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第6

虎熊が仲間になって3ヶ月が経ちましたが、俺は、森から全く出てません。

探索の範囲を広げてはいますが森の外に出ることはなく、その探索の過程でえげつない魔物が沢山うろついていたため食糧とポイントはそこそこたまりました。


そして一番最初に感じた通り人に会うこともありません。

一応俺はオルダーに依頼されてここにいるので何らかの事件がおきてくれないと仕事してる気にならない、オルダーはこっちで生活をしながら何かあった時にお願いしますと言っていたから何かあるまでは待機で良いんだろうけど。


とりあえず虎熊に森の外のことを聞いたところ、一般市民の間で噂になるような大きな事件は、魔国の王がハニートラップに引っ掛かり王妃に土下座謝罪したくらいしかないと。

魔国の王様何やってんだか、そしてそんなのが普通に広まってるって平和な世の中だなと思いつつ日々を過ごしていた。

一応この三ヶ月の間にいろいろ変わったことがある。


この3ヶ月で変わったことをざっとあげると、地雷を完全に撤去、新しい仲間(ある意味虎熊より前からいた)が増えたのでログハウスの中で家庭菜園を開始、そして一番の変化はコニーが進化したことだ。

時系列順に説明していくと、まずは地雷を撤去した話からになる。

ドーバーフロッグ(幼体)やデビルビーバーワームがバリアの内側にいたことを考えてバリアの機能を改めて確認すると、バリアは魔物の嫌う微弱な電波を発することで魔物をバリアに近づかせないようにすると言う機能らしく、地下や水中の魔物には効きにくいとあった。


地雷は地下や水中には効果がなく地上の魔物は近づきにくいとなると設置したままだと危険しかないので撤去した。

次に新しい仲間だが、これは虎熊が仲間になって一ヶ月ほどたった日のこと、この日コニーと虎熊をお留守番させ、俺は何となく一人で狩りに出ていた。

俺がこの異世界にきて初めて見た魔物、8本足のトカゲ……タイラントリザードを狩って皮を剥いだりして解体作業を行っていたとき、ふとリュックの中にオルダーに貰ったカプセルが1つノーチェック状態で残ってたことを思い出した、そうショベルカーのカプセルだ。

使い道がないし後で見れば良いやと思いそのまま忘れてしまっていた。


せっかく思い出したんだし、覚えてるうちに確認してしまうか~とリュックからカプセルを取りだし放り投げる。

俺の想像ではオーソドックスなキャタピラで片側にアームのついた黄色いショベルカーが出てくるはずたった。

しかし予想とは違い出てきたのは人形のロボット、顔にモニターがついているが今は何も表示されていない、肩のところにショベルカーのアームがついてはいるしよく見ると足の部分はキャタピラなのだが完全に二足歩行の人形ロボットだった。

ショベルカーのショベル部分しかあってないだろとか何で人形?とか考えていたらウィーンと機械の起動音がなり顔のモニターに(=_=)の顔文字が表示される。

(=_=)のまま動かないので声をかけてみる。


「あー、はじめまして?」

モニターの表示が(* ̄∇ ̄)ノに変わりロボットも手を上げる。

反応を示したのでいろいろと質問を投げ掛けてみた。

「お前、名前はあるのか?」

(・д・ = ・д・)σ(´・д・`)?

「そうだよ!俺とお前しかこの場に居ないだろうが!」

キョロキョロと回りを見回したあとに自分のことか?と言う動きをしやがった、表示されてる顔文字もそれに会わせてあるし、こいつ本当にロボットかよ。


機械らしからぬ滑らかな動きでボケてこられたので、思わず誰かが近くで操作してるんじゃないかと疑ったがオルダーに渡されたロボットならこれぐらいはあり得るかと考えていると、ロボットがしゃがみこみ地面に文字を書きはじめた。

alpha

「アルファか、これがお前の名前か?」

ビシッ(≧∇≦)b

サムズアップしてくるアルファにボスの姿がちらついて若干イラッとしたのはここだけの話。

「アルファ、お前顔のモニターに文字とか表示出来ないのか?地面に文字を書くよりはその方が楽だろう?」

(ヾノ・ω・`)

アルファが顔の前で手を左右にふる。

「その顔文字とジェスチャーは無理と言いたいのか?」

(゜-゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)


頷いてるし、俺はクリスマスやイースターがよくメールに顔文字を使ってきてたからまだわかるが、虎熊やコニーは意思疏通に苦労しそうだな。

ちなみにだが俺とバレンタインのメールは必要事項のみ、返信も了解やわかったなどの単語だけなのでよくクリスマスたちに素っ気ないと言われていた。

バレンタインが顔文字などを使わない理由はめんどくさいだったが俺が使わない理由は顔文字や絵文字はよくわからないとゆうハッキリとした違いがあるのだがそれはおいておこう。


1度ボスが顔文字と絵文字、ギャル文字と呼ばれる物だけでメールを送ってきたことがあったが読めなくてクリスマスに解読を頼んだことがある、流石にそれっきりにしてもらったが。

そんな懐かしい思い出を振り返りつつ携帯を開き、ショベルカーのアプリを起動する。

アプリの内容はアルファの機能説明とパーツの購入にカラーチェンジ、そして命令優先度の設定があった。

アルファの機能説明にはこう書かれていた。

alphaはオルダー様がボディーを担当、ボストール様がプログラムを担当してできた機体です。

alphaはパーツによって出来ることが変わります。

パーツはポイントでの購入になりますのでよろしくお願いします。


パーツをつけていない場合は簡単な肉弾戦や子守りに家事手伝い、畑仕事やペットの世話が可能です。

パーツによって出来ることはパーツの概要をご覧ください。

故障した場合修理にポイントがかかりますご容赦ください。

……家電の説明書を見てる気分だな、そんでアルファの行動にボスがちらつくと思ってたらやっぱりボスが絡んでたっつーかボスが脳みそ作ってたのか。


機能としてはノーマルモードでもかなり優秀だな。

わざわざパーツ買わなくてもいいんじゃなかろうか。

命令優先度は俺しか登録されてなかったのでとりあえずそのままにしておく。

いろいろ確認している間俺の後ろをアルファがm(。≧Д≦。)mの表示でチョロチョロしていて、正直鬱陶しいのでやめさせる。

「おいこら、鬱陶しいからじっとしてろ。」

Σ( ̄ロ ̄lll)の表示で落ち込むアルファ、可愛そうな気もしないでもないがボスが作った時点で甘やかしたら調子に乗る性格なのが目に見えているので多少きつめに接する。

ログハウスに連れて帰ると虎熊がかなり驚いた様子で話しかけてきた。


「お帰りキョウジ、後ろに居るやつはもしかしてゴーレムか?」

ゴーレムじゃないが、ロボットっていっても伝わらないだろうからゴーレムで通しておこう。

「もしかしなくてもゴーレムだが、そんなに驚くことか?ただのゴーレムだぞ?」

「んはは、キョウジはゴーレムを見たことないのか?普通のゴーレムはそんなに小さくないし表情豊かでもないぞ。」

表情豊か?後ろを向くとアルファがコニー相手に百面相かましていた。

("⌒∇⌒")( ´_ゝ`)(/≧◇≦\)(≡・x・≡)

