第8
パチンッ ボサッ
「ふがっ!?」
寝ていたら顔に何かが降ってきた、降ってきたものを顔からどかし見ると「むひゅ~zZZ。」コニーがよだれをたらしながら幸せそうに眠っていた。
コニーが眠っているときに出来るマイコニバルーンはコニーが目を覚ます少し前に割れるので今回のように、俺の顔にコニーが降って来ることがたまにある。
しかしコニーは落っこちても平然と眠っていることが多い、今回はプニプニのおなかだったから良かったが、前回はコニーが頭から降ってきてえらいめにあった。
コニーの頭のキノコは衝撃をある程度は吸収してくれるようだが、コニーにしか効果がないようで、俺は普通に痛かった。
俺が痛みに悶えている間も、コニーは今と同じようによだれをたらしながら眠っていた。
「まったく、お~いコニー、おきろ~。」プニプニ
コニーのさわり心地のいいおなかをつつきながらコニーが目を覚ますのを待つ、この流れももはや日常に成りつつある。
「む~、にーちゃ~はよ~。」
「はい、おはよう。」
寝惚け眼のコニーを抱き上げ、リビングに移動する。
(*≧∀≦*)
リビングにはアルファが既に籠3つ分の野菜を用意して待っていた。
「おはようアルファ、また大量に採れたな。人参と玉ねぎと大根を各1つずつ出して残りはリュックに放り込んどいてくれ。俺とコニーは顔を洗ってくる。」
(。・ω・。)ゞ
オルダーに貰ったリュックやパソコンは俺以外に何故かアルファが使える、なので知らないうちに大量の野菜や果物、それらの種が入ってることがある。
最初の頃に知らない野菜や果物が大量に入っていて、何だこれと思っていたらアルファが(;゜∇゜)の表示でこっそりと逃げようとしやがったので取っ捕まえて聞いたところ、実はアルファはリュックの中に何が入っているかはリストが開けないので分からないが自分で入れたものや入れるところを見ていたものなら自分で取り出す事が出来、パソコンのポイント変換機能の一部(野菜と果物、種のポイント変換及び購入)とアルファのアタッチメントの変更が出来るらしい。
アルファの説明文には書かれていなかった機能だったので、パソコンからポイントの仕様履歴を確認したところ俺が購入した覚えのない野菜や果物の種が購入されており、それを補うようにソルナの実とかゆう謎の実を売った形跡があった。
菜園の管理はアルファに丸投げしていたので知らなかったのだが、俺が最初に渡した種と菜園の管理にすぐに馴れてしまったアルファは退屈しのぎに俺達が寝静まったあと森の中を散歩したり池の中に潜ったりしていたらしく、その散歩の過程で見つけた植物や木の実を拾っては隠れて育てていたそうだ。
それを繰り返しているうちに隠しきれない量になり、隠せるだけ残してポイントに変換し、知らないうちにポイントが増えていたら怪しまれるので増やした分は隠しやすい種にかえる、を繰り返しているうちに俺がリュックの中身をあまり確認せず、ポイントについてもチェックしていないことがわかり、調子に乗って増やして売って買ってを繰り返しているうちに、アルファ自身だんだん幾つリュックに入れたのか分からなくなりポイントに変換し損ねた物がたまって行き、俺がたまたまリュックの中身をしっかり見たことでそれが露見したと。
それを聞いて真っ先に思ったのは、コイツほんとにボスに似てるなだった。
ボスも似たような事をして経理担当の奴に説教くらってたし。
とりあえずアルファには、ポイントの変換もリュックの出し入れも基本的には好きにすればいいが、やったあとは何をしたかの報告をするようにと伝えてその場を終えた。
そんなことを思い出しつつ顔を洗い終えてリビングに戻った俺とコニーは今。
むにゅ~
銀髪の美女?に頬を引っ張られている。
引っ張られている頬は特に痛くはないが、何故こんな目にあっているのか、そしてこの美女?は誰なのか、敵意は感じられないしアルファも冷蔵庫に籠1つ分の野菜を入れようと奮闘してはいるが彼女を攻撃したりする素振りは見せない。
コニーに至っては俺の腕の中で引っ張られている顔を見て爆笑している。
身の危険を感じないのでにこやかに人の頬を引っ張る彼女の姿を観察する。
長い銀髪に整った顔立ち、薄い胸にスラッとした長い足……うん男とも女ともとれる見た目だ。
頬を引っ張られているのに無反応で自分を見てくる俺を不思議に思ったのか向こうから話し掛けてきた、そしてその声を聞いて、これが誰なのかわかった。
「どうした?寝惚けてんのか?」
「おふぁえ、ほあふまふぁ?(お前、虎熊か?)」
「むきゅきゅきゅ!」ケラケラ
頬を引っ張られている状態で喋ったため変な言葉になってしまってコニーがさらに爆笑し始めたが、今は気にしないでおこう。
「虎熊か?って……やっぱり寝惚けてんのか?どこからどう見ても俺様だろうが。」エッヘン
「威張るな、胸張るな、どこからどう見ても違うから聞いてるんだろうが。正直いって今のお前の見た目は誰だ貴様!?って聞きたくなる見た目だぞ。」
昨日、部屋を別れた時は怪奇!銀髪の動くマネキンファーストエディション!だったのに、今は町中を歩けば10人中8人は振り向くレベルの美女になっている。なんでや。
「俺様の見た目が替わってるってんなら、お前がなんかしたんじゃないのか?」
そういえば、獅子刀のスキンいじったときに虎熊のもついでに設定したわ。
「ああうん、そういえばしたわ。」
やっぱりって顔でこっちを見てくる虎熊に「すまんすまん」とだけ言ってコニーを渡す。
「虎熊の見た目が替わった原因は飯食いながら話すから、朝飯が出来るまでコニーの相手をしていてくれ、それから俺の頬を引っ張った理由も教その時えてくれ。」
「了解だ、だが引っ張った理由は一言で終わる、お前の手紙を読んだ、それだけだ。」
手紙?……あー、俺が知恵の輪の山に忍ばせといたやつか。
「あれか、把握した調理にはいるわ。」
あの手紙の内容はかなりふざけたからな……もしかしたら俺は怒られていたのかもしれない。
俺の事を蹴りあげる程ではない怒りを頬を引っ張る事で表していたのかもしれない。
そう考えたら小学生のじゃれあいみたいで悪くない気がしてきたな、糞親のせいで学校とかにまともに通ったことが無かったから密かに憧れてたんだよな。
クリスマス達とも仲は良かったけど、あくまで同じ組織に属する者ってラインが有って友達ってのは難しかったからなぁ、これが表社会の組織なら、そんなことはないのかも知れないが……裏社会の組織じゃあな。
いつ、誰が、どこで裏切るか分からない世界じゃー友達なんて作れんわ。
そんなことを考えながら調理していたらいつの間にか用意した人参と玉ねぎが細切れに大根が輪切りになっていた。
人参と玉ねぎが細切れになったのは糞親共を思い出してたときに切ったからだな、大根と同じ輪切りの予定だったんだが……なにか他の事を考えながら作業をするとろくなことにならんな俺は。
仕方がないので輪切りにした大根をスティック状にして皿に並べて置いとこう。
無惨な姿になってしまった人参と玉ねぎは塩コショウで味付けして、また野菜炒めにしよう。
俺は食えるものなら同じものが何日続いても問題ないしコニーも平気なようで試しに一週間連続で朝、昼、晩と野菜炒め(味付けは全部一緒)にしたことがあったが嫌そうな顔もせずにパクパク食べていた。
「おーい朝飯が出来たぞー。」
完成した野菜炒めと切っただけの大根を持ってリビングに向かう。
「お~う、ほれコニー、朝飯が出来たってよ遊ぶのはまたあとでな。」
「むきゅー、あい!」
リビングでは虎熊が髪でそこそこのサイズのメタルドラゴンを作りその上にコニーが騎乗して揺れていた。
「昨日もそれ作ってたが良くできてんな。」
「昨日のより細部にこだわってみたぜ、なんと口の中からパラサイトヒルが出てくる。」ズルゥ
虎熊の銀髪で作ってるからパラサイトヒルとゆうより歪んだパチンコ玉から鉄ヒモが伸びた何かにしか見えない。
虎熊がスゴいどや顔でこっちを見てくるので「良いんじゃないか、良くできてる。」とだけ言っておいた。
虎熊はそれで満足したのかとてもいい顔でコニーを抱っこしたままの状態で席についた。
コニーは今まで机の上に乗せないと食事ができなかったが、虎熊に抱っこしてもらっていればちょうどいい高さになっている。
「コニーの高さがちょうど良さそうだし、これからは虎熊に抱っこしてもらった状態で飯食うか、なぁコニー?」
「俺様は構わないぜ、どうする?コニー。」
「むきゅー、あい!」
考えることもなく返事をするコニー、ただ目線は飯の方を向いているので本当に良かったのかはコニーにしか分からないが返事が「はい」だったので気にしなくていいだろう。
朝飯を食いながら虎熊の変化についての説明をしたのだが、虎熊に「製作途中ならまだしも既に完成したゴーレムの見た目変えるってお前なにもんだよ」と言われてしまった。
3ヶ月以上一緒に暮らしていて始めて聞かれたが素直に「ゴエモンだ」とキリッとした表情で答えたら、わざわざコニーを机の上に置いてまで頬を引っ張られた。
「俺様は真面目に聞いてるんだが?」ムニムニ
「らっへひんひなひらろうひ(だって信じないだろうし)」
「信じるかどうかは話を聞いてから俺様が決める事だ、さあ話せ。」ムニムニ
「ふぉのふぁへひほふぁふぇふぁふぁにゃへ(その前にお前がはなせ)」
引っ張られているとふにゃふにゃ語で話さないといけない、虎熊は何故かふにゃふにゃ語でも解るようだが俺が喋りづらい。
虎熊の手が離れて普通に喋れるようになったので俺が何者なのかの説明を簡単にする。
「俺はこの世界アラトスとは違う世界から来た、異世界人だ。」
「…………。」すっ
