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第9

夢を見た、昔の思い出したくないでも大事な出来事の夢を。

「へらへら笑ってんじゃねぇよこの屑が!!」

「全く、役立たずを引き取っちまったもんだよ、遺産があるって言うから引き取ったのにとんだはした金だったしさ。」

両親が死んで引き取られた私は毎日暴力を振るわれていた。

泣いていれば五月蝿いと蹴り飛ばされた、落ち込んでいれば辛気くさいとタバコを押しつけられた、笑っていなければ引き取ってやったんだから喜ぶべきだと床に叩きつけられた。

私は笑っていなければいけない、死にたくないから、生きていたいから、殺されたくないから。


ある日、機嫌の悪かった養父に右目を抉られた。

うずくまり右目を押さえながら泣き叫ぶ私を彼らはゲラゲラと笑いながら見ていた。

養母が私の頭を掴み顔を上げさせ残った左目に握り混んだハサミを突き立てようとしたとき。

「おやおや、子供相手に随分と乱暴な事をするもんだねぇ。」

「え?」

呑気な声が聞こえたとともに私の頭を掴んでいた養母の腕が落ちた。

「は?え?」

養母は自分の身に何が起きたのか理解できなかったようだが、痛みが上ってきたのか悲鳴を上げて喚き始めた。

「あ、アあぁあぁああぁアあアアあ!!腕!腕が!?いだぃ!いだいぃぃ!!」

「ひ、ヒイィィィ!な、何だ何が起きたんだ!?」

腰を抜かす養父と泣き叫ぶ養母に何が起こったのか全く理解できない私はただ唖然としているしかなかった。

「おやおやおやぁ?生ゴミに痛覚が有ったとは驚きだねぇ、学会に発表すればノーベル賞ものだぁ。」

声のした方を見ると金髪女性が抜き身の日本刀をブラブラさせながらニヤニヤとした表情で立っていた。

「な、何だよ何なんだよ!?テメェどこから入ってきやがった!?人の女房の腕切り落として何ニヤついてんだ!?」

養父は腰を抜かしながらも女性を怒鳴り付けるが、女性は全く気にした様子もなく日本刀を弄びながら養父の質問に答える。

「んー?ボクが誰でも君達には関係ないでしょぅ?どうせ今から夫婦揃って挽き肉になって撒き餌になるんだからさぁ。あ、トナカイ君達逃げないようにその二人の足切り落としていつもの加工所に運び込んどいてくれるぅ。」

