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魔王少女、世にはばかる!  作者: bene
第一章 少女と辺境都市
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17.少女、対価を支払う

 ――目を覚ますと、そこは何度も見たことが有る真っ白な小部屋だった。

 壁や天井、それに床まで真っ白なその場所は、暖かいとか寒いといった概念は無く。


「やっと目を覚ましたようだの」

「……ああ、まあ、な」


 そして、そこに居るのは俺とルシエラ、ただ二人だけ。

 扉も窓も無いのに明るいこの部屋に、他の存在が介在する事は絶対にありえない事を、俺は嫌という程に知っている。

 ……そして、ここでは()()()()()()()()()()ことも、頭痛がするほどに知っている。


 肌が軽く透ける程に薄い黒のドレスを身に纏ったルシエラは、俺とは対象的にニンマリと愉しげな、そしてどこか嗜虐的な笑みを浮かべれば――


「くふ、ふふ……久方ぶりの徴収じゃなぁ。いや、エルちゃんになってからは初めてかの?」

「お前を全開で使う相手なんざ居なかったんだ、仕方ないだ、ろ――ッ!?」


 ――そのまま、俺の小さくなってしまった身体に覆いかぶさるようにして、押し倒してきた。

 抵抗しようとしても、びくともしない。

 文字通り微動だにさせる事さえできないまま、ルシエラは無駄と解りながらも抵抗を試みている俺を見下ろせば、心底楽しそうに笑って。


「……っ、ん、むぅ……っ!」

「ん、ちゅ……ぷ……ちゅむっ、あむぅ……っ。ん、ちゅる……っ」


 そうして、甘い吐息を浴びせかけながらゆっくり、ゆっくりと唇を重ね合わせれば。

 ルシエラはまるで俺を蹂躙するかのように、玩弄するかのように、俺の口内に舌を捩じ込んできた。

 抵抗しようと舌で押しのけようとするけれど、何の意味もない。


「ん、ぅ……っ!?」

「ぢゅるっ、ん……♪ん、ちゅ……んむぅ……ちゅ、ぷぁ……っ」


 いや、意味がないどころかルシエラは俺の舌を絡め取れば、そのまま弄ぶように舌先で器用に弄んで。

 そして……それと同時に、どくんっ、どくんっ、と。

 心臓が俺の意思とは全く無関係に、跳ねるように鼓動すれば……触れ合っている部分から、見えない何かを引き抜かれているかのような感覚を、覚え始めた。


 俺の中の大事なものが、唇から、舌から……唾液と一緒に、吸われていく。

 頭が熱っぽくなって、思考さえ胡乱になっていく。


 ――これが、ルシエラを全開で使った時の、対価。

 ルシエラが満足するまで、応じ続けなければ、ならない。

 俺が元の姿だった時は、もっと――こう、余裕があった、はず、なのに……っ。


「……っ、ん……っ、ふ、うぅぅ……っ♥」

「んぢゅる……っ♥く、ふ……ちゅむっ、ちゅ……っ、ぢゅうぅ~~……っ♥」


 無駄だと解ってるはずなのに、両手でルシエラを押しのけようとするのを、止める事が、出来ない。

 無駄だと解っているのに、ルシエラに抵抗するのを、やめられない。

 そんなの、ただルシエラを喜ばせるだけだって、解ってるはず、なのに。


 ……だって、だって……こんなの、続けられたら……おかしく、なる……っ!

 身体が弱くなったのは、解っていたつもりだったけど……こんな所まで、弱くなってるなんて……予想外、で……っ。

 前は耐えられたはず、なのに……このままだと、俺が、全部……ルシエラに、吸われて……のみ、こまれ、て……


「……ん……♥ふふ、こっちはここまでにしておくかの」

「……っ、ぷ、ぁ……っ、は、ふ、ぁ……♥」


 そうして、意識が真っ白に溶け落ちる寸前。

 ルシエラはそれを見計らったかのように唇を離せば、ふぅ~……♥と、吐息を浴びせかけて、きた。

 思考を溶かすような、甘ったるい空気。

 俺は、口を閉じる事さえできないまま、それを受けて……ぐったりと、身体を横たえたまま、ルシエラの事を見上げる事しか出来ず。


「しかしこれではまだ足りんのう。これ以上やって、エルちゃんが色ボケになられても……」

「だ、りぇ……がぁ……っ、いろ、ぼけ……っ」

「……くふっ♥まあそれはそれで楽しそうだがのう。色情狂になったエルちゃんは、後の楽しみにおいておくとして」


 ……凄まじく不穏な事をいうルシエラに、背筋を悪寒で震わせてしまった。

 ああ、くそ……全力出す度に、こんなふうにされるんじゃ……ほんとうに、そのうち、そうされかねない。

 何とか、対策を考えないと――……


「――ほれ、立て♪」

「う、あっ!?」


 パチン、とルシエラが指を鳴らした途端、その思考が強制的に中断される。

 ルシエラの言うがままにふらふらと身体が勝手に動けば、胡座をかいているルシエラの前で立ち上がらせられてしまい。


「な、にを、ぉ……っ」

「いや何、精気とはいわばエルちゃんの魂のエネルギーみたいなものだからのう。別の方法で徴収しようと思ってな?」

「べつ……の……?」

「うむ。今のエルちゃんから昔のように徴収しては、壊れかねんからのう」


 ……何故だろう、酷く嫌な予感が、する。

 ルシエラの言っている事は、こっちには有り難い事の筈、なのに……ルシエラのことだから、絶対俺にとって有り難くない事だって、確信してしまう――!