「むきゅ!むきゅ!」


コニーが楽しそうだからあれはおいておこう。

「普通のゴーレムは体が土や岩、草木で出来てて大きさは作る術者の力量で変わってくるんだが一般的に出回ってるのは小さくても五メートルはあるぞ、あの表情っぽいのが出てるのはデンシバンってやつだろ?デンシレンジとかに使われてるやつ、あんなのが引っ付いててあのサイズって事は作れる奴はそう居ないはずだが、まあそれは良いや、で?今までどこにしまってたんだ?あのゴーレム、俺様が来てから1度も見てないが。」

出所を深く探らない虎熊に感謝しつつ、虎熊に向き直って質問に答える。


「あー、今までちょっと起動するタイミングがなくてな、あとで起動させようと思って別の場所に置いといたら頭の中からキレイさっぱりすっぽり抜けてついさっきまで忘れてたんだよ。」

ガッシャン

ん?何か後ろで音が。

振り替えるとアルファがorzの状態で倒れている。

「忘れられてたってことでショックを受けてるみたいだぞ?ちょっと可哀想じゃないか?」

虎熊に目があればきっとあわれみの眼差しを向けているところだろう……だが。


「虎熊、……俺はなあいつ……アルファと言うんだが、アルファを作ったやつのことをそれなりにしっているんだ。」

「あんなスゲェ完成度のゴーレムを作れる術者と知り合いなのか。」

「ああ、そいつは俺にとって命の恩人と言っても過言ではない存在何だがな、性格に問題があったんだ。」

「命の恩人ってところを詳しく聴きたいとこだが今はいいか、性格に問題ってのはどんな問題なんだ?。」

「ああ、助かる、そいつは統率力があって仕事もできるし、部下を無駄に上から目線で叱ることもなく、失敗した理由を一緒に考えてくれるそんな人だった、その能力だけ見たらきっと社会では有能扱いされることだろう。」


「今聴いてる情報だけだと確かに良い上司って感じだな。」

「そうだな、今言った事柄だけなら良い上司だな、けどそいつはな、褒めたら褒めただけ調子にのるタイプなんだ。」

「調子にのる?それだけ良い上司なら調子にのらせても良いんじゃないか?」

「調子にのるの度合いが違うんだよ、囃し立てた分だけ上半身が上に上にのけ反っていきおだてた分だけ鼻が高くなり、最終的には他人の仕事を全部自分一人で済ませて他の人に仕事をいかなくしてしまう、そんなやつだ」

あのときは本来なら俺を含む数十人でやるはずだった依頼を一人で済ませちまって俺達の稼ぎが無くなりかけたからな。

「お、おおう、スゲェなそれは。」


「そしてこいつからはそいつと同じ臭いがする!俺の本能が調子にのらせてはいけないと囁いている!」

(´д`|||)の顔文字でアルファが膝を抱えて床にのの字を書きはじめた。


コニーはアルファを見ながら爆笑している、ペットは飼い主に似ると言うがほんとだな良い性格してるぜ。

アルファを調子にのらせてはいけない理由を虎熊に説明し終えて、アルファにさせる仕事を考える。

いまのところ食べるものが肉と魚、エリンギに米なので何らかの野菜がほしい。


と言うわけで貯まっていたポイントを使い室内菜園を設置。

アルファのパーツにスコップとじょうろがあったのでそれも購入し装備させておいた。

アルファはさっきまで落ち込んでいたくせに仕事を与えると((o(^∇^)o))の表情になり嬉々として菜園に入って行った。

アルファにはポイントで購入したニンジン、ジャガイモ、大根、玉ねぎの種と肥料やプランターなどの菜園に必要そうな物を渡しておいた。


あとはアルファに丸投げする、なにせ俺はアサガオすらまともに育てられんからな。

これが新しい仲間との出会いと菜園設置の経緯である。

ちなみにアルファに任せた野菜たちは1週間ほどで採集可能になっており、改めて異世界ってのは不思議なものだと思った。

そして最後がコニーの進化である、これも回想していこう。

これは1週間ほど前にコニーと俺で何か面白い物でもないかと未探索の箇所をぶらぶら散歩していたときのこと。

「なんがこの辺の木はログハウス周辺に比べて細いな~高さも半分くらいか?」


「むきゅ~?」

「わかんないかー。」

辺りの景色についての感想をコニーに投げ掛けながら歩いていた俺の耳に何やら話し声のようなものが聞こえた。

こんな危険地帯に人が居るのは珍しいと思い見つからないようにこっそり見に行くとそこには毛むくじゃらで人形の生物が三匹、洞窟の前に座り込んでいた。


身長は150~160㎝前後で全体が赤茶色の毛でおおわれている、顔なんか毛がりしてないアンゴラウサギみたいになってて目がどこについてるのかすら、わからない。

なんだあのケダマリモ、雪男の亜種か?それともビッグフットの親戚?話し声に聞こえたのは奴等の鳴き声だったようで、会話しているような感覚でウホォウホォと鳴いている。


この森で見たことのある生物の中で一番知性が高そうにみえる。

ファーゴブリン Aランク 洞窟や洞穴に住む肉食の魔物、指の力がとても発達しており洞窟の岩壁を這いまわり獲物に四方八方から襲いかかる、自分達の巣の前に見張りを立てたり会話をするように鳴き声をあげるなど知性のあるようすが見受けられるが、ファーゴブリンの基本的な行動理念は喰う寝る殺すの3連コンボなので意志疎通は不可能である。

耐性属性、水、氷。

弱点属性、特になし。

ゴブリン?あれが?あのナックルウォーキングしてるケダマリモが?ゴブリンなの?なんだかすごくガッカリだ~俺のイメージしていたゴブリンと同じところが身長くらいしかない。

少しガッカリしつつ、ファーゴブリンに見つかる前にこの場を離れることにする、戦いになっても負けはしないだろうが、わざわざ喧嘩吹っ掛けるのもめんどくさいし、今はポイントにも食糧にも余裕があるので無益な殺生はさけておこう。

ビュン!バキバキバキッ!!


そう思いその場を離れようとしたとき、洞窟の中から何かが飛んできて俺の隠れている木にあたり、音をたてて倒れてしまった。

嫌な予感がしたためとっさに離れ無事だったが、ファーゴブリンにおもいっきり見つかってしまった。

洞窟の前に居たファーゴブリンたちは何が起きたのか理解できてないようで表情は分からないがポカーンとしているように見える。


飛んで来たものを横目で確認するとへし折れた木の側に身体を引きちぎられたようなファーゴブリンの死体が転がっていた。

何でファーゴブリンが転がってるんだ?洞窟の中に居るのはファーゴブリンじゃないのか?などの疑問が浮かぶがとりあえず目線を洞窟の方に向け直すと、洞窟から3メートルはあろう赤色の毛玉が現れ入り口にいたファーゴブリンたちが騒ぎはじめた。

しかし、それは赤色の毛玉にむかってではなく俺にむかってだ。

赤色の毛玉の正体は分からないがファーゴブリンたちが俺にむかって吠えていることからファーゴブリンの仲間なんだろう、だがそれならやつはなぜファーゴブリンを投げてきたんだ?