俺が異世界人だと聞いて虎熊は黙ったまま俺に向かって手を伸ばして来た。
俺の頬を引っ張る為だとわかっているのでガードしつつ話を続ける。
「これは嘘でも何でもない、純然たる事実だ。信じるかどうかは全部話してから、さっきお前が言ったとおりお前が決めてくれ。」
その言葉を聞いて虎熊は腑に落ちない表情になりながらも手を引っ込めてくれた。
「俺は神様からとある依頼を受けて、別の世界からこのアラトスに来たんだ。依頼の内容は詳しく言えないが人類を救うだとか導くなんてものや、世界が今にも崩壊しそうだから助けてくれ何てのでも無いことは言っとくぞ。んで、俺がいた世界には魔法だのスキルだのは無かったから、アラトスに来る際に神様からいろいろと貰ったんだよ。」
俺の話を聞きながら虎熊はなんかモゴモゴしていたが、話を遮らないようにしてたんだろうな。
俺なら途中でツッコミ入れてるか遮ってるだろうし……モゴモゴしてる虎熊の表情は正面から見てると面白いな。
俺が口を閉じたので話が終わったと感じた虎熊が話し始める。
「流石に今すぐ全部は信じられんな……まあ今の話を聞いて納得出来る所は沢山出来たけどな。キョウジが異世界から来たならデンシレンジとかレイゾウコなんかのデンカセイヒンだっけ?あの辺のふしぎアイテムとか昨夜の知恵の輪とかな。」
「まあ、信じても信じなくても、この生活が変わることは今は特にないから気にしなくていいぞ?ただ、信じとけばこれから先俺がなんかしたときに「キョウジだから」って楽に考えられるようになるぜ。」
「あー、なら信じとくかな~楽な方がいいしな。」
虎熊の返答に少しホッとする。
自分のことを神様の使いだなんてほざく子供は明らかに怪しいし、頭がおかしいと思われても仕方ない。
なにより、神の使いを語るなどー!!っとか言って激昂して襲って来られたら返り討ちにするのは容易いだろうが、うちの組織は返り討ち=殺害の理念が風呂場の黒かびの如く深く染み付いているので虎熊を殺しかねない。
まあ虎熊の性格的に無いとは思うが何が地雷になってるかわからないのが知能を持ったモノだしな、何もなくて良かったほんと。
俺たちの会話に微塵も興味を持たなかったコニーにより朝食は全て(大根ようの味噌とマヨネーズも)平らげられており、テーブルの上にあるのは空の皿と膨れた腹を満足そうに撫で回すコニーしかない。
俺も自分の分は食べているので別に構わないのだが、毎度コニーの食欲には驚かされる、料理の皿が空なのはわかるが味噌とマヨネーズの皿まで磨いたかのようにキレーイに空なのは……皿までなめたな。
コニーはペットだし、料理の皿を舐めるのくらいは身内だけの時は許していたが、流石に調味料を単品で舐めるのは身体に悪いので注意しておこう。
「コニー、いくら美味しくても調味料のお皿は舐めちゃダメだぞ、調味料は沢山食べたら身体に悪いからな。」
味噌とマヨネーズの入っていた皿を指差しながらコニーの顔を見て注意する、するとコニーは「あい!」と俺の方を見ながらきちんと返事を返した。
コニーは見た目は小さな子供でおつむも幼児レベルだが俺の方を見ながら返事を返した事に関してはきちんと守ることが出来るいい子である……自分から言い出したことさえ守れない、守る気がない口先だけの大人に見習わせたいくらいだ。
朝飯も食い終わり俺はオルダーにステータスの事を聞くために1度部屋に戻る。
部屋に戻る前にメタルドラゴンの解体を獅子刀とに任せておくのも忘れない。
獅子刀を出した際に虎熊が驚いていたが、先ほどの話を聞いた後なので、いつの間に作ったなんてのは聞かれなかった。
虎熊とアルファにも獅子刀の手伝いを頼み、コニーはそれについていった。
部屋に戻った俺はパソコンを起動させオルダーにメールを送る。
内容は俺の種族が人間(仮)になっている理由と使ったことのある魔法に中二病くさい名前がついてる理由だ。
プルルルルルルル
オルダーにメールを送ってすぐに携帯が鳴った。
鳴るはずのない携帯が鳴った事に少し驚きつつ画面を確認すると、カメサマと表示されていた。
「いや、誰だよカメサマ。」
つい口から出てしまったが、ほんとに誰だよカメサマ。
オルダーにメールを送った直後の着信なので十中八九オルダーだとは思うが……。
五分くらい出るか出ないかで悩んで、悩んでいても仕方ないと思いとりあえず出てみる。
「もしも「何ですぐに出てくれないんですかぁ!?」キーーン
通話が繋がった途端オルダーの怒鳴り声が聞こえ、俺の耳に深刻なダメージを与えて来たので思わず「うるせぇな、舌ぁ捻りミンチにすんぞ。」と言ってしまった。
電話の向こうで「ひぃ!?」と悲鳴が上がったが気にしない。
「ふぅ、すぐに出なかったのは悪かったと思うが、電話口でいきなりでかい声を出すんじゃねえ、耳に悪いだろうが。」
「す、スイマセンでした。」
オルダーの謝罪を聞き、すぐに電話に出なかった理由を説明する。
「え?僕、自分で設定したときはちゃんとオルダーでしたよ?」
「ん?じゃあなんでカメサマに……もしかして、お前が入れた後にボスに渡したりしたか?」
「あ、はい僕が入れた後に、ボストール様も神としての連絡先を入れたいから、と仰られたので1度お渡ししました。」
なるほど納得。
「あー、理由はわかった、後で直しておく。それより俺がメールした内容についてだが……。」
「それについての説明は簡単です。種族はアラトスにお送りする際に元々あったキョウジさんの肉体を1度微粒子レベルに分解して、アラトスに馴染むようにしつつ魔法やスキル、身体能力をいい感じにしながら再構築、とゆう作業をボストール様が行っているので人間に近い存在ではあるけど、人間ではないって事で(仮)なんです。魔法の方はアラトスに既に存在していてキョウジさんが発動した状態に一番近い魔法名が付いてるんですよ。」
え?なにそれ聞いてない。
「俺が送られる際にそんな感覚無かったんだが?」
「はい、キョウジさんにその感覚は無かったと思います。ボストール様が「キョウジの肉体を再構築するのは任せとけ、アイツにはなんの違和感も持たせずに再構築(改造)しといてやる」って仰ってましたから。」
うん、再構築にかいぞうってルビが振ってありそうだな~ボスが言うと。
「あー両方とも理解したよ、この(仮)はほかのヤツに見られたりすんのか?」
もし見られるならステータスは気軽に見せられないな。
「あ、それは大丈夫です〔ステータス〕で表示される情報は、自分で他人に閲覧可能な場所を決められますので。」
そうなのか、なら後でやっとくか、知りたかった情報も得られたので、じゃあなで通話を切ろうとしたらオルダーが真面目なトーンで話し始めた。
「キョウジさんにお伝えしておかなければならないことがあります。」
「そうか、ついにボスのケツを鷲掴みにする覚悟が決まったのか……頑張れよ!」
「有り難う御座います!僕頑張ります!……って違いますよ!?それやって僕になんの特があるんですか!?ボストール様に拷問ギロチン晒し首の3連コンボされて終わりですからね!!」
おぉ、素晴らしいノリツッコミだと、感心しながらギャーギャー騒ぎ立てるオルダーを諌めつつ、俺に伝える事の内容を聞く。
「ハァー、フゥー、お伝えする内容はですね、先日のメタルドラゴンの件についてなのですが、あのメタルドラゴンは今、キョウジさんが住んでいる場所の近くに生息していないことはご存じですか?」
「ああ、昨日のうちに同居人に聞いたから知ってるが……もしかしてお前かボスが送り込んだとか言うんじゃないだろうな。」
もしそうなら1ヶ月間毎朝4時にワンギリかけてやる 。
「……当たらずとも遠からずですね、僕たちが原因でキョウジさんが狙われたので。」
「?詳しく聞こうじゃないか。」
オルダーの話しを整理すると、俺たちHAPPY dayのメンバーがそれぞれ向かった世界の内2ヶ所の世界に問題が有りすぎて、それを神が処理しきれず、頼られたボスがその依頼の一部を断ったところ逆ギレし、ならばとボスからの追加依頼だと嘘をついてやらせようとしたところあっさり見破られ、組織のルール〔依頼人が嘘をついていたまたは、嘘をついた場合発覚した時点をもってその依頼を放棄する〕に乗っ取って二人とも依頼を放棄したためさらにキレたバカ神が、ボスから離れている俺たちに攻撃を仕掛けたと言うことらしい。
「メタルドラゴンから出てきたパラサイトヒルを調べた時に謎の薬って表示されてたのはよその神が手を加えてたからか……他のメンバーはどうなってるんだ?誰か死んだか?」
「やはりご心配ですか?」
「いや?任務中にだれかしらが死ぬのはよくあることだし、死んだら死んだでいいんだけど問題なのはどんな状況で死んだか何だよ。」
「お葬式の方法でも変わるんですか?」
宗派によっては変わるのかもしれないが。
「違う違う、死んだヤツの状況次第で報復か引き継ぎかが決まるんだ。死んだヤツが単純にドジって死んだなら引き継ぎをして別のヤツが依頼を続ける、死んだヤツが依頼主の罠にかかって死んだなら報復って決まりがある。今回は後者だから報復だな。」
「引き継ぎって……前任者は死んでるんですよね?」
死んだヤツからどうやって引き継ぎするのか……当たり前の疑問だな。
「HAPPYdayには優秀な変態技術者が居てな、そいつが作った特殊なインカムを出撃前に支給されて、持ち主が死んだら死因から何からデータが飛んでくるんだと、詳しい事はよく知らんが今思えばボスの魔法かなんかだったんじゃね?」
「ああ、なるほど納得しました。」
「んで、誰か死んだか?」
今回のメンバーだけで言えば白兵戦の苦手なバレンタインやイースターは危ないかもな。
