第4
パソコン内のチェックを終えたときには、外は真っ暗になっていた。
くぅ~
コニーがお腹を押さえてこちらを見ている。
「お腹すいたのか?」
「むきゅ~。」
「じゃあ何か食べようか。」
「むきゅ!」
元気よく返事してくれたのは良いが、いまわかってる食材は俺の持っている米だけなんだよな…。
確か冷蔵庫もあったし中身をチェックしてくるか、ワンチャン調味料でもあればめっけもんだし。
コニーを抱っこした状態で管理人室を出る、部屋の移動は上手くいったようで入り口前の廊下にでれたので、そのまま冷蔵庫まで移動。
冷蔵庫を覗くと醤油とチューブわさびしかなかった。
冷凍室には氷のみで、野菜室には四角いパックの味噌とエリンギが1本入っていた。
料理できない独り暮らしの男の家の冷蔵庫みたいだな。
味噌と醤油があるし、それだけでも米は化けるから助かるが…エリンギをどうするかな、そもそもコニーはエリンギ食べるのか?
「むっきゅ!むっきゅ!」
エリンギとにらめっこしていると、コニーがエリンギに向かって手を伸ばしてくるので、渡してみた。
「むきゅ~?むきゅ?む~?」
渡したエリンギを物珍しそうに眺めるコニー、くるくる回したりぺちぺち叩いたりしている。
楽しそうに遊んでいる、と言うよりは、何かを確認しているように見える。
「満足したらエリンギ返してな。」
エリンギ観察をしているコニーをおいといて、調理器具を探していると、なにやら力のこもった「むっきゅ!」が聞こえてきたのでコニーの方を見ると、口にエリンギを加えて立っているコニーを発見。
ナニゴトーと思いながらコニーを見ていると、お尻をふりふりし始めた。
何度か、その場でふりふりしたかと思うと右にとてとて、ふりふり、左にとてとて、ふりふり、くるくる回って、ジャンプ、ジャンプ、そしてまたお尻、ふりふりの謎ダンスを踊っている。
何の儀式なのかと思いながらー〔検索〕。
マイコニダンス、マイコニドがきのこを増やすさいに踊る踊り、本来は5匹以上で踊らないと効果が無いものだが、力の強い個体だと1匹で増やすことも可能。
ほえー、あの幼稚園児のお遊戯みたいな踊りにそんな効果があるのか、コニーは1匹でやろうとしてるみたいだが、コニーは力の強い個体ってことか?そしてどんな風に増えるんだろうか。
わくわくしながら踊りがおわるのを待つこと5分、コニーがしゃがみこみ、力を貯めて元気よくジャンプした瞬間、ポンッと小気味良い音と共に、コニーの両手のひらと頭にエリンギが生えた。
え?増えるってそう言う感じ?いやまあ、確かに両手と頭で計3本増えましたが。
「むきゅ~!」
コニーが、こちらに向かって頭をつきだしてくる、これは俺に頭のエリンギを採れと言うことか……ちょっと悩んだが、コニーが採れと差し出しているんだから、大丈夫と判断してエリンギを引っ張ってみる。
意外に抵抗無くポロっと取れた、頭のが取れたのでつぎに両手のひらのエリンギを採る、こちらも抵抗はなかった。
頭と両手のを採ったら、何かを期待する表情をしたコニーがまた頭をつきだしてきた。
おお、これは私を褒めろの意思表示だな?ペットが良いことをしたら褒めて悪いことをしたら叱る、大事なことだ。
ヒョイ ナデナデ
「ありがとなコニー、エリンギ増やしてくれて。」
「むきゅあ~、む~♪」
抱っこした状態で頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を閉じながら、撫でている頭を手に押し付けてくる、なんだか猫みたいな動きだ。
しばらく頭を撫でていると、またもやコニーの腹がなる。
「そうだったな、腹へったからここに来たんだよな。」
「むきゅきゅ~。」
コニーの不思議な踊りで完全に脳みそから抜け落ちてたわ。
調理器具はフライパンと中鍋が1つ、まな板1枚、包丁が3本、そのうちの1本はでかい牛刀だった。