女性がそう発言したとき養父達の回りにはトナカイの被り物をした黒服達が立っていた。

「ひ!?何でこんなことするんだ俺たちが何したって言うんだよ!?」

女性はニヤニヤを止めてあきれた表情でため息をついた。

「はぁ~?君そんな簡単なこともわからないの?君がそこの子を虐待してたのと同じ理由で君達にムカついたからだよ。」

「は?ふ、ふざけんなよ!!俺達はテメェに会ったことすらねぇんだぞ!!それなのにムカついたって何だよ!!」

「怒鳴るしかできないのぉ君?ボクがムカついてるのは君達の下品な笑い声にだよぉ、自分より弱い子供に暴力を振るってゲラゲラ笑ってる君達の笑い声にねぇ。」

「な「もういいよぉ君と話してるのも飽きたし、ボクはその子を病院に連れていって手当てをうけさせなきゃいけないんだからぁ。」ぶげぇ!」

女性は尚も怒鳴ろうとする養父の口に日本刀の鞘を勢いよく突っ込み黙らせ、再度黒服達に指示を出してまたニヤニヤしながら私の方に近づいてきた。

「痛かっただろぉ、怖かっただろぉ、けど今日からは理不尽に傷つけられることは無いよぉ。さあ、病院に行こうねぇ。」

そのニヤニヤ顔を間近で見た私は女性への恐怖からか、それとも優しい言葉をかけられて安心したのか気を失った。


「んぅ?んー、やな夢見たな~先代に会えたときの事は大事なことだから忘れないようにしたいけど、あの生ゴミ達の事は思い出したくなかったな~。」

目を覚ました女性は体を起こして伸びをひとつし愚痴る。

「そういえばボスから連絡があったなー、僕はハロウィンの所に送られるらしいけど今から楽しみだな~。早く会いたいな、待っててねハロウィン♪」

女性はウキウキしながらな近くに会った干し肉を食べながらその時が来るまでの仕事の準備を始めるのであった。

あのゴッドクイーンスパイダー襲撃から1年がたち、同居人が増えた我が家はとても騒がしくなっていた。

「キョーちゃん見てください!聖国の大司教様の頭みたいな植物を採取しました!」

カリフラワーを抱えて笑顔で走ってくるさっちゃん。

「見てくれご主人!抜け毛を固めると俺が何体もいるように見えるぞ!」

茶色の抜け毛を固めて分身を作り出す幻獣ケダマリモのフリット。


「も~やめなよ~フリット~こんなに散らかして~。」

抜け毛分身を量産するフリットをおっとりとした口調で叱るフリットと同じ幻獣ケダマリモのフラット。

「さっちゃん、そのカリフラワーは獅子刀の所に持ってって、フリット、その抜け毛分身はスゴいが、ちゃんと片付けるんだぞ?フラット、アルファの所にいって薬草を何種類か摘んでくるように伝えてくれ。」


いろいろと指示をした後、はーいと返事をして動くさっちゃん達を見ながら2匹を見つけたときの事、さっちゃんが家に住めるようになった時の事を思い出す。


ゴッドクイーンスパイダーを倒した後コニーが見つけた、茶色の尻、俺はそれを見て何故か普通のウサギだと思い、今夜はウサギ鍋だと呑気に考えながら出ていたモフモフの尻尾をつかんで引きずり出した。


「う、うわー!俺なんか食っても旨くないぞ!たすけてくれー!」

引っこ抜いた途端にギャーギャーと騒ぎ始めるウサギ、俺としては食べる気満々だったのだが喋るウサギを食べる気は無いので取りあえず落ち着かせるために優しく声をかけてみよう。

「なにもしな「うわー!さっさと離せー!能無し寝ションベンふにゃちん小僧ー!!」黙らねぇと生きたまま皮剥いで煮るぞ毛玉。」

「ひぃ!?」


おおいかんいかん、毛玉があまりにも暴言を吐き散らすものだからつい脅してしたまった。

がたがたぶるぶる

完全に怯えられてしまったな、仕方がないからこのまま話を進めよう。


「俺の質問に嘘、偽り無く答えろ、さもないと……わかるな?」

「わ、わかってるんだぞ、わかってるから殺さないでほしいんだぞ。」

若干鼻声になりながら返事をする毛玉に質問を投げ掛ける。

「まず始めにお前はどうゆう生物だ?ただの喋るウサギなのか、それとも別の生き物なのか。」

「お、俺はフリットって名前なんだぞ、ウサギと違って食べても美味しくないんだぞ!だから助けてほしいんだぞ!」

「俺が聞きたいのはお前の種族であって名前じゃないし、味についても聞いてない。長生きしたいなら質問にはきちんとした回答をしろ。」


「ひぃぃー!悪かったんだぞ!俺はケダマリモって種族なんだぞ!」

ケダ……マリモ?見た目は地球にもいたフツーのウサギなんだが?

……よく考えたら俺には〔検索〕って便利なスキルがあるじゃないか。


ケダマリモ ランクS

夏は普通のウサギにしか見えない見た目をしているが冬になると、2メートルくらいの毛玉になる。

穏和な性格で集団生活を好むため10~20匹の群れで生活している。

冬に10匹前後で一塊になっている様は圧巻である。


高い魔力を持っており5匹ほどが本気で暴れれば1時間で小島が消し飛ぶと言われている。

ケダマリモの冬毛は防寒性能が高く、火が付きにくいため高値で取引される。

しかし冬毛は抜け落ちる際に魔力となり消えてしまうため、直接刈り取らなくてはならず住んでいる場所もあいまって市場にはなかなか出回らない。


随分と物騒な説明だな、目の前で逆さになりながら涙目で命乞いしてきてるこいつの種族説明とは思えん。

「なるほど、種族については偽ってないな、次の質問だ。お前あんなところで何してた?」

頭隠して尻隠さずだった訳だが、よほどのバカでない限り隠れてたとは言わないだろう。

「隠れてたに決まってるだろ!?何でわかったんだ完璧に隠れてたのに!?」

よほどのバカだったらしい。

「あんなケツ丸出しで隠れてたと宣うか、図太い神経してんな。まあいいや、最後の質問だ、ケダマリモは集団で暮らす生物じゃないのか?お前一匹で何してる、はぐれたのか?」