考えても分からないし、ぶっちゃけどうでも良い。

「コニーしっかり掴まっとけよ、今からかなり動くからな。」

「むっぷう。」

俺の胸に顔を押し付けた状態で返事をするコニーの声に少し和んだが、目の前の脅威を処理することに頭をシフトする。

両腕に魔力を纏い刃物の状態にしファーゴブリンたちを見据える。

魔物とはいえ久しぶりに人形の生物を殺す、あっちにいた頃は仕事で殺人は日常茶飯事だったが、こっちに来てからはでっかい芋虫やでっかいトカゲみたいなとにかく規格外なでかさの生き物ばかり相手にしていた上に、全部傘で倒してきたから白兵戦はほんとに久しぶりで上手く立ち回れるかちょっぴり不安だ。

まあ、毛玉含めて4匹だしなんとかなるか。


スウ~~、ブゴォォォォォォ!!!!

ウホォ!ウホォ!

ワラワラワラワラワラ

赤色毛玉が大きく吠える、すると洞窟から大漁のファーゴブリンが現れた。

「ワオ!団体さんのお出ましだ!」

ざっと見ただけで30匹は増えやがった、しかも洞窟の中にまだ居るっぽいし、これは本気でいかないとな。

一対多数でこっちは身体能力が上がってるとはいえ子供の身体、しかも胸元にコニーがいる。

デビルビーバーワームの時はタイマン状態で動きも胃液飛ばしてくるか突進の2卓だったからある程度楽に戦えたけど、今回は間を開けずに突っ込むか!!

ダッ! ザン! ウホォ!

真っ直ぐ突っ込んで手近な一匹を切りつける。

人間の子供である俺が逃げずに突っ込んで来たことに虚を疲れたのか奴等は一瞬動きが止まり仲間の悲鳴で一斉に動き出す。

俺のことを捕まえようと伸ばされる手から逃げながらすれ違い様にファーゴブリンたちの適当な部位を斬っていく。

腕、足、胴体、頭、とにかく死ぬ死なないは関係なしに斬っていき、立ち止まらないように気を付けながらある程度暴れたら囲いきられる前にその場を大きく離脱し、離れ際に手榴弾をポイしておく。

俺のことを追いかけてきたファーゴブリンが手榴弾の爆発により吹っ飛び、数匹は絶命し数匹は重症と言った感じだな。

これを何度か繰り返して、着実に数を減らしていく。

しかし妙だなあの赤色毛玉は何で動かないんだ?ファーゴブリンとの関係はよくわからんが少なくとも一緒に居るなら共生関係にありそうなものだが……。

これだけファーゴブリンを殺されたら俺に向かってくるなり、ファーゴブリンたちをサポートするなりしそうなもんだが最初に吠えて以来微動だにしないんだが……何か企んでいるのかそれとも洞窟の中に残っているファーゴブリンで事足りると思っているのか……まあ動かないなら赤色毛玉は後で良い今は回りのファーゴブリンを潰していくことに専念する。


………あれから20分ほど暴れ回り立っているファーゴブリンの数は残り10匹程度になっていた。

生きている個体を含めればまだ20匹はいるだろうが戦えそうなのは立っている10匹とここまでになってもまだ動こうとしない赤色毛玉だけだ。

「ハアハア、コニーまだ引っ付いてるか?」

「むー。」


さすがに20分も暴れ続けると息が上がるな、コニーにいたっては20分間暴れ回る俺にしがみついてるんだから単純にすごい。

「もう少し頑張ってくれ、終わりは見えてるからな。」

「むーん。」

返事に元気がないがしょうがない、俺もさすがに疲れてるし。

まあ、立っているファーゴブリンたちも俺が手榴弾を使いまくったせいか傷だらけだ。

見た感じ無傷なのは赤色毛玉だけ、動かないうちに倒してしまいたいが生き残ったファーゴブリンが赤色毛玉の前で行く手を阻んでくる。

ファーゴブリンたちも自分達が不利なのはわかっているようで後ずさりし始める奴まで出てきた、しかし後ずさりしているやつは俺ではなく赤色毛玉を気にしている。

なんなんだ?逃げようとするのに敵の俺ではなく味方の赤色毛玉を気にするなんて。

ダッ! 「ブゴォォォォォォ!!」ガシッ!!ウホォ!?

ブチッ!ブチブチブチブチ!

ファーゴブリンが逃げようと走り出した瞬間、赤色毛玉が動きだし逃げようとしたファーゴブリンを引きちぎった。

な、なんだ?逃げようとした仲間をちぎり殺した?

他のファーゴブリンたちは引きちぎられた仲間を見て怯えているし、恐怖政治でもしてるのか?


もしかして最初に飛んできたファーゴブリンの死体は赤色毛玉の機嫌を損ねるか何かして殺されたやつだったのか?

赤色毛玉は引きちぎったファーゴブリンの死体を投げ捨てると他のファーゴブリンに怒鳴り散らす。

「ブガァ!ブゴォ!ブヒィア!!」


何やらちぎられた死体を指しながら怒鳴っているが、「ああなりたくなかったら、速くあいつを殺してこい!グズども!!」といっているように見える。

こんだけの数になるまで動かなかった癖に文句を言ったり怒鳴るときだけ動きが良いとか最低上司の見本みたいだな………上下関係なのかは不明だが。

赤色毛玉が怒鳴ったあとファーゴブリンたちは怯えながらもがむしゃらに突っ込んできた。


可哀想だがこれだけの数を殺したあとなので突っ込んで来てる奴等を無視して逃げるとゆう選択肢が無くなっている、今ここで逃げたら死んだファーゴブリンたちは無駄死になってしまうし殺したからにはポイントか毛皮にしたい、よって逃げるなら無視するが向かってくるなら俺が生き残るための犠牲になってもらおう。

突っ込んできた奴等を片っ端から切り捨てる、先程までの乱戦と違い全員の頭を跳ねていくこの苦しまないように一撃で殺してやるのが無能な上司?を引いたファーゴブリン達へのせめてもの情けだ。


「さて、あとはお前だけだな無能毛玉。」

最後のファーゴブリンの首を跳ね飛ばし赤色毛玉に向かい合う。

こんな惨状なのに赤色毛玉にはまだ余裕があるように見える。

赤色毛玉は一番近いファーゴブリンの死体を拾い上げるとそれを俺に向かって投げてきた。

「おっと。」さっ

単純に真っ直ぐ飛んできた死体をよけ、赤色毛玉に近づくが別の死体をこん棒のように振り回しながら俺が近づけないようにしつつ、死体を拾っては投げるを繰り返し俺の腕から遠ざかるように戦う赤色毛玉に攻めてをかく。