「いえ、皆さん元気にしてらっしゃいますよ。そもそも、僕はキョウジさんしか詳しい能力は知りませんけど、ボストール様が仰るにはキョウジさんと同じくらい能力を足したらしいので、僕たち神クラスが直接出向かない限りは大丈夫ですよ!……僕たちの加護を取り上げてその上で本気で殺しにいって五分五分でしょうけど。」ボソッ
なんか最後にボソッと聴こえたが気にしない。
「それで?俺にはボスから何も連絡が来てないから組織の方は良いとして、お前の方から依頼人として俺に言っとく事が何かあったりするか?」
アラトスに来てから3ヶ月以上森に引きこもって、異変らしい異変もメタルドラゴン&パラサイトヒルの強襲だけ、けどそれは俺が依頼されたこととは関係ない。
俺がしたことと言えば、狩りと魔法の簡単な練習とコニーと遊ぶことと暇潰しに物作りだけ……うん確実に説教案件だろう、コレ。
「え?特にありませんけど?」
先ほどまでの真面目なトーンは何処へいったのか、オルダーが気の抜けた返事を返す。
「いやいや俺、アラトスに来てから3ヶ月以上、仕事らしい仕事を何にもしてないんだが?」
「やだな~、まだ3ヶ月くらいじゃないですか~、そもそも僕がした依頼はアラトスで僕に対処できない事があったとき代わりに何とかするって依頼ですよ?神が対処できない事件がポンポンおきても困るじゃないですか。まあ、いつそれがおこるかは僕にも分からないので最低限頭には入れといて下さいね。」
最後の所だけ真面目なトーンで言いやがって、けど確かにそうだな頭には入れとこう。
逆ギレした神達の処分やらなんやらはボスに任せて、依頼主から助言も貰ったのでこのままのんびり行こうかね。
「わかった、せっかく携帯が繋がるのも判ったことだし何かあったときは携帯に連絡をくれ。ノートパソコンは持ち歩いてないからメールじゃすぐに気付かんかもしれん。」
「わかりました、何かあったときは連絡をします、ボストール様にもそう伝えておきますね。」
「あとついでにソウルイーターとドラゴンキラーを納めるホルダーか何かくれないか?切れ味が良すぎて持ち歩けないんだが。」
基本的に2本ともリュックの中に放置だからな。
「なるほど……わかりました、あの2本でも簡単には斬れない何かを送りますね。」
「頼むわ。」
ボスが動いてるとはいえ、すぐにすぐ対応出来るわけではないだろうし、自衛手段は多い方がいい。
通話を切り電話帳に登録されているカメサマをオルダーに、ボスの名前を変態ヒゲオヤジジュクジョスキー13世に変更した所で、ベッドに装飾のついたベルトが表れた。
「オルダーのやつ仕事が早いな。」
ベルトにはポケットが2つ着いておりバックルにHAPPYdayのシンボルマークがついている。
贈られたベルトを装備してメタルドラゴンの解体をしている皆のところに向かう。
外に出ると既にメタルドラゴンは半分くらいになっており、半分になったメタルドラゴンの周りでせっせっと解体作業を進める獅子刀とアルファ、二人がバラしたものを仕分けしている虎熊、そして何故か解体中のメタルドラゴンの上で踊っているコニーの姿が目に入ってくる。
コニーは何であんなところで踊ってるんだ?不思議に思いながら近づくとこちらに気づいた虎熊に声をかける。
「おー、お疲れさん作業は順調か?」
「あー見てのとおり順調に進んでるぜ、獅子刀はスゲーな、昨日俺様たちが結構な時間をかけて頭1個だったのに、この短時間で半分くらい終わらせたからな。」
虎熊は短時間と言うが俺はオルダーと一時間近く喋ってた訳なんだが、その事を虎熊に伝えると「そんなにたってたのか?」と言われた。
まあ、その事についてはわりとどうでもいいので、本題の〈何故コニーがあんなところで踊っているのか?〉について訪ねると「乗りたがったから乗せたら躍り出した」との返事が、特に危険はなさそうなので構わないんだけどな。
「何か手伝うことがあるか?」
俺の問いに虎熊は首を横にふる。
「いんにゃ、こっちの手は足りてるから大丈夫だ。キョウジこそメタルドラゴンが来た方角の調査に人手がいるんじゃないか?」
「あー、メタルドラゴン来訪の理由は解ったからいいんだけど、俺のカンが見に行った方が良いって言ってるから一人で行ってくるわ。」
俺のカンは3割当たる、その3割で助かったことも多々有るし今回も信じて見ようと思う……ギャンブルじゃ一切信用できないが。
「一人で大丈夫なのか?何だったら俺様も行くぞ?」
「一応、神様特製の反則武器を2本持ってくし、いざとなればアルファ(盾)を携帯の機能で呼び出すから大丈夫だ。」
「今なんかヒドイ副音声が聞こえた気がするんだが。」
((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
俺達とは離れたところで作業していたアルファもそれが聞こえたようで何やら震えている。
「気のせいだ、気のせい。」
リュックからソウルイーターとドラゴンキラー、傘を取り出して装備し、虎熊に跡のことを任せてメタルドラゴンが来た方角に進む。
魔物を避けながら一時間ほど歩くと、開けた場所……と言うより何かが落下して衝撃で辺りのものが吹っ飛んだ跡地に出た。
「なんじゃこりゃ。メタルドラゴンをどんな送り方すればこんな状態になるんだ。」
しかも昨日はメタルドラゴンが来るまでに、こんな惨状が出来上がるようなでかい音はしてなかったが、逆ギレ神がなんかしたんだろうな。
隕石かミサイルが着弾した見たいになってクレーターが出来ているが、とりあえずクレーターには降りずに、周囲を調べてみるがクレーターを中心に吹っ飛んだ木々しか無かった。
「辺りには何も無いっと、それじゃあクレーターの中を調べますか。」
上から見る限り何も無いように見えるが、地雷とかがあったら嫌なので火の玉を大量に出してクレーターの中を絨毯爆撃する。
ボガガガガガガガガァン
とんでもない爆音が辺りに響き渡るが気にしない。
土煙でクレーターの中が全く見えないので、無いよりはまし程度の威力と範囲の風魔法で土煙を払う。
しかし、やっぱり威力と範囲が足りず土煙が晴れる様子はない。
もう少し威力か範囲が欲しいな~ハリケーンや台風程じゃなくていいから。
ビュゴオォォォォ!! バキバキバキ
ハリケーンや台風の事を考えたら、俺の手から出ていた風の威力が上がり、土煙を一瞬で消したもの、間反対にあった折れた木を何本かぶっ飛ばした。
風魔法の練習はドライヤーがわりに何度か使ったくらいで戦闘に使用したことはなかったが、威力を調整する練習を始めなくてはと思った。
たまたまではあったが土煙が無くなったので改めてクレーターの中を見る。
火の玉によって全体的に地面が黒焦げになっているが 1ヶ所だけ無事な箇所がある。
スゴい低確率で当たらなかったのか、はたまた別の要因があるのか……分からなかったので火の玉を1発撃ち込んで見る。
ボヒュン
撃ち込んだ火の玉は地面に当たる前に情けない音をたてて消えてしまった。
不思議に思いながらいろいろな魔法を飛ばす。
水、電気、も一度炎、最後に土で人形を作り魔法が消えている所にエルボーさせたら人形が土に戻った。
魔法ではどうにもなら無いことが解ったので直接確認にいく。
近くに行き傘で魔法が消えている所を突っついてみるとカンカンと鉄の音がたする。
見えているのは土なのに突っついて鉄の音とは不思議な感じがするな。
このまま突っついていても仕方ないので、意を決して足を突っ込んで見る。
「お?」
ガコンと何かが外れる音がして俺は完全にバランスを崩し、地面に手をつこうと手を前に出すが何故か手は地面につかず空を切った。
「おにょにょにょ~!?」
テンパって変な声をあげながら顔面から地面にダイブする形になってしまったので片手で顔を庇う。
しかし俺の顔は地面に激突せず、かわりに全身を浮遊感がおそう。
不思議に思い手を外すと俺の体は空中に浮いていた。
「ふぁーーー!?何でーーー!?」
落下しながら上を見ると落ちてきたであろう穴がどんどん小さくなっているのが見える。
下に目を向けると暗闇が広がっているばかりで何も見えない。
どのくらいの高さを落ちているのかわからないが下にたどり着くと確実に潰れたカエルになってしまう。
どうしようか悩んでいるときに靴の存在を思いだし、かかとをならす。
フワン
俺の体は落下を辞め空中に浮いている状態になった。
「とりあえず、落下死の危険は無くなったがーどうするか。」
このまま降りるか、それとも上がるか……考えていても仕方ないので、明かりを求めて光の魔法を使う。
下の方を照らして見るが光の届く範囲には何も見えない。
危なくなれば飛んで逃げれば良いかと考え、下を照らしながらゆっくりと下降していく。
30分ほどかけて降りているとようやく地面らしきものが見える。
地面らしきと言ったのは暗くてよくわからないが、脈動しているように見えたからだ。
「地面は……動かないよな普通。」
生き物だと思われるので光を弱めてなるべく刺激しないようにゆっくりと降り、近づいていく。
近くまで来ると脈動している地面の正体がすこし解った。
ドクンドクン
「わー、グローイ。」
脈動していたのは黒い心臓のような物体でその下に階段らしきものが見えるので、この心臓が蓋の代わりになっているのだろう。
正直邪魔なので退けたいがデカイので退ける場所もないし安易に破壊しても良いものかもわからない。
〔検索〕を使い謎の心臓を調べる。
悪神の心臓…他の神を騙し、己の欲望を叶えようとした神の心臓。魔法を無効化し、物理を反射、生物の命を吸いとり周囲を死の地にかえる。
「えー、何かめんどくさいモノがある~。」
と言うかこのままここにいたらもしかして俺死ぬのか?