「そらっ」

「……っ?」


 パチン、と再びルシエラの指が鳴るのと同時に、ぽふん、なんて間の抜けた音と共に俺はピンク色の煙に包み込まれた。

 甘ったるい香りのする煙に何事かと思ったけれど、特に体に変調はない。


「一体、なにを……」

「……くふっ、ふふふっ。いやーやっぱり似合うのう、エルちゃん♥」


 戸惑う俺にルシエラは酷く愉しそうな、可笑しそうな笑みを向ければ……何処からか俺の前に姿見のようなモノを浮かび上がらせて。


 ――それが何なのか、俺は理解することが出来なかった。


 そこに映っていたのは、全身ピンク色の、フリフリのドレスに身を包んだ子供だった。

 金糸のような髪の毛は、左右に大きなピンクのフリルリボンで纏められており。

 ふわふわしたフリルスカートの裾からは、可愛らしいデザインの靴下で包まれた両足がさらされていて。

 その幼さに似合わない大きな胸にも、大きなリボンが飾られていて――過度にフリルとリボンで彩られたその子供は、外見以上に幼く鏡に、映っていた。


「――は、ぇ?」


 それに思わず声を漏らせば、鏡の中の子供も不思議そうに、ぽかんと口を開ける。

 恐る恐る、俺は髪に手を伸ばせば、鏡の中の子供も真似するように手を上げて――そして、俺の手に、リボンが触れれば。


「~~~~~~っ!?!?!?」

「あーっはっはっはっは♥やーっと気づきおったか、可愛いのう、可愛いのう♥」


 その瞬間、ぼんっ、と音が聞こえそうな程の勢いで、鏡の中の子供の――俺の顔が、赤く、赤く、真っ赤に染まってしまった。


 俺が?


 俺が、今、こんな格好をしている、のか?


「おまっ、おま、おま――なんで、こんなことするのぉぉぉっ!!!」

「なーに、要は強い魂のエネルギーを得られれば良いからの。強い羞恥も中々いいエネルギーになるんじゃよ」

「ばかっ、ばかばかぁっ!!だからって、こんなの――!!」


 口調を取り繕う余裕さえない。

 こんな、こんな――ただ可愛いだけの、庇護されるだけみたいな、頭もちょっとピンクみたいな格好――!!


「おおっと、これも有ったほうが可愛いのう♥」

「え、あっ!?」


 ルシエラの言葉と同時に、俺の両腕は勝手に――いつの間にかそこにあった、大きなクマのぬいぐるみを抱き込んでしまって。

 どんなに離そうとしても、両腕はしっかりとぬいぐるみを抱いたまま離れてくれず。

 ……そのぬいぐるみの頭を、むぎゅう、と重たげに、柔らかく、大きな胸が圧迫してしまって。


「……む?可愛いよりもなんかいやらしくなったかの?」

「ば……っ、るしえらの、ばかぁぁぁ――っ!!」


 それを見て首を捻ったルシエラに、頭から火が吹き出したんじゃないかと思う程に、顔を熱くしながら……俺は、絶叫した。








「――う、ぅぅ……っ」

「エルトリス様……」


 ――魔族との戦いの後。

 ルシエラ様を消失させながら倒れ込んだエルトリス様は、一日が過ぎた今も一向に目覚める様子はなく、眠り続けていた。

 顔を赤く染めている辺り、熱が出ているのかもしれないと思い、布を軽く濡らして額に載せる。

 うなされているかのような声を時折上げているし、やはり魔族から受けたダメージが大きかったのかもしれない。


 ……無理もない事だ。

 こんな、私よりもずっと小さく幼い体で、魔族という存在を相手取り――そして討ち倒したのだから、疲労もダメージも並大抵ではないのだろう。


「……っ、やめ、てぇ……」

「――大丈夫です、エルトリス様」


 何かに襲われている夢でも見ているのか。

 年相応の言葉を口にしながら、なにかから逃げるように身体を僅かによじるエルトリス様の手を、軽く握った。


 こうしていると、妹の看病をしていた時の事を思い出す。

 熱を出した妹に、こうして夜通し看病した事もあったっけ。


 ……私がエルトリス様に着いていく事に決めたのは、もしかしたらそれもあるのかもしれない。

 無論、彼女がとてつもなく強いから、というのも有るのだけれど。


「ん、ぁ……や、らぁ……っ、それ……だ、めぇ……」


 ただ彼女を復讐のために利用する……という以外の感情も、私は確かに抱いていて。

 妹とは似ても似つかない彼女に、私は少しだけ昔を懐かしみながら――彼女が目を覚ますまでの間、静かに寄り添い続けた。


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