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魔王少女、世にはばかる!  作者: bene
第十二章 龍王の死亡遊戯
313/365

9.少女、人間達と戦う③/師弟対決

「――何で人間同士の戦いになってんだァ!?」

「引っ込め雑魚共!雑魚のじゃれ合いなんざ見にきたんじゃねぇんだよ!!」


 ――アミラとメガデスが舞台に上がると、途端に観客の魔族達から罵詈雑言が飛び始める。

 無論、それを飛ばしているのは何れの勢力にも属していない、野良――彼女達の力を見ていない、或いは理解できない魔族達では有るのだが。

 アルケミラの配下達も、バルバロイの配下達も、先程までの試合ではまあ消化試合だな、といった感覚で見ていたものの、今度の戦いに関しては身を乗り出して目を輝かせていた。


 片や、今まで多くの魔族を境界で退けてきた、三英傑の一角。

 片や、かのアルルーナとの戦いで有る種、最も大きな貢献を為した弓手。


「どうする☆うるさいけど、消しちゃおっか☆」

「構わないさ、どうせすぐ静かになる」

「――それもそうだね☆」


 二人は互いに朗らかに、笑顔でそんな言葉を交わし合うと、後ろに一歩、二歩、三歩飛び退いた。

 示し合わせたかのように舞台の端へと立った二人に、罵詈雑言の嵐が飛び交っていく。

 だが、二人はそんな言葉などに耳を傾ける事もなければ、集中を乱されることもなかった。


「よし、ではマロウト。何時も通りにな」

『は、はい!頑張りますぅ……!!』

「そう言えば、意思疎通ができるようになったんだね☆その子の魔力も随分伸びたみたいだし――」


 ――バチン、とメガデスの周囲の空気が帯電していく。

 それは、雷の衣。

 青く光り、火花を散らすソレを事も無げに纏えば、メガデスは今までの可愛らしい、少女らしい笑顔から一転、凶猛な笑みを浮かべてみせた。


「――それじゃあ久々にどのくらい伸びたか、見せてもらおうかァ!!」


 刹那、メガデスの周囲に何本もの雷が矢のように束ねられていく。

 その指先に番えられたのもまた、雷で作られたモノで――彼女が指を爪弾けば、幾筋もの雷光がアミラに向けて放たれた。

 その疾さは、正しく雷鳴。

 音さえも置き去りにするその光の矢は、一斉にアミラを穿ち――……








「ああ。折角だ、私達の力を見てもらおうか」

『こ、これくらいなら僕でも何とかなりますぅ……』


 ……否、その最中で雷光は弾けて消えた。

 雷光を打ち消したのは、一陣の風。

 アミラはその手にマロウトを絡めるようにしながら、大弓を創り出し――


「――やるじゃねぇか。そうじゃなきゃなァ!!」


 ――雷光を弾いたその風は、メガデスの頬を掠めれば背後の壁を打ち砕いた。

 その刹那の攻防に、今まで罵詈雑言を飛ばしていた魔族達が押し黙る。

 代わりに、彼女たちの強さを理解していたであろうアルケミラの陣営、そしてバルバロイの陣営の魔族達は一斉に沸き立った。


 互いに魔族ですら類を見ないほどの弓手、その戦いが如何程なものかと、バルバロイでさえ興味深そうに、楽しげに視線を向けていて。


 そして、互いに言葉もなく舞台の両端から雷光と暴風が吹き荒れる、まるで天災の如き光景が広がっていく。

 放たれているのは雷光の矢に、疾風の矢。

 それが舞台の中央で激突する度に、舞台には亀裂が走り、その周囲には暴風が吹き荒れていく。


 無論、それで逃げるような軟弱な魔族など、この場には居ない。

 もっとも、観客側の隅で縮こまっていた――オフェリアにただ着いてきた狂信者達は、身を守るように物陰に隠れてはいたが、それだけだ。


 その互角の攻防が続いたのは、数十秒が、或いは数分か。

 時間さえ忘れる程に集中した二人は、幾十、幾百もの矢を互いに撃ち落とし合い――


「ハハッ、良いねぇ!あの頃とは正確さ・速度・何方も段違いだ!!」

「それはどうも……ッ!!」

「なら、俺も本気を出しちまっていいかもしれねぇなァ――!!!」


 ――そして、それに狂喜したメガデスは高らかに笑い声を上げた。

 雷光の矢を幾重にも放ちながら、その手に蒼雷が収束していく。


『――あれは駄目です!!避けて下さいマスター!!』


 ソレを見た瞬間、マロウトは叫んだ。

 しかし、間に合わない。

 放たれる矢は文字通り雷が如く。人間――否、魔族であろうと本気で狙ったメガデスの矢から逃れられる筈がない。


 それを理解していたからこそ、アミラはその指先にマロウトの魔力を出来得る限り収束させた。

 それは、かつてメガデスに教えてもらった魔弓の使い方、その焼き直し。

 今では無意識でも扱えるようになったソレを、アミラは意図的に行い――


 ――瞬間、メガデスの指先から一筋の蒼い光が放たれた。

 音は聞こえない。

 そも、文字通り目にも留まらない。

 轟音が鳴り響いた頃には既にその閃光は相手を穿ち抜いているだろう。


 その光を、アミラは僅かなメガデスの指の動きだけで察知した。

 遅れは、文字通りの刹那。

 だが、その刹那の遅れは決して看過できるようなものではなく――


「――ッ、ぁ……ッ!!」


 舞台に轟音が鳴り響く。

 アミラが放った暴風は、メガデスの放った蒼雷を確かに捉えた。

 だが、足りない。

 十分な速度を伴った蒼雷と激突した暴風は砕かれ、弾かれ――そして、衝撃がアミラを襲った。


 弾き飛ばされたアミラは辛うじて踏みとどまりつつ、焼き焦げた肩口を抑える。

 それだけで済んだのは、正しく奇跡だ。

 メガデスは今、アミラの腕を文字通り消し飛ばすつもりで矢を放っていた。

 もし矢を番えもせずに避けようとしたならば、今頃アミラはその腕を喪っていただろう。


「――どうした、そんなもんか?」


 ――それは、メガデスからアミラへの敬意のようなものだった。

 手加減をする事もできただろう。

 だが、メガデスから見てもアミラが一流だと判断したが故に、メガデスは手を抜くような真似をしなかったのだ。


 だから、そんな言葉を口にしつつもその表情はどこか嬉しそうで。

 自らの本気を正面で反らして見せたアミラに、メガデスは再び雷光を纏う。


 当然終わりじゃあないだろう?そう言わんばかりのメガデスに、アミラは小さく笑うと再びマロウトを構えて――


「――落胆は、させないさ。マロウト、やれるな」

『は、はいぃ……っ、怖いけどやります、マスター!!』


 ――その周囲に、風が渦巻く。

 有る種、エルトリス達の中ではエルトリスに次いで魔性の武器との付き合いが長いアミラは、その指先に、全身に不可視の風を纏わせていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] でもやっぱりこの戦いはメガデスが勝ちそうな気はする
[一言] メガデスはマロウトがしゃべってもそんなに驚かないのですね。 彼女がここまで強いのには何か理由があるのだろうか… 結構、戦闘フィールド広そうですね。 まあ、バルバロイが自由に動けるくらいはな…
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