赤色毛玉は俺の攻撃手段が両腕による切断攻撃か爆発する何かを投げるの二種類しかないと思っているのか、こうしてファーゴブリンの死体を振り回していればお前は近づけないから俺に攻撃できないだろう?フフンみたいな腹のたつ空気を赤色毛玉から感じ取ったので、大きく間合いをとり空中機雷を6個ほど出現させ赤色毛玉の周囲にばらまき待機させる。

「ブゴォア?」

俺の新しい攻撃手段に赤色毛玉はまぬけな声を上げながら頭にハテナを浮かべる。

攻撃だと思ったら、散らばった空中機雷は何もせずにただ辺りを漂っているだけなので赤色毛玉は俺が苦し紛れに訳のわからない物体を飛ばしたんだと解釈したようで、死体を投げるのをやめ両手に持った状態でメチャクチャに振り回しながら突っ込んできた。

あいつマジでアホだな、突っ込んできた赤色毛玉の足下目掛けて手榴弾を3個纏めて放り投げる。

赤色毛玉は手榴弾を避けようと急ブレーキをかけたので腕の動きも止まり完全に無防備となった。

「さあ、さよならだ無能な毛玉。」

待機させていた空中機雷のひとつを赤色毛玉の真後ろからブチ当てる。

ボーン!!

「ブゴッ!?」

赤色毛玉の無防備な背中に空中機雷が直撃し赤色毛玉が大きく吹っ飛び、先程投げた手榴弾の上に覆い被さるように倒れ手榴弾が爆発する。

ドドドドン!!

「ブゲェァァァァァァ!!!!」

すかさず残っている空中機雷をすべて赤色毛玉目掛けて飛ばし、おまけで火の玉も10個ほど飛ばしておいた。

ボガガガガガガァン!!

とんでもない爆発がおこり土煙で赤色毛玉がどうなったのかわからなくなってしまった。

扇風機並みではあるが風をおこし土煙をはらす、露になった赤色毛玉は至るところが吹き飛んで、火の玉が当たったであろう箇所は黒こげになっていた。

うん、やり過ぎたな最後の火の玉での追い討ちは明らかにオーバーキルだったわ。

赤色毛玉の絶命を確認して、回りで死にかけているファーゴブリン達にトドメをさしてまわる。

全てのファーゴブリンを殺し終え、比較的綺麗な死体を残し残りはポイントに変換する。

全部で10000Pになったのでなかなかのウマ味。

そして残骸状態の赤色毛玉に〔検索〕をかけてみる。


ファーゴブリンキング Sランク、ファーゴブリンのボス個体で30匹~100匹ほどの群れをつくり生活している、普通のファーゴブリンに比べ圧倒的に毛両が多く力も強い、無能個体と有能個体がはっきり別れており群れにいるファーゴブリンの数でどちらかがわかる、無能個体は何も考えずに数を増やすのでファーゴブリンの数がとんでもない数になり、力で押さえつけようとする、部下が減ったらまた増やせばいいと考えているので部下の扱いは基本粗雑である。

耐性属性、水、氷、斬撃。

弱点属性、特になし。

成る程、てことはこいつは完全に無能個体だな、しかし増やせばいいと思っているってのは増やすことが可能な状態にあるってことだから、もしかして洞窟の奥にマザー的な個体がいるのか?

洞窟を覗いてみると中はかなり広く光源も無いので奥がどうなっているのか全くわからない。


なので〔索敵〕を使い中がどうなっているのかを調べる。

始めて〔索敵〕を使ったときは敵の位置が大雑把にわかる程度だったが何度も使用しているうちに地図の様なものが表示されそこに名前が表示されるようになった、俺が知らない生命体は???で表示されるのでかなり便利になったと思う。


洞窟の中は蟻の巣のように道が枝分かれしており一番奥に広い空間があり、そこにファーゴブリンが数体と???が表示されており、洞窟の中にマザー的なのが居ると言う俺の読みは当たって居たのだろう。

しかし奥の反応は動く様子がないので出てこないのなら、疲れたし面倒だからこのまま帰ろうと思い〔索敵〕を消し洞窟からはなれようとした瞬間。

ポテッ とたたたたた~!!

「むっきゅーーー!!」

引っ付いていたコニーが俺から離れ洞窟の奥に向かって急に走り出してしまった。

「え、ちょ、コニー!?」

普段のポテポテトテトテ歩く姿からは想像の出来ない速度で走り出したコニーの俊敏な動きに呆気にとられているうちにコニーは見えなくなってしまった。

「はっや……じゃなくて!追わないと!」

〔索敵〕を再度発動させ光源としてリュックからカボチャを出してかぶり視界を確保しながら洞窟の奥へと爆走しているコニーを追いかける。

ファーゴブリンは奥に固まっているので道中でコニーが襲われることはないだろうが、コニーが向かっているのは多分一番奥の広場だろうし、急がないと!

広場へとたどり着く直前でコニーを発見し捕獲する。

「捕まえたぞ、コニーどうしたんだよ?急に走り出して!?」

「むっきゅー!」じたばた

激しく暴れて俺の手から逃げようとするコニーを逃がさないように悪戦苦闘していると奥からファーゴブリンが現れた。

俺たちが今いるのは広場の手前なので何事か確認に来たのだろう。

「うげっ、ヤバイ。」

暴れるコニーを押さえながらファーゴブリンの方を向き身構える。

しかしファーゴブリンは襲ってくる様子はなく、何故か暴れているコニーをじーっと見ている。

襲ってこないことを不思議に思いながらも襲ってこないならとゆっくり後ずさりしていると奥から声が聞こえてきた。

「もし、そこに居るお方、どうぞこちらへ。」

うぇ!?話しかけられた!?今出てきたファーゴブリンも奥に引っ込んだし、とりあえず俺も奥へいくとしよう声をかけられたしコニーも暴れるし。


奥にいくと広場は何故か明るく、そこに数匹のファーゴブリンに囲まれた黄色い毛玉が鎮座していた。

「始めまして、人間の子供さんとマイコニドさん。」

色は違うがファーゴブリンキングにそっくりな毛玉だな、喋りかけて来てるから明らかに知能が違うみたいだが。

「ああ、始めましてえーと?ファーゴブリンさん?」

戸惑いながら返事を返すと毛玉はフフッと笑い。

「私はファーゴブリンではないですよ、キングと見た目はよく似ていますけどね。」


「あー、それじゃあ名前か無ければ呼び名を教えてもらえると助かるんだが。」

俺の問いかけに対し黄色い毛玉はまたフフッと笑って。

「私はブレイズオークと言う種族です、まあこの子達の母親でもあるので、マザーとでもお呼びください。」

オーク?オークってたしか豚の魔物だよな?ファーゴブリンキングと見た目に差異がないんだが、あーでもよくよく見ると毛の感じが違うか?ファーゴブリンキングは毛がゴワゴワだったけどマザーはモコモコしている……ように見える。