心臓が見える範囲で飛び上がりオルダーに連絡を取る。
悪神とはいえ一応神様の心臓らしいのでどうすれば良いかオルダーに指示を貰おうと思う。
プルルルプルルルプルルル ガチャ
「二時間ぶりくらいですが早速何かありましたか?」
「この旗立てヤロウ。」
「いきなりなんですか!?」
「お前が「神が対処できない事件がポンポン起こるわけ無い」とか言い出すから早速めんどそうなもの見つけたわ。」
「えぇ~、旗がなんのことか解りませんが僕に連絡を取るレベルの面倒なものが見付かったんですか?」
「悪神の心臓とかゆうグロテスクなオブジェを発見した。〔検索〕で見た感じ俺には壊せそうにないし、一応神様の心臓らしいから連絡したんだ。」
悪神の心臓と告げた途端オルダーの声が明らかに強ばる。
「悪神の心臓……まさか僕の世界に有ったとは……キョウジさん!すぐにボストール様に連絡してください!僕は準備がありますので!!」ブツッ
あのヤロウ捲し立てて切りやがった。
ボスに連絡しろって……コレ(悪神の心臓)の説明もボスに聞けってことか?
正直めんどくさいが俺も階段を降りたいし、ボスに連絡をとるか。
プルルル ガチャ
「もしもし?あたしメリーさん、今アラスカに居るの。」
アラスカで何してんだこの人。
「いきなり下らないギャグをかましてくれるな、オルダーに言われて連絡をした。悪神の心臓って変なものを見つけてな、オルダーに連絡したら、何かの準備があるからボスに連載してくれって切られた。」
ブツッ
あ!何も言わずに切りやがった。
ブンッドスッ
「ワシが来……ひゅん。」
背後に気配を感じとっさに裏拳をかます、するとボスの声と拳にグニグニした何かを殴った感触が伝わってきたので後ろを確認する。
「何してんだボス?」
振り返るとボスが股間を押さえて倒れていた、それでも空中で止まれてるのはスゴいと思う。
たぶん俺の裏拳はボスのジュニアにクリーンヒットしたのだろう、可哀想に。
まあ、神様が生物学的な子作りをするのかはわからんがー問題ないだろ、もういい年だし。
「ボス……漏れそうなら外でしてきたらどうだ?なに、この森は人が滅多に来ないから見られて変態露出ジジイと呼ばれる心配はないぞ。」
「お、お前……他に…言うことが有る……んじゃない……か?」
「え?何が?」
弱々しく文句を言ってくるボスに冷たく返事を返す。
「うぅ、孫が冷たい……世の老人たちはこんな思いをしながら生きていたのか。」
「誰が孫だ、誰が、それに世のジジババはしたたかに生きてるから孫に冷たくされたくらいじゃなんともねぇよ。それに俺の塩対応は今に始まったことじゃねえだろ。」
それもそうじゃなとボスは起き上がり下にある悪神の心臓に目をやる。
なんだ平気そうだなと思ったが足がぷるぷるしているので痩せ我慢かもしれない。
「んで、本題なんだが、あれなに。」
「あの心臓はな、問題を起こしたアホの片割れの心臓だ。本来なら自分の心臓を他の世界に隠すなんて愚行でしかない。なんせ存在するだけで何らかの迷惑を起こす代物だし、神が直接世界に関与しないにも反するからな。」
迷惑行為を自分のシマでやるならまだしも他人のシマでやっちゃあイカンでしょ。
「これ壊せば、その神は死ぬのか?」
ボスは首を横にふり。
「いや、こいつを壊しても死にはしない。神は強さにもよるが最低でも2つの心臓がある。まあ、心臓が無くなる毎に弱体化はするから、今回は壊した方がいいんだが……。」
ボスは何やら言い淀んでいるので続きを促す。
「神の心臓は破壊されたとき、周囲にその心臓が溜め込んだ何らかの力を撒き散らしながら壊れるから、もしかしたら42・195キロメートル位が消し飛ぶかも。」
フルマラソン1回分か……結構な威力だな。
「じゃあどうやって処分するんだ?オルダーが準備するって言ってたものを待つのか?俺は心臓の下にある階段を降りたいんだが。」
「階段?……ほんとだ階段が見えるな。オルダーが今準備しているのは神の心臓を安全に処分する道具だが、すぐには使えないんだ。」
ってことは今日は諦めた方がいいかな?
「えー、ならいつ頃使えるようになる?降りれるようになった頃にまたくるから。」
早けりゃ3日後かな?遅くても1週間とかだとありがたいんだけど。
「う~む、早くて半年で遅くとも20年くらいでなんとか……。」
そうかー単位が違う……って。
「そんなに待てねぇよ!!何でそんなに時間が掛かるんだよ!」
半年は待てない範囲じゃないけど20年はさすがに待てないわ。
「いや~、ワシらもこの心臓は探してたんだが、アホ神二人を同時に対策してたもんで、捜索、妨害、防衛、準備、牽制と1度に色々やってたら全体的に中途半端になっててなー、何せマトモに動けるのがワシだけだし。」
「オルダーは?あと、もう一人神が居るだろ?」
今回の依頼では俺、クリスマス、バレンタイン、イースターの4人にお呼びが掛かっている訳だから、アホ二人とオルダー+1人がいるはずだ。
「あの二人はほぼ役に立たん。自分の世界を守るので精一杯だしな。」
「そういえば誰と誰のとこが放棄になってる?そして扱いとしてはどうするつもりだ?地球に戻すのか?」
「クリスマスとイースターの所だ。扱いとしては依頼人と内容の変更で任務を一時続行、色々スゴい力を与えちゃったから地球には戻せない。だからこちらの準備が出来しだいお前らとのツーマンセルに切り替える、勿論本人たちの意思を聞きはするがな。」
「聞きはするが反映はしないとか?」
「お前はワシの事を何だと思っとる。」
「裏社会でトップ5に入る危険組織HAPPYdayのボス変人髭アロハ。」キリッ
俺の素晴らしい模範解答に感動したのか、ボスは涙を流しながらしゃがみこんでしまった。
「そんなに感動したのか?」
「ショックをうけとるんだ!ショックを!」
ボスで遊ぶのはこのくらいにして、このあとどうするかを話し合わなければ……と思っていたらボスがスッと立ち上がり、悪神の心臓に近づきポケットからピンポン玉を取り出した。
「なにそのピンポン玉。」
「これは封印具だ、一時的に心臓をこれに入れてワシが持ち帰る。お前にもやって貰うことがあるから時が来れば声をかける。」
封印具ねぇ……表面に安村スポーツって書いてあるんだが。
ボスがピンポン玉を握りこむとパキンと音がなり、次の瞬間には悪神の心臓が消えていた。
「封印完了だ。それじゃあ~おじいちゃんは帰るけど、寂しくて泣かんようにな。」フッ
「あれをあのまま封印しっぱなしに出来ないんだろうか……。」
余計な一言を残してボスは消え、残された俺はちょっとした疑問を口にするのだった。
ボスが悪神の心臓を持っていってくれたので、ようやく先に進めるようになり階段を降りていく。
階段はかなり古いもののようで所々崩れており、油断すると転げ落ちそうになるので光源を手の光から火の玉に変更し両手をフリーにしておく。
体感で10分ほど降りると辺りの温度が一気に下がる。
「さむっ!何でこんなに冷えるんだ?ここだけ冬じゃん。」
火の玉の数を3つに増やし、顔の横、お腹、足元、にそれぞれ配置した。
「これで多少ましだな。」
光源が増えた事で視界もさっきより通るようになった。
さらに降りていくこと10分程、さらに温度が下がり冷凍庫の中に居るのでは?と錯覚するほどだった。
しかし、これだけ寒いのに不思議なことに回りの壁に生えているカビなどが凍っている様子はない。
「どうなってんだこりゃ……ん?何か声みたいなのが聞こえるな、こんなとこに誰か居んのか?」
普通に考えたら生者ではないだろうな……幽霊の恨み節かな?
