガテック・カンザキ」による最新サイバネティクスを適応しなければならなかった。


 それでも非常に危険な手術になるし、生存の確率は極めて低い。なんせ片腕、片脚を失い、多数の拷問、片目の蒸発……生きて帰ってきただけでも奇跡だと伝えられた。その状態について、夫の生きている姿をひと目でも見たいと懇願するも外傷があまりにも酷いのでやめておいたほうが良いと医者や軍人から諭されるほどだった。


「それでは、同意書にサインをお願いします」


 セイが渡されたのは手術の失敗で彼が死んでもどこを訴えることも出来ないという内容の同意書だ。その中には視力の回復のために頭を開き、焼かれた脳の神経を取り出すことについての同意も書かれている。セイは彼を助けたい一心でサインをして、手術の間の十数時間、その場で見守り続けた。


 一睡もせずに成功を待ったセイだが、手術の結果は失敗。ロバートはあえなく死を迎えた。セイは死んだロバートにも合わせてもらえなかったが、ロバートの直属の上官だった人物がどうしてもというならと、なくした片目や欠損した四肢の切断面がギリギリ写っていないアングルからの写真を見せてもらった。四肢を乱暴に引きちぎられた人形のような状態で眠るロバートの写真を見てセイは数分気を失ってしまうほど酷い状態だった。


 ステラには説明出来なかった。仕事で長く留守にするとしか言えず、セイは一人で咽び泣くことになるが、その肩を抱く者もおらず。


 夜の空は雲に陰り、一つの星も見えない日の出来事である。


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