それぐらいしか違いがわからないんだが、オークなのか。

「あー、それでマザーさん何で俺に声をかけたんだ?一応俺達は巣に無断で入ってきた侵入者なんだが?」

「たしかにあなた達は侵入者ですが、私たちを攻撃したりはしないでしょう?」

「その根拠は?」

「少し前にキングの召集の咆哮が聞こえ巣の中にいたファーゴブリンの殆どが出ていき、先程キングの断末魔が聞こえて来ました。そして今、あなた達がここに居ると言うことはキング達はヤられてしまったのでしょう。」

「ああそうだな。」

「キング達と戦闘をしてきたわりにはあなた方は怪我をした様子もありませんし、かなりの強さを持っている事でしょう。そんな人達が様子を見に行ったこの子を攻撃せずにいましたし、それに何より攻撃の意思があるなら私たちは既に攻撃されてるでしょうし。」

マザーは笑いながら先程様子を見に来ていた(と思われる)ファーゴブリンの頭を撫でながらいった。

「あとはメスの勘ですね。」

勘か……それはズルいな反論がめんどくさくなったぞ。

そして暴れるコニーを押さえるのが辛くなってきた。

「おい、本当にどうしたんだ?コニー?」

「むっきゅー!むっきゅー!!」

とにかく奥に行こうと暴れ続けるコニー、マザーとの会話中も俺の腕の中で暴れてるんだがすごい体力だ。

さっきまではコニーもバテていたはずなのに、それに奥に行こうとしてるみたいだがここより奥には何もないように見える。

「あらあら、マイコニドさんは随分アレにご執着のようですね?」

マザーはそう言うと自分の居る場所の近くの壁から小さなキノコを取るとコニーに渡した。

「むっきゅー♪」

コニーはキノコを受けとると嬉しそうにキノコに頬擦りし始めた。

「これは?」

見た目は黒こげになったエノキって感じだが、コニーはキノコを受けとった途端大人しくなった。

「それはエナジーマッシュルームとゆうキノコです。」

「エナジーマッシュルーム?なんかヤバそうな名前だな、大丈夫なのか?このキノコ。」

「はい、エナジーマッシュルームは特殊なキノコで食べると3日は不眠不休で行動する事が可能となります。」

エナジー過ぎないか?大丈夫と言われても食べる気があんまりおきないな。


「副作用とかないのか?あとコニーは何でこのキノコにご執心状態なんだ?」

「副作用はありませんが人間には効果がありません、マイコニドさんがそんな状態なのはエナジーマッシュルームにはマイコニドさんの様な植物系の魔物にとって抗いがたい香りを発するのだとか、大人だと我慢できるらしいのですが。」

成る程コニーはまだ子供個体っぽいししょうがないのかな?

ついでに気になったことを色々聞いていくか~コニーも大人しくなったし、なんだかマザーも会話が楽しいみたいだし。

「この広場だけ明るいのは何でなんだ?光源はないようにみえるが。」

「この広場にはエナジーマッシュルームの効果を受け続けて変異した苔が生えていてそれが発光しているんです。エナジーマッシュルームが生えているのがこの広場だけなので他のエリアは暗いんですけどね。」

ここに元々生えてたのがどんな苔かわからないが、エナジーマッシュルームのせいでスゴい光り苔に進化でもしたのか?


「俺はキングや他のファーゴブリンを殺してここに居るわけだが、ぶっちゃけ憎くないのか?」

「私たち魔物には絶対のルールがあります。それは弱肉強食です、弱いものが死に強いものが生きるこれが絶対ですので、余程理不尽なことでない限り憎いとゆう感情は現れません。」

魔物のルールは解りやすいなとか思っているとマザーは続けて言った。

「それに今回先に手を出したのはキング達の方ですし自業自得とも言えますしね。」

マザーは笑いながら言っているが魔物にとっては普通の事なんだろうか。


「何でファーゴブリンと一緒に居たんだ?協生関係にでもあるのか?」

「私たちブレイズオークはメスだけの種族なので近縁種であるゴブリン種やコボルト種のオスと子をなすので強いオスに引っ付いていただけですよ……力だけの無能でしたけど。」

最後の方でぼそっと聞こえた言葉は聞かなかったことにしよう。


「ここに居るファーゴブリン達は外に出てきた奴等とは雰囲気が違うが、何でなんだ?」

さっきから周りで俺とマザーの会話を聞きながら頷いたり首をかしげたりしているファーゴブリン達に知性を感じてしまう。

「この子達は私が様々な事を教えている途中なのです。相手の状態を把握することや敵意があるかどうかを見る事を覚えれば生き残る確率はグッと上がりますからね、あとは言葉なんかも教えていくつもりです、対話ができれば無用な戦闘を回避することが可能でしょうし。」


「その考えは間違ってないが魔物は弱肉強食じゃないのか?」

「対話の対象は知性のある魔物や人ですよ、知性のある生き物相手に下手に手を出すと痛い目に会いますからね。」

しっかり考えてるんだな、これだけまともな思考をしてるヤツが側にいてもあのキングは駄目なままだったのか、本当に脳みそ筋肉モリモリマックスバリューバカはどうしようもないな。


「最後に聞きたいのはマザー達はこのままで生きていけるのか?かなり数を減らしてしまったが。」

「心配は要りませんよ、私も死者の森で生きている身ですし、この子達と協力しながらのんびり生きていきますよ。」

「そうか、頑張ってくれ……としか言えないな。」

こんな状況にしたのは俺だが、何かしてやれる訳じゃないしな。


そんな感じでマザーとの会話を終えてログハウスに戻る途中でコッソリと〔検索〕しておいたマザーの情報を見る。

ブレイズオークパワード、Sランク、ブレイズオークの進化個体であり、力に特化しておりドラゴンですら簡単に殴り殺すことができるが、ブレイズオーク事態がとても温厚な性格の種族であり、滅多に戦闘をしようとしないのでその力をしるものは少ない。

耐性属性、水、氷、雷、斬撃、衝撃。

弱点属性、火。

わあ~、これなら確かにマザー達は大丈夫ですな~、ドラゴンを見たことはまだないけどマザーと戦わなくて良かったと心底思える1文だわ。


ログハウスに戻り虎熊にファーゴブリンとの戦闘やマザーとの会話を話しているとき、コニーがエナジーマッシュルームを口に入れようとしているのが見えた。

毒はないらしいし大丈夫だろうと放っておいたが、少ししてコニーが倒れた。

「え?どうした!?大丈夫か!?コニー!」

倒れたコニーに近づき呼吸と脈の確認をする。

「呼吸も脈も正常だし体に斑点なんかの異常も見えないし気絶してるだけっぽいな。」

気絶してるだけなことにホッとしつつコニーの様子を見る。

「おいキョウジ!コニーは大丈夫なのか?急に倒れたが。」

「ああ、だいじょ。」

ピカーッ!!