フリットは俺の質問に大粒の涙を流しながら答え始める。


「う、うぅぅ、俺の群れは変な病気が流行って皆死んじゃったんだぞ、かろうじて息のある友達に食べ物をあげたくて探しに来たら変な蜘蛛の化け物が現れたから見つからないように隠れてたのに、人間に見つかるなんてぇ……ごべんよフラットぉ~俺先に死ぬんだぞ~。」

最後の方は泣きながら知らんやつに謝り始めたが、こいつの事情はわかったし2メートルの毛玉は見てみたいから助けてみるか。

病気ってのがどんなのかは見てみないとわからないが、もし助けられなくても助けようとした事実があればこいつも付いてくるだろう。

群れはフラットとか言うのを残して全滅らしいしな。

そんな悪いことを考えながらフリットに提案する。

「俺が助けてやろうか?」

俺の提案を聞くとフリットは涙と鼻水でとんでもないことになっている顔を俺の方に向ける。

「ど、どうにか出来るのか?群れの皆は死んじゃったんだぞ?治せなかったんだぞ?」

フリットの目に藁にもすがるような思いがありありと浮かんでいた。

「詳しいことは見てみないとわからんが、もしかしたら助かるかもしれんな。」

「じゃ、じゃあ、フラットを見てやってほしいんだぞ!」

積み木を片付け、話を聞く気がなかったコニーを抱えフリットに案内されながら、フラットとやらがいる場所に移動する。

「ついたぞ!ここにフラットがいるんだぞ!」

フリットに案内されたどり着いたのは、以前ファーゴブリンと争った洞窟だった。

俺は早足で中に入ろうとするフリットに声をかけ止める。

「おいちょっと待て、ここはファーゴブリンの巣だろう?お前入って大丈夫なのか?」


フリットはこちらに振り返り不思議そうに答える。

「ファーゴブリン?俺がフラットを運び込んだときはなにもいなかったぞ?」

ファーゴブリン達がいなかった?不思議に思い[索敵]で洞窟の中を調べてみたが確かに中には小さな反応が1つあるだけで、ファーゴブリン達は居ないようだった。

「とにかく!早く中に入ってフラットを治してほしいんだぞ!」

洞窟の入り口で立ち止まってる俺に焦れてフリットは一匹で先に行ってしまった。

場所はわかるから問題はないがフリットは群れで変な病気が流行ったと言っていたし感染症だったら困るからマスクのかわりにハンカチを口に当て、コニーには道化服の首のところを引き上げてマスクにした。

「むひゅー?」

「コニー、ちょっと苦しいかもしれないが我慢してくれ。」

「あーい!」

コニーが手を上げて返事をしたのを確認し、反応のあった場所まで早足に移動する。

先に行ったフリットはそこそこの早さで進んでおり、既にフラットとやらの近くにいた。

「あ!遅いんだぞ!早くフラットを助けてほしいんだぞ!」

フリットの側にはフリットと同じくらいの大きさで赤色のウサギがぐったりとしていた。

「わかってるから落ち着け、いま見る。」

コニーを騒いでるフリットの上に置き、フラットに触れて体温や脈を図る。

体温が著しく低いな……そのくせ脈は以上に早い。

「おいフリット、群れの連中は最後どうなって死んだ?」

コニーが上に乗っているのに平然と「大丈夫なのか?大丈夫なのか?」とうろうろしているフリットに群れの連中がどんな死に方をしたのかを聞くとフリットは

足を止めて思い出しながら答える。

「えーとえーと、最初は皆体がすごく暑くなったんだぞ、それでそれでだんだんと冷たくなって喋れなくなって最後はお腹がパーン!て爆発して死んだんだぞ!」

……爆発して?

「それは死んだあとに死体を放置していたとかではなく?」

「そんなことしないんだぞ!死んだらすぐに爆発したんだぞ!」

息を引き取った瞬間に爆発とかあり得るのか?