〔索敵〕を使ってみたがとくに反応はない、幽霊には反応しないとか?
降りていくにつれ聞こえていた音が歌となりハッキリと聞こえてくる。
床に付した父を埋め…すがり付く母を撃ち…怒り狂った姉を刺し…笑い続ける兄を切り…泣き叫ぶ弟を沈め…産まれたばかりの妹を食らう…私は…なぁに…私は…ケモノ…私は…醜い…バケモノ。
はてデジャブー、前に見た夢でこんなシチュエーションだったような?
ってことはまた後ろから……。
「あなたは……だぁれ?なぜ後ろ向きなの?」
先手を打って後ろ向きで降りていたら
普通に前(今の俺からしたら後ろ)から声をかけられた。
「くそぅ、結局夢と同じ後ろから声をかけられちまった。」
小声で呟きながら後ろを向く。
「……………!?」
「?」
流石の俺でも驚いた、後ろを向くとそこには生首が浮いていたのだから。
浮いていたのが普通の生首なら俺は顔をしかめはしただろうが驚きはしない、だが振り向いて浮いていたのは右半分が女性で左半分が蜥蜴の生首だった。
生首の表情はきょとんとしていて敵意や悪意を全く感じないのだが、それがまた不気味さに拍車をかけて驚きを加速させている。
「ねぇ?……あなたは、だぁれ?ここで何してるの?」
生首は驚いて固まっている俺に質問を投げ掛けてくるが、答えるべきか、それとも逃げるべきか、はたまたソウルイーターで斬りかかるべきか悩んでいる状態なのですぐに反応が出来ず、お互いににらめっこ状態で固まる。
「……もしかして、この間来た人?」
「へ?俺はここに来たのは初めてだが?」
ここっぽい夢は見たが。
「あなたが直接ではなく、幻覚とか白昼夢何かでここを見たことはない?」
「……夢でなら。」
スゥ~
生首は何かを理解したのか、1つうなずくと 暗闇の奥へと移動し始めた。
「え?ちょっ………付いていってみるか。」
昔の俺なら付いていく所か、生首を目視した瞬間に斬りかかってたろうに円くなったもんだ。
少し先を発光しながら浮かぶ生首、その後ろを付いていく火の玉まみれの子供、端から見たらかなり不気味な映像だろう。
お互いに無言のまま進んでいると、先をいく生首に変化がおきた。
なんと蜥蜴だった左半分が徐々に女性に変わっていくではないか。
「……………。」
その不思議現象に目を奪われている間に生首は完全な女性に変わりこちらを向いた。
栗色のふわふわした髪に優しそうなタレ目、唇の左下側に小さいホクロがある、雰囲気的にはポエポエした優しいお姉さんな見た目をしている……生首だし、さっきまで半分蜥蜴だったけど。
「私はサターニャ・グルード・デラセルナ、さっちゃんと呼んでください、あなたの存在を感じるのはこれで2回目ですね。」
生首だけの状態でお辞儀をされてもな……って、今この女デラセルナって名乗ったか?もしかして魔神竜デラセルナ?けど魔神竜デラセルナは英雄のなんちゃらさんに殺されたんじゃなかったっけ?
色々と疑問が浮かんでくるが、とりあえず相手が名乗ったんだから、こちらも名乗らなければ失礼と言うものだろう。
「俺はキョウジだ、家名は無い、キョーちゃんと呼んでくれていい。さっちゃんは2回目と言うが、俺はさっちゃんに会ったのはこれが初めてのはずだが……誰かと間違えてないか?」
「いいえ、2回目です。1度目のときはキョーちゃんからすれば夢の中での出来事ですから、印象的には薄いかもしれませんけど確実に会っているのです。」
うーん、なんとゆうどや顔、ポディがあれば確実に胸を張っているだろうな。
地球にいた頃の幽霊と違って会話が成り立っているお陰か、かなり落ち着いてきたし聞きたいことを聞いていくとしよう。
「夢の中で見た目時とは状況が色々と違うんだが、何でなんだ?」
「夢の中での景色にはキョーちゃんの記憶が混ざりますから完全に一致とはいかないんです。」
なるほど?夢は記憶の整理と言うし、その整理中に、ここの予知夢的なのが混ざったからあの状態の夢になったのか。
「さっちゃんは名前の中にデラセルナって有ったけど、一国を滅ぼした魔神竜デラセルナってのと関係有ったりする?」
あ~、さっちゃんの顔が強張ったな、これは地雷踏んだかね。
「そうですね……関係があると言うより本人です。」
「本人?まあ、幽霊みたいだし魔神竜デラセルナは退治されたってことだから本人でも納得は出来るけど何ゆえ首だけ?」
アッサリと受け入れた俺に驚いたのか、さっちゃんの顔が目の前に来て捲し立て始める。
「どうしてそんなに冷静なんですか!?普通ならデラセルナを名乗っている者に出会ったら逃げなさいって歌われているくらい危ない存在なんですよ!!最初に私を見たときだってキョーちゃんくらいの子供なら怯えたり泣き出してもおかしくない見た目なのにしれっとしてるし!キョーちゃんからはソウルイーターとドラゴンキラーのの気配がするのに持ってるように見えないし!そもそもここの入り口にはエリアスさんが隠蔽の術式を刻んで行ったはずなのにどうやって入って来たの!?」
実体があったなら確実に俺の顔は唾液まみれになっていたであろうお言葉マシンガンが終わり、さっちゃんはゼェゼェと肩で息をしている(肩無いけど)。
さっちゃんのお言葉マシンガンの中に気になる台詞が幾つか有ったし、それを聞くためにさっちゃんの疑問にも答えていこう。
「デラセルナの名前は知ってるが別に俺は怖いとは思わないし、さっちゃんの見た目も半分が蜥蜴だったのは少し驚いたがもっとひどい状態の幽霊をしょっちゅう見てたし、ソウルイーターとドラゴンキラーは諸事情があって姿が変わってて、ここにどうやって入ったかと言うと隠蔽が掛かってた扉が脆くなってたみたいで、それを踏み抜いて落下してきた。」
そもそも、地球にいた頃は近所の犬や猫に挨拶する感覚で拷問したり死体作ったりする生活してたのに生首1つで驚くもんかい……半分蜥蜴は驚いたけど。
さっちゃんは俺がした解答に色々と混乱しているようだがそこは納得してもらうしかない。
そういや、デラセルナってことは蜥蜴じゃなくてドラゴンなのか、いやでも目の前のさっちゃんは人間に見えるな……それも含めて俺の質問タイムだ。
「今度は俺の質問に答えてくれ。さっきも聞いたがさっちゃんは何で首だけ何だ?デラセルナってことはドラゴン何じゃないのか?人間に見えるけど。入り口に隠蔽の術式をエリアスが刻んだって言ってたがエリアスはさっちゃんを殺したやつだよな?頭だけ封印でもされてるのか?」
もし頭だけ封印されてるなら首塚とかの観光名所になってそうだと思ったが、ここは死者の森の中なので観光名所じゃなくて自殺の名所になるなと考える俺がいる。
「私の本体はもっと深いところにあります、先程不思議な感覚を感じたのでなので頭だけ飛ばして正体を見ようかと思い、この状態なのです。この魂だけの状態はかなり不安定なので、本体から遠くに行くほど魂の形が本来のドラゴンになります。人間の姿はドラゴン族が他種族と交流する際に使用する〔人化〕のスキルで変身したもので、ドラゴンの状態では魂だけでも威圧感が出るのでスキルで変身するようにしてます。私は封印されている訳ではなく自主的にここにいるんです、そのために友人のエリアスさんになのでお願いして入り口を隠してもらったんです。」
国を滅ぼしたドラゴンが引きこもるのに、ドラゴンを倒した奴が協力してるの?
せっかく本人が目の前に居るんだし詳しく聞こうか。
「さっちゃんがここにいる経緯を聞いてもいいかな?」
「いいですよ、エリアスさんが来なくなって何年たつのか分からないですけど、まだ竜の国があった頃の話です。私は竜の国で祭司をしてたんですが……あ、
祭司って分かりますか?お祭りに携わる役職です。竜の国には帰魂祭と言うお祭りがあって、ご先祖様の魂が一時的に帰って来て、私たちに付いた厄を取り払って下さるのです。その代わりに私たちは御供えをして感謝するってお祭りなのです。」
国全体で行う、お盆みたいなもんか。
「いつもなら、狩猟で得た獣肉や育てた作物、山でとれた果物を御供えするのですが、その年は他種族を殺しその死体捧げようとなったのです。」
おっと雲行きが怪しくなって参りました。
「それは誰が言い出したの?普通なら誰かしら反対するよね?」
毎年の供物に獣肉、作物、果物で、代わり映えしないから他種族の死体を捧げようとはならんやろ。
「最初に誰が言い出したのかは分かりません、私の所に話が来たときにはすでに決まっていたんです。私以外の人たち皆が他種族を捧げるのを肯定していてさすがにおかしいと思い、いろいろと調べて分かったのは薬でした。」
薬?麻薬とかの使うと頭がハッピーパラダイスになるタイプかな?