虎熊に大丈夫だと言おうとした途端コニーが光だした。

「うぉ、眩し!」

あまりの眩しさに目を腕で庇い光を避ける。

「お、おいキョウジ、コニーを見てみろよ。」

虎熊の言葉を聞き腕を下ろしてコニーを見る。

そこには姿の変わったコニーがいた。

身長が少し伸びて、背中にあったしいたけの傘が頭に移動しており帽子を被っているようにみえる。

「え?なにこれ?何が起きたの?コニーの姿が変わってるんだけど。」

「これはアレだ、コニーが進化したんだな。」

え?進化?そもそもマイコニドって進化する種族なの?

「不思議そうな顔をしているが魔物はみんな進化するぞ?とりあえずコニーをいつもお前が使ってる〔検索〕で見てみろよ、そんでどんな進化したか教えてくれ。」

虎熊に促されて未だに目を覚ましてないコニーに〔検索〕をかける。


エンペラーマイコニド、SSランク、マイコニドが膨大なエネルギーを摂取することでなれる、毒の威力が上がっており肌に触れると肉が溶けるので注意が必要、頭にある傘から幻覚作用のある胞子を出すことができる、口からとても甘い粘菌を分泌することができるが、この粘菌には強い中毒症状を引き起こす成分が含まれているため決して口にしてはいけない。

「エンペラーマイコニドか……情報を見る限りじゃとんでもない能力だらけだな。」

「んははは、エンペラーとは随分と凄まじい進化をしたもんだな、噂じゃあドラゴンですら近付かないって聞くぞ。」

帰りに確認したマザーの情報にも乗ってたがドラゴンってそんなに強くない部類なのかな?それともマザーやコニーが特別なのか?

「なあ虎熊、ドラゴンって普通どのくらいのつよさがあるもんなんだ?」

「んー?ドラゴンか?そうだな~、B~Zランクに満遍なくいるからなぁ、強さで言えばBランクのドラゴンはギルドランクAなら一人でギルドランクBなら最低5人からってとこだな、Zランクの魔物は災害級だから正直普通の人間にはどうにも出来ないだろうなぁ、英雄クラスなら話は別だが。」

おっと、もしかして魔物のランクとギルドのランクは別物なのか?コニーもまだ起きそうにないし、起きるまで虎熊に色々聞くとするか。


「魔物とギルドのランクって何が違うんだ?」

「魔物のランクは魔物がおこす問題や魔物自体の危険度を総合して国が出したもので、ギルドのランクは今までの働きに応じてギルド側が出すものだ、だからギルドによっては早い段階でランクが上がったりもするらしいぜ。」

「それだと自分の実力以上の仕事をするはめになるんじゃないか?死人とかスゴい出そうだな。」

「勿論どんな依頼を受けるかは自己責任だからな、死んでもギルドは基本的にはノータッチさ。まあ、あんまりにも死人が大量に出ると国から調査が入ったりギルドの信用がなくなるから依頼事態が来なくなったりするけどな。」


「ギルドはそんなにポンポン作れるもなのか?」

「国営ギルドと市民ギルドってのがあってな国営は国が運営してて案外あっさりできる、市民ギルドはギルドを立ち上げるヤツのランクが一定以上と土地と建物を買う金があれば建てることができる。」

「国営と市民でどう違うんだ?」

「国営のギルドだと依頼に時間が掛かる、依頼内容を国側がしっかり事実確認してから冒険者に依頼を回すからなその代わり依頼料が適切になるし依頼内容によっては国が無料で動いてくれたり、怪我なんかに補償が効いたりもする、市民ギルドは対応は早いが事実確認なんかはしないから依頼の場所に行ってみたら内容と全く違う何てこともあるらしいし、補償も無い、代わりに達成できれば国営より金の回りがいい。」

安全にコツコツ国営か、一発狙いで市民か、どっちもメリットデメリットがハッキリしてて良いかもな。

「まあ、大体の冒険者は両方に登録するのが普通らしいがな。」

「それって良いのか?」


「ギルドに登録するとギルドカードってのが貰えるんだ、これは世界共通の身分証になるんだが市民ギルドで貰えるカードは国によっては受け付けてくれないことがある、これはそのギルド側の問題なんだがな、簡単に言えば他国に信用されてないってことだ。国営のカードは国が正式に認めた冒険者ってことだからすんなり受け入れられるわけだ。」

「国営のカードって申請に時間かかりそうだな。」

「ああ、掛かる掛かる1週間くらいザラらしいぞ、信用されるためのカードだしな仕方がないと言えば仕方がないさ。」


「む~ん、きゅ~。」

虎熊にギルドについてのあれこれを聞いているとようやくコニーが目を覚ました。

「お、ようやく起きたかコニー、体調はどうだ?」

眠たそうに目を擦るコニーに声をかけるといつもと変わらない笑顔で「にーちゃ!」と言った。

「………コニーが喋った!?」

「にーちゃ、こっ!」

そう言いながら手をつきだしてくるコニー、多分抱っこって意味なんだろうが俺の驚きの声は無視ですかそうですか、まあ良いんだけどね。

手をつきだしてきてるコニーを抱き上げ、頬っぺたをつつきながら聞いてみる。

「喋れるようになったんだな~にーちゃ以外に何が言える~?」

コニーは虎熊を指差して「とら!」と言ったあと冷蔵庫を指差して「ぞうこ!」と言った。

そのあとも電子レンジを「れんじ」と言ったり掃除機を「じき」といったりしていろんなものを指差してはコニーなりの呼び方をしていた、しばらくそれを繰り返してむふーと満足げな顔をしているコニーの頭を撫でながら「色々言えるようになったんだな~スゴいな~。」と褒める。

「むきゅ~♪」

今のコニーの頭はキノコの傘状態なので俺はキノコの部分を撫でている訳だがコニーは気持ち良さそうにしている。

ぐうぅ~

しばらく撫でているとコニーの腹がなったので、虎熊にコニーの相手をしてもらい俺は晩飯をつくる。

アルファのところから適当な野菜を拝借して水で洗い適当に切ってサラダをつくり、ファーゴブリンの肉を焼いてみた……のだがゴム質の肉で噛みきれなかった、焼いたときの匂いは普通の豚肉だったし見た目も普通の赤み肉だったから油断していた、最近は料理をするのにも手に魔力をまとわせて食材を切っていたから肉自体の固さや弾力なんかはあまり気にしてなかった。