いや、しかしここは異世界だしそんな病気もあるか。

爆発したと聞いてフラットの腹の辺りを触ってみるが体温が下がっていて痩せているくらいで他に違和感はない。

腹を触りながら悩んでる俺にフリットが心配そうに聞いてくる。

「何でお腹を撫でてるんだ?まさかお腹にも何かあるのか!?」

ん?死体が爆発したと聞いたからガスかたまる腹部を触ったんだが。

「爆発したのは腹じゃないのか?」

「違うぞ、爆発したのは頭なんだぞ、ぷくってなってパンってなったんだぞ!」

なんともわかりやすい説明をしてもらってなんだが俺はそんな病気は、見たことも聞いたこともない。

わからないまま触り続けても意味がないのでフラットに[検索]をかけてみる。

もしかしたら病名とかわからないかなーと淡い期待をしつつ[検索]を発動するとケダマリモの情報と一緒に俺のほしかった情報が出てきた やったぜ。


フラット状態異常:寄生、寄生虫名ボンバーヘッドワーム

状態異常寄生?なんかファンキーな名前の寄生虫だな。

ボンバーヘッドワームで調べてみるか、もしかしたら対処法も見つかるかもしれないし。


ボンバーヘッドワーム ランクC

ボンバーヘッドワームは体長0.2ミリほどの寄生虫で、タマゴまたは成虫が付着したものを宿主となる生物が食べることで体内に侵入し胃に寄生する。

タマゴは孵化すると1週間程で成虫になり、脳へと移動する。

脳にたどり着いたボンバーヘッドワームは魔髄(マズイ)に卵を産み宿主の死を待つ。

宿主が死亡すると宿主の魔力を用いて大爆発をおこし卵を周囲に散布する。

寄生されるとまず高熱を発症し著しく体温を低下させ、衰弱死させる。

ボンバーヘッドワームのタマゴは日光や乾燥に弱く2時間程で死滅する。


ボンバーヘッドワームか、えげつない寄生虫だな、そして魔髄とはなんぞや。

知らない単語は出てきたが対処法とかは書いてないな、どうするか。

悩みながら荷物を漁っているとソウルイーターが目についた。

いっそこいつで楽にしてやった方が良いんじゃなかろうか、何て考えていると目の前にソウルイーターの説明文が現れた。

なんだこりゃ、[検索]は発動してないのに画面が現れたぞ?

ソウルイーター……世界に5本しかない神の雫の1本、魔神竜デラセルナが使用していたが、デラセルナの死後行方が判らなくなっていた。斬った相手の魂に直接ダメージを与えることができ、不死者と呼ばれる者たちを殺すことができる唯一の武器。


持ち主の魔力操作制度が上がっているためソウルイーターの対象を選択できるようになりました。

持ち主の魔力操作制度が上がっているため[魂吸収(ソウルドレイン)]が使用可能になりました。


なにこれ?ソウルイーターに新能力が増えてる?

持ち主の魔力操作制度が上がっているためって出てるけどいつから使えるようになってたんだろうか。

まあ、いつからでもいいか、今使えそうな能力だし有りがたく使わせてもらおう。

これで持って帰るモフモフが2匹確定になりそうだ。

ソウルイーターを引き抜きフラットの頭に向かって構える。

「お、おい、なにする気だよ、フラットはまだ生きてるんだぞ。」

ソウルイーターを構えた俺にフリットは不安げに声をかける。

「だーい丈夫だってフラットを切り刻むわけじゃないから安心しろよ。」

切り刻むと言う単語が出た瞬間フリットの表情が一瞬ムンクの叫びみたいになったが、わけじゃないを聞いてすぐに戻った。

今の表情面白かったな、ちょっとからかって……いやいやフラットを助けるのが先だな。

よこしまな感情に流されかけたが、フラットの方に意識を向けソウルイーターに魔力を流す。

さて、魔力を流したのはいいがこれからどうしよう?

対象の指定をしたいんだが、やり方がわからん。

魔力を流せば自然とわかると思ったんだが宛が外れた。

とりあえず、ソウルイーターに対象の指定をしたいと念じてみる。


攻撃対象を選択してください

フラット

フリット

コニー

ボンバーヘッドワーム


…なんか、頭の中に選択肢が出てきた。

対象はボンバーヘッドワームを選択っと。


対象をボンバーヘッドワームに決定しました[魂吸収(ソウルドレイン)]を使用しますか?

魂吸収がどんな効果かわからないが調べるのも面倒だし、俺が死ぬことも多分ないだろ。

楽観的な考え方だがオルダーが渡してきた武器の能力で俺が死んだら、多分オルダーがボスにボコられると思う。


[魂吸収]をボンバーヘッドワームに使用します吸収後、立ち眩みや目眩がする事がありますが問題はないと思われます。


薬品の注意事項みたいな文言だが問題はなさそうだし安心かな?