「薬の名前は分からなかったんですけど、その薬を摂取すると同調力を強め、強い敬意や恐怖の対象の言うことを聞くようになるものらしいです。」
その薬を飲ませれば恐怖政治なんかがやりやすくなるな、ろくでもない薬だ。
「さっちゃんはなんで無事だったの?らしいって事はさっちゃんが薬の成分を調べたわけでは無いんだよね?」
「その薬は国民全員が摂取するように流行り病の予防薬として扱われていたんですが、私は投薬期間中は他の国に出ていて戻ってからは忙しくて投薬を受けられなかったので無事でした。薬の効果についてはエリアスさんが調べてくれました。」
有能だなエリアス、ドラゴン退治ができて魔術とやらが使えてその上薬の事まで分かるとか。
「その薬の効果を考えると他種族の生け贄を言い出したのは国王だろうな…国王の周辺に怪しいやつは居なかったか?」
「そこまでは分かりませんでした、後のお話は簡単です。ソウルイーターを使って私が国を滅ぼし、エリアスさんに頼んでイカれた私を退治したと言うことにしてもらいました。」
祭司が1人で国を滅ぼすとか、さっちゃんヤベーな。
「退治されたはずのドラゴンが未だに存在してるってなったら大騒ぎになるだろうから引きこもってたんだろうけど……さっちゃんが未だにここにいるのは何で?」
いつから引きこもってるのか知らないけど、さっちゃんのことがデラセルナだって分かる人は今の時代にいるのかね?
デラセルナって名乗ってもおとぎ話から名前をとったと思われそうだけどな。
そもそもフルネームは後世に伝わってるのかね。
「未だにここにいるのは、贖罪のためです。理由はどうあれ私は大罪を犯しました。なので我が国の法に基づき孤立した空間で神の許しが出るまで贖罪の歌を歌い続けなくてはならないのです。」
……さっちゃんには悪いけど、どっかの陰謀とはいえ、アッサリ薬漬けになって他種族を攻撃しようとしたバカ達のためにさっちゃんはこんなところで謝り続けてたってのか、竜の国がどんな神様を奉ってたの知らないけど、概念に祈り続けても許しなんて出る分けねーし、正直あほくさとしか思えないんだが。
まあ、神様に異世界に派遣されて実際に会話した身だから言えるけど、あれは祈っても無駄だってはっきり分かる存在だったわ!
しかしそうなると…どうするかな、このままほっとくとさっちゃんは永遠に出られないし、出てこないぞ。
俺の感知しないとこでならいくらでもやっててくれて良いんだが、見ちまったからには何とかしたい……と俺の中の何かが囁いてくる。
地球にいた頃では考えられない思考を不思議に思う。
もしかして、オルダーが言っていた報酬の運命の相手なのだろうか?
悩んでいても仕方ないし行動をおこそう。
「なあさっちゃん、神様に許された時ってなんか聞こえたりするの?」
「さあ?何せ私も初めての事ですから……でもきっとお告げが下るはずです!そう信じてます!」
狂信的過ぎるでしょこの娘。
「ちなみになんだけど、さっちゃんが信仰してるのは誰なの?」
ボスかオルダーに頼んでその神のフリをしてもらおう。
竜の国の神だし竜神かな?
「私が信仰しているのは全能神オルダー様です。」
聞き間違いかな?いま矛盾する呼び名が聞こえたような……全能のヘタレ失敗神っておかしい…おかしくない?
「竜神とかじゃないんだ。」
俺の呟きはさっちゃんに聞こえてしまったようで、猛烈に食いついてきた。
「そうですよ!ドラゴンだから竜神を信仰してるんでしょとかドラゴンは暴れるの好きだから神様なんて信じてないでしょとかよく言われたんですよ!ドラゴンだって、人それぞれ信仰しているのは違いますよ!それに信仰無きものに司祭とかお祭りの概念があると思いますか!?」
おおう、地雷だったかな?かなりご立腹のご様子。
「わかった、わかったから落ち着いてくれ、さっちゃんの憤りも当然だ。他人の思い込みを押し付けられるのは嫌だよな、俺はドラゴンとゆう存在への認識が薄いから疑問が口からぽろっと出たんだ、許してくれ。」
俺が謝ったことで落ち着いたのか、さっちゃんのテンションはもとに戻り、話を戻してくれた。
「いえ、私も熱くなってすいませんでした。竜神はドラゴンではなく竜人族や蛇人族が崇めていることが多い神様です。まあ、人それぞれなのでドラゴンの中にも竜神を信仰している方もいたでしょうけど。」
「重ねて聞くけど、ドラゴン族って種族として何を信仰してるの?あと竜人族と蛇人族、ドラゴン族って何が違うの?」
「ドラゴン族全体での信仰は自由の女神ヘクター様ですね、「自分で責任が取れるなら好きなことをしなさい、取れないなら命を代償に償いなさい」とゆう教えなのでドラゴンにはピッタリでした。竜人族は頭がドラゴンで体には鱗、太い尻尾のある亜人で、蛇人族は頭だけが蛇の種族、ドラゴン族は人間に変化できるトカゲだと思っていただければ良いです。」
トカゲって……自分の種族だろうに。
「この間メタルドラゴンを殺したんだけどさっちゃん的に不味かったりする?」
「いえ別に、ドラゴン族とドラゴンは別物ですから。ドラゴン族は人に近い生き方をしていて、ドラゴンは完全な獣です。それよりもキョーちゃんがメタルドラゴンを倒せたことの方がおどろきなんですけど。」
「俺が直接戦って倒したんじゃなくて、ゴーレムにやらせたから。」
「最近のゴーレムはドラゴンを倒せるほどに洗練されてるのですか?魔法使いの腕も上がってるんですねぇ。」
俺がパソコンでちゃちゃっと作ったやつだけどね。言ったら面倒なことになりそうだから言わんとこ。
そういえば俺の事さっちゃんに説明してないけど、気にしてなさそうだから聞かれたときに答えよう。
「俺のゴーレムは分け有り品なもんで普通のについてはよく知らないんだ。」
さっちゃんはそうなんですか~とだけ言って黙ってしまったので、ここらが潮時と思いさっちゃんにそろそろ帰ると告げる。
さっちゃんは少しばかり残念そうな顔を見せたが、また来るよと言ったら嬉しそうな顔になった。
さっちゃんと別れ外に出た俺はぜんのうしん(笑)に本日三度めの連絡をとる。
プルル、ガチャガチャガッチャーン!!ギャァァァァァァ!!
電話が繋がったと思ったら何かが壊れる音と情けない悲鳴が聞こえてきたでござるの巻き。
「もしも~し、大丈夫か~?何があった~?」
「キ、キョウジさんでしたか……あービックリした。」
「ボスの愚痴でも言ってるとこにタイミングよく連絡が来てビックリした拍子に何か引っくり返したってとこか?」
「何でわかったんですか?」
「何となくで言ったのに当たりかよ。」
さっちゃんに全能神オルダーってこんなやつですって言っても絶対に信じてもらえないだろうな何て考えながらアラトスにいるやつに一言二言届けられるか聞いたところ言葉を届けるだけならすぐにでも可能とのこと。
なので三日後くらいにさっちゃんに神様の許しを出してもらうように頼みログハウスに帰る。
「むきゅー!」 「ピキャー!」
「なんだ……あれ。」
ログハウスに戻った俺の目に飛び込んできたのは地面を走り回るサンショウウオらしき生物とその背中に乗ってはしゃぐコニーの姿だった。
あの生き物がなんなのか、なぜコニーを乗せて走り回っているのか、少し離れたところで爆走中のコニーと一匹を眺めていた虎熊に声をかけ現状の把握を行う。
「ただいま虎熊、帰って来て早々聞くけどあれなに?」
爆走チョロQ状態のコニーを指差しながら虎熊に聞くと、苦笑いしながら説明してくれた。
俺が探索に出たあと虎熊達はメタルドラゴンの上で踊っているコニーはおいといてせっせっと解体作業を進めていたらしい。
しばらくしてコニーを下ろさないと危ない段階に差し掛かったので虎熊が髪を伸ばして下ろそうとした瞬間コニーとメタルドラゴンの一部が光だし、伸ばした虎熊の髪は弾かれてしまった。
焦って再度伸ばそうとしたが光はすぐに収まり、収まった後にはコニーがあの生物にライドオンしていたそうだ。
コニーの説明を聞いたそうだかよく分からなかったし、コニーの言うことを聞いていて危険も無さそうだから俺に丸投げで良いだろうとなったらしい。
獅子刀とアルファは作業が終了したあと手持ち無沙汰になって中に入って室内の掃除しているそうだ。
「コニー!こっちにおいで!」
爆走するチョロQコニーを呼ぶと速度そのままに突っ込んできた。
「にーちゃ!おかーり~!」「ピキュー!」
ビョーン ドスコイッ!