「むーきゅー!」ぐいぐい

コニーが肉を噛みちぎろうと頑張っているが伸びるだけでちぎれる様子は全く無い。

「コニー無理するなよ、歯が飛ぶぞ。」

「むきゅ~。」ちゅぱちゅぱ

コニーは噛むのを諦め未練がましく肉に吸い付いている。

「こらこら、お行儀悪いからやめなさい別のやつを作ってきてあげるからな。」

「むきゅ!」

とりあえず失敗作の肉は下げてフィンガーフィッシュの指とエリンギのわさび醤油炒めをつくりコニーに出すとペロッと平らげてしまった。

「むきゅ~、もっと!」

「おお?おかわりか?」

「むきゅ!」

進化前はさっきの一皿で満腹になっていたのにたくさん食べるようになったんだな。

進化することでランクや強さが上がっただけでなく食べる量も上がったんだと思いながら同じものをつくり、出してやった。

結果、どんぶり3杯分はきれいに平らげおった。

これが俺の3ヶ月かんの記憶である。


それで俺が今何をしているかと言うと、虎熊をいれるためのゴーレムを作製しようとしているところだ。

今、虎熊はナイフに入っているわけだがナイフの状態よりもゴーレムになっていた方が便利だろうし俺としてもナイフと会話するとゆうシュールな映像は何とかしときたい。

……それになんだか嫌な予感がするので人手を増やしておきたい。

虎熊が入るボディなので虎熊に意見を聞いていくが、ただつくるだけでは面白くないしゴーレムを作ることは伝えないで質問していく。


「なあ、虎熊今からいくつか質問するから答えてくれ。」

「んー?別に構わんがなんだ?なにかやるのか?」

「お前に関係あることだが終わるまで内緒だ、先ずは男と女ならどっちになってみたい?」

「どっちでも良いとしか言えない質問だなー俺様は性別についてはあんまり関心がないし。」

性別については服装でどっちにも見える中性てきなボディにしておくか。


「次はなってみたい顔つきとかあるか?」

「人間の美醜はよくわからんしな~強いて言えば目付きが鋭いのは格好いいと思うな。」

目付きを鋭くしてあとは適当に整えておこう。


「次はシャープなボディとずんぐりむっくりとムキムキだったら何れが良い?」

「なんか極端だな……その中ならシャープな方が動きやすそうだよな。」

ボディはシャープな感じにして身長は少し高めにしておくか、170くらいで。


「皮と鱗と毛と鉄なら何れが好みだ?」

「どうゆう意図の質問かわからんが……馴染んでるのは鉄だな、けど皮製品が入ってて一番気分が良かった覚えがあるな。」

ゴーレムの素材は鉄と皮の混合でいこう、鉄はポイントでゴーレム製作用のやつを買って皮はタイラントリザードのを使おう……あと余ってる魔物たちの骨。


「よしこれであとは服を整えて完成だな。」

「ん?もう良いのか?何ができるのかわからんが完成したなら良いや、あとで見せてくれよな。」

「おう!」

出来上がったゴーレムにしっくり来る服を設定して装備は虎熊をいれたあとで虎熊好みのやつを自分で選んでもらうとしよう。

あと、パソコンを触ってるついでに虎熊がいま入ってるナイフを壊すための装備をアルファに装備させよう、ポイントがかなりあるから多少は消費しとかないとな、アルファが来たときに部屋を作って消費したけど、作った時にかかったポイントは普段の狩りとファーゴブリン達との戦闘で殆ど回収できちゃってるし、むしろ貯まりすぎてて扱いに少し困ってたんだよなー、交換出来るものの中には無駄に高そうな壺とか絵とかあったけど実用性がないし興味もないからとらなかったんだよな、溜め込むだけじゃあポイントの意味無いし~ようやくまともに大量消費できるぜ。


なんやかんや必要な物を準備をして外に出る。

「作ってたものは出来たのか?」

「ああ出来たぞ、これから見せるな。」

ケータイから作ったゴーレムを呼び出し虎熊に見せる。

完成したゴーレムの見た目は服装も相まってクノイチのようになってしまったけども虎熊に聞いた要望(虎熊はゴーレムの事とは思ってない)通りだと思うがどうだろうか。

「んはは、格好いいゴーレムだなー、けどこいつどうすんだ?」

虎熊の質問に俺はニヤリと笑いながら答える。

「これからお前をこのゴーレムに入れるつもりだ何だが異論はあるか?」

「は?俺様がこのゴーレムの中に入るのか?……入ることに異論はないが良いのか?俺様が入るとこのゴーレムの攻撃力は0になっちまうぞ。」

そう言った虎熊の声には元気がなかった、そりゃそうか虎熊が棄てられる原因は虎熊の能力にあるわけだし、ゴーレムに入れられないから要らないもの扱いされてた訳だしな。

「安心しろこのゴーレムはもともと攻撃能力は皆無だ、こいつのステータスは速さと器用さに極振り状態だからな、むしろお前が入ることで能力が上がるんじゃないかと思ってる。それとないつか町の方にもいこうと思っててな、俺は見てのとおり子供だから保護者役もお願いしたいんだ。」

町をうろついて補導されて保護者がいないから保護なんてめんどくさいことになりたくない。


「んはは、そうか……なら任せてくれしっかり保護者役を演じてやる!……それでそのゴーレムに移るのにこのナイフの体を壊さなきゃいけないわけだが、キョウジが壊すのか?俺様が入ってるせいで切れ味は0だが耐久はそこそこあるぞ?」

「大丈夫だそのためにアルファに新しい装備をつけさせてある。」

ギュォォォォォォオオン

俺がそう言うとアルファがけたたましい音と共に現れる。

(=`ェ´=)

「な、なあキョウジ、アルファの右腕で回転してるアレはなんだ?何だかとっても嫌な予感がするんだが……。」

虎熊の声が震えている気がするが多分気のせいだろう、うん気のせいだ。

アルファの右腕につけたのはゴーレムの装備一覧にあった中で一際目を引かれた装備、ギガダイヤモンドモンスター、 説明文には削岩用のドリルにダイヤコーティングを施し魔法で耐熱性やその他もろもろを付与したモンスタードリルと書いてあったドリルを装備する際にショベルのパーツは外れてしまったがまあいいだろう。

「おい!キョウジ!お前まさかあの装備でアルファに俺様を壊させる気じゃないだろうな!」

虎熊がかなり焦りながら俺に聞いてくるので俺は笑いながら答える。

「ハッハッハッ!そのとおりだ、見ろアルファのあの表情を殺る気満々じゃないか。」

(ФωФ)の顔文字でこちらを見つめるアルファ、それを見て虎熊がさらに騒ぎ始める。

「いやいやいやいや!あれじゃあ表情読み取れないって!しかもお前さっきやるきの時をなんて書いて発音しやがった!?俺様の気のせいじゃなければ殺す気と書いてやるきって読みやがらなかったか!?」

虎熊がギャーギャー騒いでいるがこのままでは話が進まないので無視して準備を進めることにする。

とは言っても準備はゴーレムの前に台を置きその上に虎熊を乗せるだけである。

「おいこらぁ!黙々と俺様を処刑台の上に置くんじゃねぇ!」

処刑台とは人聞きの悪いとは思いつつも返事はしない。

「よし!準備は出来たぞ!さあアルファ!一思いに殺ってしまえい!」

( ゜Д゜)ゞギュオオオオオオン

「ちょ!ま!ほんとにやめっ!!ぎゃぁぁぁぁ!!」ギュガガガガガッッ!!!