そんなことを考えながら何が起こるのかとフラットを眺めていたら、一瞬心臓が熱くなった。


処理が完了しました、続けて[魂吸収]を使いますか?

使う

使わない

使わんでもない


心臓が熱くなったと思ったらまたもや選択肢、上の2つは分かるが使わんでもないは何でだよ。

今使う必要はないから、使わないを選択しソウルイーターをしまう。

フラットの状態を確認してみたが状態が栄養失調に変わっており、いきなり頭が弾け飛ぶ危機は回避したようだ。

「とりあえずはこれでいいだろう。あとは俺の家で栄養補給だな。」

フラットとフリットを抱え上げコニーは肩車状態で後頭部に引っ付かせる。

「さー、帰るぞー。コニーは落ちるなよー?」


あーいと返事が聞こえたのでコニーとフラットを気にしながら速足に家路についた。


帰りついて外で遊んでいた虎熊にフリットとコニーを放り投げる。

コニーは楽しそうに笑っていたが、フリットは小さく悲鳴を上げていた。


「何だこいつ、晩飯の材料か?それとも毛皮を刈るのか?」

「違う違う、いろいろあって拾ってきたんだ。2匹ともうちで飼うぞ。」

コニーとフリットをキャッチした虎熊はフリットを鷲掴みにした状態でたずねてくる。


虎熊の言葉にまたもムンクの叫びみたいになったが、俺の飼うぞの言葉に安堵した表情に変わった。

そのあとに、ん?飼う?と疑問符を上げていたが気にしない。


そのあとは虎熊にフリット達の説明をし、フラットように回復を促す薬汁を作るために台所に向かう。

コニーが作っていた、沢山の栄養を蓄えたエメラルド色に輝くダイコンにしか見えないキノコ、フットンタケと森でむしって乾燥させていた説明文では回復効果の高そうな草(味は知らない)を細かくして、コニーが飲むために買ってあった、赤ちゃん用の粉ミルクとまとめてミキサーにぶちこむ。

ギュィィンとゆう音とともに中にいれたものが混ざり会う。  

「よしできた。」

中身が混ざりきったのを確認して皿に出す。

「うわぁ、どろどろ。」

どろどろとした粘りけの強い青汁のような物体を小さいスプーンで救い意識の無いフラットの口に流しこむ。

「…ま、まぢゅい…。」

1口目でフラットが意識を取り戻し、味の感想を呟いた。

えらく効くのが早いなと思いつつも2救い目をフラットの口に入れる。


「死にたくなかったら吐かずに飲み込め。」

「え?うぶぅ!?」

まだ意識が朦朧としてるんだろうが、死なれたら困るから不味くても吐き出さないように優しく声をかけてから口に入れた。

なんか怯えているように見えるが気のせいだろう。


ーーフラットサイドーー

なにこれ~どうゆう状況~?何でわたし人間に捕まってるの~?フリットはどこ~?

死にたくなかったら飲み込めって脅してくるしこの人怖いよ~、わたしどうなるの~?死にたくないから飲み込むけど~助けて~フリット~!

ーーキョウジサイドーー

全て飲ませ終えたのでフラットを抱えたままフリット達のいるリビングに向かう。

薬汁の効果は抜群だったようで、冷たくなっていたフラットの身体はかなり温かくなっており、毛づやも良くなっている。

こんなに早く効果が出るなんてやっぱり異世界はすごいなぁ。

リビングではなぜかフリットがコニーをのせて世話しなく歩き回っており、その横で獅子刀が解体用のノコギリを研いている。

虎熊と銀之助が見当たらないので獅子刀に訪ねようとした瞬間、うろうろしていたフリットがこちらに気付きあわてて近づいてきた。

「なあ、どうなった?フラットは大丈夫なのか?」

俺が答える前に抱っこしていたフラットが飛び降りてフリットにすり寄る。

「フリット~よかった~無事だったんだね~!心配したんだよ~。」

「ぞればごっぢのゼリフだボー!!」


フラットはフリットが無事だったことに感極まったのか涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら叫んでいる。