「グッフウッ!」
コニーのお帰りの言葉と共に謎の生物が急にジャンプしたため、俺は腹にコニープラス謎の生物のダブル頭突きを食らった。
鈍い痛みに呻く俺に対し、虎熊は笑い、コニーは申し訳なさそうに「ごめんなしゃい」と謝り謎の生物は腹を見せて服従のポーズをとるのであった。
数分たって痛みが引き、コニー達に注意をして、改めて謎の生物についてコニーに聞く。
コニーの説明では、うーとなってフリフリしてぱーってなったらいたたらしい……成る程、ちんぷんかんぷんであるのはわかった。
これは虎熊が分からんのも仕方ない、俺も分からん。
仕方がないので謎の生物に〔検索〕をかける。
マイコニドラゴン(幼体) Dランク
特殊個体のマイコニド、コニーのスキルによって作り出された存在。
生まれたばかりで強くはないが弱いわけでもない。
弱い麻痺毒をブレスとして吐き、チョロチョロと逃げ回る、最高時速は30キロ。
尻尾には使い古した果物ナイフ程度の切れ味がある。
この世界には存在しない生命体である。
得意属性炎、雷、斬
弱点属性無し
んん~~~!?
何か不穏な事が書いてあるな~、コニーのスキルによって作り出された存在とな?
そういや、コニーの情報は進化したときに見たっきりだったので、コニーのスキルを確認する。
〔毒無効〕〔劇毒生成〕…とても強い毒を作り出すことが出きる〔寄生胞子〕…特殊な胞子を飛ばし吸い込んだ相手を一時的に操ることが出きる〔湿度操作〕…限られた空間の湿度を操ることが出きる〔キノ子生成〕…生物の核を使用し自信に忠実な僕を生み出す。同時に産み出せる数は術者の実力しだいである。〔石打〕…石を打ち出すことが出きる。術者の実力次第で山のような大岩も打ち出すことが出る。〔木の鞭〕…周囲にある木の枝を操って攻撃、捕縛が出きる。
コニーが何かすごい生物になっとるー、あの謎のダンスは遊んでるわけじゃなかったんだな。
しかも攻撃魔法まで覚えてるし、虎熊にマイコニドラゴンの説明をしたら早速見せて貰おう。
さくっとマイコニドラゴンの説明を済ませ、マイコニドラゴンに米俵銀之助と名付けて、再度でかけようとしたが虎熊に明日にしろと言われてしまったのでおとなしく銀之助にお手、待て、フセを教えて寝た。
余談だが、なぜか銀之助はベッドを嫌がったので戯れに藁を敷いたら気に入ったのかそこに寝た。
次の日、コニーの魔法やらなんやらを確認するべくいつもの湖までコニーと二人でやって来た、上手くいけば練習や確認中に食料がとれるから一石二鳥なこの場所、……多少は保全活動をしておくべきか?過激な実験(魔法や武器のためしうち)が多いからこのままいくと荒れ果てた荒野になるかも。
まあ、それは後日考えるとして。
「さあ、コニー!湖に向かって〔石打〕だ!」
元気よく湖を指差しながら言いはなった俺に対してのコニーの行動は。
「むきゅ?」
頭に?を出しながら首をかしげるだった。
「あれー?コニー〔石打〕だよ、わかんない?」
コニーは分からないようで首をかしげたまんまの体制でかたまって「むきゅ!」あ、こけた。
「ほら手を前にだして〔石打〕って言ってごらん。」
転んだコニーを抱き上げて魔法を使わせるために魔法名を言わせようとしてみる。
コニーはよく分かってないながらも手を前にだして魔法名を口にする。
「ストーンチョット!」
ポチャン
……うん、石がちょっとだな。
コニーか放った魔法は噛んだせいか、はたまた実力不足か、小石が現れて湖にポチャンと落ちた。
魔法は想像次第で何とでもなるとボスの手紙に書いて有ったし、俺も魔法は想像で適当に発動しているから、コニーもいけるかと思ったが駄目だったか……でもコニーが見せてくれたストーンチョットでどうゆう魔法かわかったし俺もやってみよう、そうすればコニーも使えるかもしれないし。
「よし!コニー俺もやってみるから見てるんだぞ?〔石打〕!」
バッシャーン!!
俺がストーンショットを発動するとコニーサイズの岩が目の前に現れ、2メートル程飛んで湖に着水し、派手に水しぶきを上げた。
コニーが出したやつより大きいやつをイメージしたらアッサリでたやっぱり魔法はイメージが大切なんだな。
「さあ、コニーもやってみな。」
「むきゅ!ストーンチョット!」
「あぶねっ!?」ゴガンッ!
コニーが出したのは俺が出したのと同じサイズの岩、だが岩が出現したのはコニーの目の前、つまり抱っこしている俺の目の前に降ってきた。
「コニー、危ないでしょ、もっと遠くに出さなきゃ。でも出せたのはすごいぞ。」
最初の注意でショボッとして、褒められてパアッとなる、うちの子はかわいいなぁ。
ナデナデナデナデナデ
コニーの頭を撫でくりまわしながら、次の実験のために移動を開始する。
次に実験するのは〔木の鞭〕だ、説明には木の枝を使っての攻撃や拘束が出きるとあったので、手頃な実験体を見つけて縛って叩こう。
SM実験の被害者を探していたら、良さそうな生物を発見した。
ギィギィ バリバリバリ
発見したのは黒光りする巨大なダンゴムシ、全長3メートル位ある体を揺らしながらバリバリとお食事中、本日のメニューは倒木のご様子。
この森にいるからには強いんだろうし、能力を見てから喧嘩を吹っ掛けるとしよう。
アーマードバグ Aランク
臆病な性格で外敵を発見するとすぐに丸くなってしまう。殻の表面は油分で覆われており非常に燃えやすいがとてもぬるつくため捕まりにくく逃げやすい。
得意属性水、氷
弱点属性炎
よし大丈夫そうだ、倒したあとは何らかの方法で有効活用させて貰うから許してほしい。
「よし、コニーあのアーマードバグに向かって〔木の鞭〕だ。」
「むきゅー、ウッチョウイッピュ!」
グググググ ビュン!
コニーのカミカミ魔法名で発動した〔木の鞭〕はアーマードバグの近くにあった木の枝が反り返って勢いよく戻り、アーマードバグの真上を横なぎに空振りして終わり、当のアーマードバグは一瞬だけ動きが止まったがなにもないと分かると食事を再開し始めた。
なんか思ってたのと全然違う、もっとこう……鞭の一撃って感じになると思ったのに実際は子供のいたずらの様な一撃だった。
「むきゅ、できちゃ!」
コニーはあれでご満悦のご様子。
「そうだな、発動してたな、偉いぞ。」
コニーの頭を撫でながらアーマードバグから距離をとる、コニーの〔木の鞭〕が当たればそのまま戦闘の予定だったのだが、当たらなかったし気付かれもしなかったのでこのまま去ることにして、俺の練習は別の場所でやろう、コニーの〔木の鞭〕を見てイメージは固まったし別に対象も要らなさそうだし。
そう思いその場を立ち去ろうとしたとき、嫌な気配を感じ咄嗟に近くの木をかけ登る。
「むきゅ?」
いきなり木に登った俺にコニーは不思議そうな表情を向け、何事か聞こうとしていたが開きかけの口を手で塞ぎジェスチャーでシーッとする。
コニーは静かにうなずき目線をアーマードバグに向けた。
嫌な気配の正体を確かめるべく〔策敵〕を発動し周囲の状況を見る。
[策敵]の画面には目の前のアーマードバグと離れたところに幾つかの反応があるが、そのうちの一つがものすごい早さで此方に近づいてくるのが分かる。
(なんだこいつ?すごい勢いで此方に近づいてきてるが、目的はなんだ?)
もしも俺達を目標に突っ込んできてるなら迎え撃たなきゃいけないし、アーマードバグが目当てならこのまま隠れてやり過ごそう。
「………あ………あぁ……。」
突っ込んできている反応が黙視できそうな距離に来たとき声のような悲鳴のような音が耳にはいってくる。
アーマードバグも何かを感じたのか丸くなって防御の体制に入っている。
「きぃああああああぁあああぁぁああ!!!」
10秒ほどで声の主が木々を蹴散らしながら現れ、丸まっているアーマードバグに襲いかかる。
現れたのはアーマードバグより二回りほどでかい蜘蛛?の様なモンスター。
タランチュラの様な毛の生えたボディに人間の腕が8本、脚のように生えており本来の蜘蛛なら眼がある箇所に女の顔面が生えていて、その顔面が耳障りな奇声を上げていた。
キャー気持ち悪ーい、ナニアレー、ホラー映画のボスキャラみたーい……なんて現実逃避してる場合じゃないな。
「む、むきゅぅ、にーちゃこわー。」
コニーもあの化け物を見て震えてしまっている、書く言う俺も少々逃げ腰だ。
今までにも武装したヤクザの集団とか魔物の群れとかに平然と突っ込んだことは多々あったし、異世界に来てから異形のモンスターも沢山見たけど「あー!!あーー!!あぁぁあぁあぁぁぁ!!!」……こんなに直感でヤバイ!関わりたくない!と思ったのは始めてだ。
今すぐにでもこの場を離れたいが、あんなのが暴れてる所に降りられるわけもないので、息を潜めておとなしくアイツの情報を見るとしよう。
ゴッドクイーンスパイダー ランク?
