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魔王少女、世にはばかる!  作者: bene
第六章 妖花に沈む大国
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2.少女たちの小休止

「――ってわけでな、ちょっとの間アリスの家……っていうよりは能力か、その中で世話になってたんだ」

「はー……何というか、大冒険してたんだね、エルトリスちゃん」


 軽い話し合いを終えた後。

 ランパードに巣食う魔族の正体――とは言っても、クラリッサの予測ではあるが――とその能力について一通り聞いた俺達は、一先ず先の戦闘の疲れを癒やす為にしばしの休憩をとる事にした。


 特に、アルカンやエスメラルダはさておいて、俺達はつい先程アリスの永遠のお茶会から脱出……というか、帰還を果たしたばかりな事もあって。

 戻って早々に戦闘をこなした時は、久方ぶりの戦闘に興奮していたから気づかなかったけれど、身体には大分疲労が蓄積していたようだった。


「……あふ……ん」

「ごめんね、野営でもなければ一緒にお風呂に入ったのに」

「あー、良い良い、気にすんな……はふ」


 エスメラルダの膝の上。

 随分久しぶりで懐かしく……しかし安心する、大きく座り心地のよいその場所に目を細め、安堵しながら。

 エスメラルダの身体に背中を預けるようにしながら、俺は小さく息を漏らしつつ、身体を弛緩させていた。


 相変わらず大きなエスメラルダの手のひらが布地越しに俺の身体を撫でる度に、心地よくて声が漏れてしまう。

 頭の後ろに感じる、柔らかくて大きな、大きすぎる膨らみも、丁度いいクッションになっていて。


「……あふぅ……」

「ふふ、疲れが溜まってたみたいね、エルトリスちゃん♥」

「まあ……なぁ、うん」


 事あるごとに気の抜けた声を漏らしてしまう、そんな俺がおかしいのか。

 エスメラルダはくすくすと、微笑ましげに……そしてどこか安堵したように笑みを零しながら、手にした布地で俺の身体を優しく、優しく拭っていく。


 ……俺は、エスメラルダの膝の上で素肌を、裸を晒しながら。

 太ももの上でだらしなく足を左右に開いた、ふにゃりと脱力した姿を晒しながら。


「……わ、ふ……んっ」

「ちゃんとやっておかないと痒くなっちゃうからね。きれいきれいしようね、エルトリスちゃん」


 大きな手のひらの、その指先で足裏をつまみ上げられ、撫でられて。

 手のひらをつまみ上げられて、二の腕まで撫でられて。

 お腹も撫でられれば、おへそまで。

 身体を軽く持ち上げられると、お尻も、背中も、全部……柔らかな布地で拭われていく。


 流石に湯浴み程では無いけれど、それでも身体をマッサージされるように拭われていけば、溜まっていた疲れも抜けていくようで。


 ……疲れが抜けた感じがするのに眠気が頭をもたげてくるのはどういう事なのか、なんて考えつつも。

 エスメラルダの指先が俺の全身を拭い終えれば、俺は一際大きく息を吐き出しながら、エスメラルダの顔を見上げた。


 半分以上はその大きな、巨大な胸元の二つの膨らみに隠れて見えなかったけれど、エスメラルダが嬉しそうな、楽しそうな表情を浮かべているのは何となく判る。

 何というか、以前会った時よりもエスメラルダは大分……なんと言えば良いんだろうか。

 こう、頼りになるというか、自信があるというか。

 以前の不安げな、ともすれば折れるんじゃなかろうかと言った弱さを殆ど感じなくなっていた。


「エルトリスちゃん、足をあげてー」

「ん」


 そんなエスメラルダの変化を眺めつつも、言われるままに足を上げ、腕を上げて。

 ちょっぴり気恥ずかしい気はしたけれど、これでエスメラルダが満足するならまあ良いか、何て考えながら、俺はエスメラルダに下着も、お洋服も、全部着せてもらい。


「うん、お着替えできたね♥」

「……あのなぁ、俺も別に子供じゃないんだぞ」

「ふふっ、解ってはいるんだけど……嫌だった?」


 俺を上から下まで世話すれば、エスメラルダは満足げに笑みを零しつつ。

 ぽふぽふ、と頭を撫でられると心地よくて……口で一応は文句を言いつつも、嫌だったかと聞かれれば、頭を縦に振ることは出来なかった。


 そんな俺の反応に笑みを零しながら、エスメラルダは俺の髪の毛に手を触れると、そのまま軽くいじり始め――


「――いや、待て。何をするつもりだ」


 ――その指先が俺の髪の毛を何やら結い始めれば、ふと嫌な予感を感じつつ、エスメラルダの顔を見上げて。

 エスメラルダはきょとん、とした表情を見せつつも、その指先を止める事はなく。