凄まじい破壊音と共に当たりに虎熊の断末魔が響き渡り土煙が上がる、土煙はアルファが勢い余って地面にまでドリルを刺してしまったからで、断末魔については虎熊は痛みは感じないはずなので多分恐怖が極まった際に出た断末魔だろう。

「おおう、土煙が酷くて何も見えんな。」

風の魔法を使い土煙を晴らし視界を確保する。

そこにはドリルが地面に刺さり抜けなくて(;・∀・)の表情のアルファと全く動くようすの無いゴーレムがいた。

「あ、あれ?もしかして失敗した?」


俺の中に焦りが生まれ色々と考えてしまう、ゴーレムに乗り移るのに失敗したのなら虎熊は何にに乗り移ったのか?何にも乗り移れずに消滅してしまったのか?などの疑問が頭に浮かんでは消える。

しかし俺の頭のなかの大半を占めていたのは家族を殺してしまったと言う恐怖と絶望感だった、家族の皮を被った連中を殺処分したときやゴミ共を処理しているときには一切感じなかった罪悪感……焦燥感?何でも良いや……本当にどうしよう、俺はどうしたら良いんだ……?

そんな感情に苛まれている時に俺の後ろに立つ何者かの気配を感じた。

「こんのぉ……ばっっかやろおぉぉがぁぁぁぁ!!!!」バコーーン!!!

「ぐふぅあ!」ヒューン ドサッ

後ろに立った気配の正体を確認しようと振り向いた瞬間蹴り上げをくらい天高くぶっ飛んだ。

地面に墜落したあと、俺を蹴り上げたやつの方を見る。

「まったく!無茶苦茶しやがって明らかに要らない威力だっただろうが!!」

俺を蹴り上げたやつは如何にも怒ってますオーラを出しながら俺がさっきまで頭を抱えていた場所に仁王立ちしていた。

「お、お前もしかして虎熊か?」

「あ?俺様以外に誰がこのゴーレムに入れるってんだよ。まあ確かに入ってすぐには動けなかったけどな。」

俺が虎熊だと直ぐに判らなかったのはゴーレムの姿にあった、俺が作ったゴーレムはマネキンの顔立ちと体つきを整えただけの姿だったが虎熊が入った影響か腰まで届く銀色の髪?みたいなのが生えていたからだ、けど今は虎熊に生えた髪?については後回しで……虎熊が無事だったことを嬉しく思う。

「良かった~成功してたんだな~……本当に良かったぁ。」

泣きそうな声でそう言った俺に虎熊はかなり動揺していた。

「お、おいおい、なに泣きそうな声出してんだよ、お前がやったんだろうが。」

「いやだって本当に死んだのかと思ったし……これからはテンションに任せてああゆうことするのは控えるよ、ごめんな虎熊。」ションボリ


もともとテンションが上がると必要以上の火力を求め気味ではあったが地球ではセーブ出来ていた、どれだけテンションが上がってもせいぜい大型トラックに大量のダイナマイトを詰めて敵陣のど真ん中で爆発させる程度だったのに異世界に来てからどうも歯止めが利かなくなってきてる……もしかして身体だけじゃなくて精神も幼くなってた?


「ふー、まあ、次からは気をつけてくれよ?今回は目立った被害が無かったから良かったが次はどうなるか分からんからな!!」

虎熊に許されたので次からは気をつけてテンションが上がっても一呼吸置いてから行動しようと思った。

そして俺が怒られてる間もアルファの右腕は抜けておらず引っこ抜こうと悪戦苦闘していたが、虎熊の目立った被害が無いの言葉にσ(`・・´ )?の表示で寂しそうに此方を見ていた。

「いやー、キョウジさんは本当によく働きますね~。」

当たり一面真っ白な空間の中で大きな姿鏡の前に座り込み嬉しそうに膝にのせた水晶玉を覗きこみながら男が呟く。

姿鏡には謎の文字が現れては消えるを繰り返し、水晶玉にはキョウジの姿が写し出されていた。

「最初はボストール様の部下とはいえ人間に大きな力を与えるのはどうかと思ってましたが、この3ヶ月の仕事ぶりを見ていると任せて良かったと思えますね。」

彼……オルダーがキョウジに依頼したのは彼の世界アラトスで起こる神が介入出来ない問題事を何とかしてもらいたい、なのだがじつはキョウジに伝えてない事があった。

それはキョウジがパソコンで使っているポイントとオルダーがやらかした事態についての関連性の説明だ。

キョウジは何も気にせずポイントを使って買い物をしているが、使われたポイントはオルダーが世界の管理や調整を行うための力となる。

本来ならそんな面倒なことをしなくてもよいのだが、オルダーはアラトスを作る際に必要な機能、アラトスで生物が死ぬと死んだ生物の力の数%が神に還元されるシステムをアラトスが出来上がってから入れ忘れた事に気づいたのである。

すでに世界が出来上がったあとなのでそのシステムを新しく組み込むことも出来ず、かといって放っておけば神に力が一切戻って来ないので世界は崩壊に向かうのみ、しかもオルダーの世界は一部の神の世界ともうっすらではあるが繋がりが有るため、オルダーの世界が崩壊した場合、他の世界にも何かしら良くない影響が出てしまう。

しかしオルダーにはどうすることも出来ないため、オルダーの世界と繋がりが有る中で一番力が強く具体的な対応策を出してくれそうなボストールを頼ったのである。

その際にボストールから色々とお小言を貰ったが、ボストールの信頼できる部下を派遣して貰えることになり更に派遣された人物が生き物を殺した際にでた素材をポイントに変える、その際ポイントに変わった素材はオルダーの所に直接送られ、それをオルダーが力に還元する。

本来なら自分が作った世界とはいえ神が直接手を出すようなことは出来ないのでオルダーがアラトスから死体を自分の所に持ち込んだりは出来ないのだが、ボストールの世界から来たキョウジを間に挟むことでそれを可能とした。

なら、なぜボストールは自分が作った世界で好きにあばれてるのかと言うと、地球にいるボストールは神であるボストールが作った人形のようなものであり、地球のボストールにはなんの力もなく、動くことさえない、神であるボストールが必要なときにだけその体を操り行動させているだけなのだ……たまに調子に乗ってやり過ぎることもあるが、そこは力のある神様故の誤魔化しで何とかしているようだ。

神として干渉している訳ではなくあくまでボストールの形をした人形が暴れているだけなのであると。

キョウジは自分が仕事をしてないのを気にしていたが、実はしっかりと仕事をしていたのである。

「この調子でお願いしますね、キョウジさん。」

オルダーは水晶玉に写ったキョウジに向かって笑顔で呟いた、その姿は完全に変人もしくは変態である。

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