脚が人間の腕になっている蜘蛛の化け物。アラトスに存在しない生物であり、目標に向かって一直線に進み、邪魔するものを全て殺す、神によって作り出された殺戮モンスターである。本来眼がある部分に女性の顔があるが、これは作り出した神がどの世界でも1番美しく神々しい顔(自分)を見ながら死ねる様にと気を聞かせたものらしい。
得意属性、無し
弱点属性、炎
情報を見終え、小さくため息をつく。
まーた出たよ、面倒な神様からの刺客。
しかも私がヤりましたと自信満々に自分の顔まで付けてあるとかバカじゃん。
そしてアーマードバグは完全にとばっちりだったな、俺がアーマードバグの近くにいてしまったがために、真っ直ぐ突っ込んできたゴッドクイーンスパイダーの邪魔になり、教われてしまったアーマドーバグに南無。
さて、ゴッドクイーンスパイダーはぬるぬるのアーマードバグと戯れ中だしほっといて帰りたいところだけどあんなのが家に来ても嫌だし、今のうちに殺しときたいな。
しかしアーマードバグの防御能力はスゴいな、6本の腕で囲われてるから逃げられはしないけど殴り付けも噛みつきも一切聞いてないな……とゆうか俺を狙って送られたにしてはゴッドクイーンスパイダー、原始的すぎじゃない?
今のところ殴るか噛みつくかの2択しか見てないよ?
見た感じの危険度はファーゴブリンとどっこいか……寧ろ数が多いぶんファーゴブリンの方が驚異かもしれんな、見た目だけならゴッドクイーンスパイダーの方が圧勝だけど。
「コニー、ファーゴブリン戦の時みたいにしっかり捕まっとけよ。」
コニーはその言葉を聞くなり無言で俺の腹にしがみ付いた。
よっぽど目の前でぬるぬる虫レスリング選手権を繰り広げている奴が怖かったのだろう、がっちりしがみついたまま微動だにしない。
虎熊か、アルファ辺りがいれば預けて戦えるが今は俺だけだし、呼び出すのも俺本体が見つかってないとゆうアドバンテージを失うから少し危険だ。
というわけで腹にコニーを抱えたまま不意打ちをするとしよう。
右手にソウルイーター、左手にドラゴンキラーを持ち、ゴッドクイーンスパイダーに向かって飛び降りる。
そしてゴッドクイーンスパイダーに着地する直前に両手のエモノに魔力を流し勢いよく振り下ろす。
サンッ
「ぎ……?………あ。」ドチャ
ゴッドクイーンスパイダーは何が起きたのかわからないと言う表情を浮かべながら縦に3分割され絶命した。
「相変わらずとんでもない切れ味だな、まあ気づかれなかったし、戦闘にすらならなかったし暗殺には丁度良いのかも知れないが。」
気づかれないように近付いて抵抗される前にスパッと首を跳ねる……口を塞ぐとか押さえつける手間が減って良いかもしれない。
それにしても、なんか切れ味が上がってるような気がするな、前に試し切りで一回使ったキリだったがあの時よりも抵抗感がなかった気がする。
「さて、コニーもう終わったから顔上げて良いよ。」
「しゅんだ?」
コニーは顔を上げて辺りを確認しながら不安そうに聞いてくる。
「ああ、終わったぞアーマードバグはまだ居るけど、動かないから放置しような。」
昨日の今日だがボスに連絡をとらないとな、こんな証拠の塊みたいなもの勝手に処分するのはな。
「コニー、これから変なおじさんが来るけど気にしちゃダメだからな~、このお手製の積み木をあげるから遊んでてな。」
リュックから暇潰しに作った積み木を小山にしてコニーの前に出す。
「むきゅ?……ぽーい?」
さっきまで3分割になったゴッドクイーンスパイダーの方を繁々と眺めていたが目の前に出された積み木の小山に目線を移すと手にとって少し悩んだあと小山の上に放り投げ始めた。
「……コニー、遊び方が違うよ。放り投げるんじゃなくて、こうやって積み上げるんだよ。」
適当に2つ取って積み上げて見せる。
「あーい。」
今度は普通に遊び出したので、周囲への警戒はしつつボスに電話を掛ける。
プルルル ガチャ
「……………うぁい、現在この電話の持ち主は、ドキッ!!漢だらけの酒飲み大会モロリもあるかもに参加した結果、二日酔い中です。ご用の在るかたは半日後くらいにかけ直してください。」
かかったあとしばらく間が空いたと思ったら電話口の向こうから情けない声が聞こえ、次に情けない理由が聞こえてきた。
「おいボス、仕事はどうした仕事は。と言うか昨日の今日でよくそんなもんに参加する暇があったな。」
ボスは呻きながら苦しそうに答える。
「うー、一応お前たちがーいる世界はそれぞれで時間のー流れがー違うからーそっちの1日はこっちでうっぷ、1年だうーん。」
呻き声が混じりながらの説明ではあったが、俺は浦島太郎状態なわけか。
まあ、俺は帰る気がないから構わんがな。
「なんでも良いから出てこい、出てきてどっかのアホ女神が着払いで送ってきた見るに耐えないグロテスクで悪趣味な物体を片付けてくれ。」
俺のアホ女神が絡んでる発言を聞いたボスは呻き声を上げながら少し間をおきオルダーに連絡してくれと言って力尽きた。
しょうがないオルダーにかけるか。
ヴーヴー
履歴からオルダーにかけようとしたとき、オルダーの方から着信がきた。
「あ、もしもしオルダーです。今ボストール様から連絡があってキョウジさんに電話しろと言われたのですが何かあったんですか?」
不思議そうに訪ねるオルダーに事の経緯を説明する。
「あー、それでボストール様あんな声だったんですねー。」
俺の説明で納得したオルダーはゴッドクイーンスパイダーを全てポイント変換にかけてくれれば良いですよと言ってきたので通話を切りなんの疑いもなく全てポイントに変え、帰ろうと思いコニーにの方を見るとコニーは積み木からはなれたところに移動しており、なにかを見ているように見える。
「何してるんだコニー?」
「にーちゃ、しりー。」
コニーが指差したのは木の股の部分、そこには茶色いウサギの尻がはえていた。
魔法の実験に出掛けていったコニーとキョウジを送り出したあとアルファの農作業を手伝いながら銀之助のしつけを実行していた。
「よし、銀之助このイチゴの苗をアルファのところまで運んでくれ。」
「キュー!」
(*^▽^*)
背中にイチゴの苗を背負ってアルファの元に駆けていく。
(*^ω^)ノ m(_ _)m
「キュ、キュー!」
アルファはそれを受けとると、銀之助頭をひと撫でし背中に収穫した野菜を入れた籠を背負わせ獅子刀に持っていくように頼む。
「キュ!」
ナデナデ スッ
獅子刀は銀之助の頭を撫でると籠からトマトを取り出し銀之助に与える。
「キュ~♪」シャプシャプ
銀之助はもらったトマトを嬉しそうに食べ始める。
虎熊、アルファ、獅子刀の三人の間を何かの荷物を持たせてぐるぐるさせ、何周か毎におやつ(野菜や果物)を与える。
そうすることで、お手伝いをすればご褒美が貰えると教えるのが虎熊の目的であった。
銀之助はコニーの能力で生まれた存在、産み出したコニーとコニーの主であるキョウジの言うことは素直に聞くが、俺様たちの言うことまで聞くかは分からなかったから確認もかねてやってみたが大丈夫そうだな。
「よーし!王手、飛車取り!」パチンッ
(o゜Д゜ノ)ノ
ヒュン!
「キュキュー!」パシィ
3体と一匹で暫く作業を行い、する事がなくなったので虎熊とアルファは将棋を、獅子刀と銀之助はフリスビーで遊んでいた。
「しっかしキョウジの居たとこは随分と娯楽で溢れてるんだな、あっ角もいただき。」パチンッ
!!(⊃ Д)⊃≡゜ ゜
今朝、キョウジは出掛ける前に2人以上で遊べる娯楽を大量に置いていった。
仕事が終わったあとやることがないと退屈だろうと言っていたが、俺様たちはゴーレム何だしそこまで気に駆けなくて良いんだが、キョウジは俺様たちを人間と同じように扱おうとしている節がある。
「悪いことじゃないし、寧ろ嬉しいことなんだが神様の使いが俺様たちみたいなのにだけ構ってて良いのかね?……そこんとこどーよアルファ。」
虎熊は目の前で王将以外の自分の駒が無くなって頭を抱えているアルファに問い掛ける。
( ・3・)(*´・∀・`*)(*゜∀゜)=3
アルファは少し考える素振りを見せたがすぐに肩をすくめ、何の問題もないとゆう表情を作る。
「何の問題もないってか?まあ、神様よりのお前が言うんなら大丈夫なんだろうな。それにしてもお前、普段キョウジにわりと雑な扱いされてるけどいいのか?」
虎熊はアルファが自分や獅子刀と違い神様に作られたゴーレムであることを知り普段のキョウジの態度や行動を思い返して密かに気を揉んでいた。
もし、キョウジが不敬であると判断されて消されたりしたら俺様の人生計画が台無しになっちまう。
キョウジが大人になって子供を作って、その子供が大きくなってキョウジの孫が生まれたらその世話をして、キョウジが老衰で死ぬ少し前に俺様を消滅させて貰って生涯を終えるとゆう一晩で考えた完璧なプランが!
( ̄ー ̄)b(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノ(。ゝ(ェ)・)-☆
「ただのじゃれあいだからそっちも問題ないと。」
問題ないなら取りあえずは一安心……かな?
そのあとは外で遊んでいる銀之助達と一緒に日がくれるまでフリスビーで遊んで遊んでいたらキョウジ達が帰って来た……赤と茶色の毛玉を抱えて。