「折角だから、エルトリスちゃんの髪も整えようかな、って。そのままだとルシエラさんを振る時に不便でしょう?」

「ぬ……いや、まあ、たしかにそりゃあそう、だが」

「大丈夫、お姉ちゃんに任せて♥こういうのは得意なんだから――」


 顔を熱くしつつも、エスメラルダの言葉は成程理にかなっており、断る理由も見いだせず。

 嫌な予感を感じはしたけれど、俺は小さく息を漏らせば。

 エスメラルダの指先が俺の髪の毛を結っていくのを、ちょっとだけ不安になりつつ受け入れて――……








『もう終わったかの。入るぞ、エスメラルダ』

「あ、うん。もう大丈夫だよ、ルシエラさん」


 ……ちょっとうとうととしていた意識が戻ってくる。

 いつの間にか、軽く眠っていたのか。

 相変わらずエスメラルダの膝の上に腰掛けたまま、俺は大きく欠伸をしながら天幕に入ってきたルシエラ達の方に視線を向けた。


 ルシエラ達も軽く身体を綺麗にしてきたのだろう、皆休みやすいような格好に着替えており。


『――……』

「ん……何だよ」


 そんな最中。

 何故か、ルシエラは俺の方を見れば何かを堪えているかのような、面白いものを見たかのような、そんな表情をしていて。

 俺はそんなルシエラの様子に軽く首を捻りつつも、眉を潜めれば……リリエルは淡く笑みを浮かべながら、天幕の一角にある寝床に腰掛ければ。


「その髪型も似合っているかと。エスメラルダ様が?」

「うんっ。エルトリスちゃんは派手に戦うし、髪の毛はちゃんと結わないと危ないかなって」

「ああ、それは確かにな。ルシエラに髪の毛を巻き込まれたらと思うとゾッとするし」

『……む。失礼な、私はちゃんとその辺りは分別を、じゃな……ふ、ふふっ』


 各々、俺の方を見ながらそんな言葉を口にしつつ……そこでようやく、先程俺が何をしてもらっていたのかを思い出した。

 慌てて頭、というか髪の毛に触れれば、髪の毛は左右に分けられて……何やら、編み込まれるかのように結われていて。


『しかしそうしておると、何じゃ。村娘か何かじゃのう……可愛いぞ、エルちゃん♥』

「な……な、な……っ」


 ルシエラの、笑いを堪えたその声に、顔が自分でも判るくらいに熱くなっていく。

 姿見は無いか、と周囲を探せば、流石というか何というか。

 リリエルはスッと鏡を俺の方に向けてくれて――そして、そこに映っている俺の姿、というか髪型に、ぼんっ!と音が出たんじゃないかというくらいに、俺の頭は一気に茹だってしまった。


 ――そこに映っていたのは、顔を耳まで真っ赤に染めた、エスメラルダの膝の上に座っている幼い子供の姿。

 その子供は可愛らしい寝間着に身を包んでおり……その身体に不釣り合いなくらいに大きすぎる胸が、その寝間着を窮屈そうに押し上げていたけれど、それは特に問題ではなかった。

 問題は、その髪型。

 左右にそれぞれ結われた三編みと、その先端に結われている大きなリボンのせいで、その子供――俺は、必要以上に可愛らしいというか、幼く見えてしまっていて――


『あ、これ辞めんかっ!折角いい感じじゃと言うのに!!』

「ば、馬鹿っ、バカバカっ!!こんな髪型恥ずかしいに決まってるでしょ――ッ!?」

「え、お姉ちゃんは凄く似合ってると思うんだけど……」

「それが恥ずかしいんだってば、もう、もう――っ!!」


 即座にそれを解こうとすれば、ルシエラに取り押さえられつつ。

 余りの恥ずかしさに、俺は顔を、頭の中まで熱く、熱くしながら……折角元に戻っていた、強制されなくなった口調を幼くしてしまいながら。


 ……そんな俺を微笑ましげに、可笑しそうにリリエルとアミラが眺めている事も知らずに。

 ルシエラとエスメラルダに諭され、何とかギリギリの所で納得させられるまでの間、必死に抵抗し続けて――








 ――結局。

 この髪型のまま、俺は少しの間過ごすことになってしまい。


「……す、ぅ……ん……」

『くかー……ん……ふぅ……』

「……う、ぅ」


 寝床の数が足りない、という事もあってか。

 俺はルシエラとエスメラルダに挟まれるようにされながら……柔らかな二人の肢体に挟み込まれ、包まれるようにされてしまえば。

 眠たいのに中々眠れないという、奇妙な夜を過ごすことになってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] エスメラルダさんグッジョブ
[一言] シリアスな戦闘回かと思ったら、エルちゃんを愛でるほのぼの回だった。 三つ編みエルちゃんかわいい
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