フリットはそんな状態のフラットに困惑しながらも慰めようといろいろ声をかけている。

とりあえずそんな二匹は1度放っておこう、フリットは俺たちにまだ警戒心があるだろうしフラットが落ち着いてから説明してもらおう。

虎熊に少し話があったので話の邪魔にならないようにフラットに乗っていたコニーを抱き上げて辺りを見回すと、虎熊と銀之助の姿が見えない、外かと思って見てみたがいないので「獅子刀、虎熊と銀之助はどこいった?」と聞いてみると、獅子刀はノコギリを研く手を止めることなく余っている手で自室に行ったと手話で伝えてくれた。

獅子刀に礼を言ってコニーをソファーにおいて虎熊の部屋に向かう。


虎熊の部屋の前につき、ノックをしようと手を伸ばした時部屋の中から鼻唄とキュッキュッと何かを研く音が聞こえてきた。

コンコン「虎熊?入っていいか?」


ノックをして声をかけると中から「いいぞー」と返事が返ってきたので、扉を開けてなかに入ると、虎熊が銀之助の尻尾をピカールで研いていた。

「なにしてんの?」

「ブラッシング?ってのをしてるんだ、ペットの世話をするのは飼い主の義務だろ?」

うんまあ、そうなんだけどね、ピカールで研くのは虐待だと思うんだけど…「きゅ~♪」銀之助が気持ち良さそうにしてるから良いのかな?

「ブラッシングしながらでいいから聞いてくれ、実はな…」

虎熊とそのまま1時間ほど話をして、そろそろ落ち着いたであろうフリットたちに合流する。

「むきゅ~♪」

「うおー!」

「わーい♪」


「( ≧∀≦)ノ」

リビングにいくと獅子刀とアルファがコニー達をジャグリングのように投げ合っていた。

「危ないからそうゆう遊びは程々にしとけよ?」

俺が声をかけるとアルファたちは投げていたコニー達を床に下ろしすぐに辞めた。

人の忠告をすぐに聞けるのは良いことだ。

床に下ろされるとフリットとフラットが足元まで来てお礼を言い始めた。


「フリットから話は聞きました、助けてくれてありがとうございます。」


ペコリと頭を下げるフラットを見て、フリットも頭を下げる。

そんな二匹を見て、饅頭が食べたいと思う俺であった。


そんなまんじゅうウサギな2匹のお礼の言葉を聴きながら今後について考える。


もしも2匹に頼る宛があるのなら助けた責任もあるし送るなりなんなりしたいところだし、いく宛がないなら当初の予定道理、家のペットになってもらおう。

コニーもかわいいがもふもふも欲しい。


「1つ聞くがお前らはいく宛とか頼れる場所とか有るのか?」


俺の問いかけにフリットとフラットは顔を上げてお互いに顔を見合わせるとお互いに首を降った。

俺はそれを見て2匹に家に住まないかと提案するとフリットは大喜びで、フラットは申し訳なさそうにだが了承してくれた。


「とりあえずお前らの部屋なんだが2匹一緒が良いか?それとも別々にするか?空き部屋はたくさん有るからどっちでも良いぞ。」


2匹は特に悩むこともなく一緒でと言ってきたので、部屋に案内し必要な物を聞いて揃えた(寝床用の布団だけだが)。


2匹の部屋を作り終えて飯を食いながら個人情報を引き出していく。


そのときに2匹が女の子であることと、年齢が300歳を越えていることを知って少し驚いた。


さっちゃんはフリット達が住み着いて2ヶ月ほどたったある日、突如ドラゴンの姿で庭に飛来し「キョーちゃん!私も今日からここに住みます!」と嬉しそうに吠えた。


俺や虎熊には普通に、言葉に聞こえていたが、フリット達にはドラゴンの咆哮にしか聞こえてなかったようでかなり怯えてたのを覚えている。


とても興奮気味にいろいろと説明してくれたことを要約すると、いつものように贖罪の祈りを捧げていると神託が下り「貴女の罪は長きお勤めの末に許されました、これからは貴女を尋ねた少年を手伝いなさい、それが貴女の新たな使命です。」と言われたとのこと。


とりあえずさっちゃんを宥めながら、人間の姿になるようお願いし、皆に自己紹介をしてもらいながら、危険な存在ではないことをフリット達に説明していった。

最初は怯えていたが一緒に暮らすうちにただの天然女性だとわかったようで仲良くなっていった。


そんな風に2匹と1人との出会いと経緯を思い出しながら、俺はパソコンとにらめっこしながら水中稼働可能なゴーレムを作っていた。


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