何で牛刀?確かに刃物は大抵の物は扱えるが、いまの俺の体格だと厳しい気が…。
牛刀はおいといて、晩御飯に味噌とエリンギを使ってチャーハンを作りますとコニーに言ってみる、お腹をならしながら首を傾げているので、チャーハンが何か分かってないのだろうが、晩御飯の単語で腹が返事している可能性。
フライパンにしく油が無かったので、くっつく覚悟で米をぶちこむ、しかし米がくっつく事もなく調理出来てしまった。
エリンギを別に焼いてみても油を必要とせず、もしやと思い調理器具すべてに、〔検索〕をかける。
マジックフライパン……油を使わずとも材料がくっつかず焦げ付かない、水で流すだけでどんな汚れも綺麗に落ち、曲がったりする事もない。抗菌。
マジックナベ……同上
まな板……普通のまな板
包丁×2……普通の包丁
ドラゴンキラー牛刀……ドラゴンを倒すために作られた武器で世界に5本しかない神の雫の1本だった刀を牛刀にした、海王ネプチューンドラゴンの牙をベースに使い、マグマタイタンの核を大量に使用し、イービルアンキロの尻尾を使うことでようやく完成した1振り、なのだがボストールの悪ふざけと悪のりにより作り替えられた。魔力を流すと近くにある水を操ることができ、どんなに硬い物でも簡単に真っ二つにできる、扱いを間違えると危険。
ホゲェェェ!?何このヤバイ牛刀!?あの人何考えてんの!?神の雫とか言うとんでもなくヤバそうなシリーズ名まで入ってるよ!?世界に5本しかないのにここで包丁になってるよ!?1本包丁にジョブチェンジしちゃってるよ!?
いや、落ち着こう、いったん落ち着こう。
どれだけ慌てても、目の前のヤバイ牛刀は無くならない、まずは落ち着いて……晩御飯を食べよう!(現実逃避)
「コニー、お待たせ~ご飯食べような~。」
「むきゅ!」
現実逃避して食べるチャーハンは、とても美味しかったです、まる。
チャーハンを食べ終わり食器を洗い終え、考え無いようにしていた現実に向き合う、と言っても現状どうしようもないし、とりあえずリュックにしまっとこうと思う。
そういえばリュックの〔解放〕もまだしてなかったなと思い、この化け物牛刀をしまうついでにリュックの〔解放〕と後回しにしてた3番のカプセルを開けることにした。
リュックに触れた状態で、魔力を流しつつ〔解放〕と唱える、するとリュックが一瞬薄く光った。
光った後に外見に変化は見られず、リュックの口を開き中を覗くと虹色の目に痛い空間が広がっており、入っていたはずの水筒等は無くなっていた。
しかし、中に入っている物は頭の中にリストとして浮かんでくるし、中の物を出したいときはリュックに触れながら、出てこいと念じると出てきたがしまうときはリュックの口から入れないと入らなかったので、口以上の大きさの物はどうするか考えないとかないとな。
3番のカプセルには、俺の使ってた道具が異世界ナイズされて入っているらしいが、どうなってるんだろうか?
こっちは、オルダーがいじくったはずだしボス風味にはなってないはず!
ボスが手をつけて無いことを祈りつつ、カプセルを開ける。
中から出てきたのは、カボチャの被り物、道化服、白いポンポンのついた赤い革靴、サバイバルナイフ、雨傘、そしてガラホと説明書と書かれた紙束。
だいたい想像通りの中身だな、ガラホまで入れてくれたのか。スマホに変えられたりしてなくて良かった。
ガラホのパカッてする感覚が好きだし、なによりスマホは手に馴染まなかったんだよな、便利、不便より手に馴染む、馴染まない、を優先した俺……。
そんなどうでもいいことは忘れて、説明書と言う名の紙束を見るか、コニーがカボチャの被り物に興味津々なので被せてみる、カボチャの目の部分が青白く光りコニーが見ているであろう方向を照らし出した。
「コニー?前見えてるか?」
「むきゅ!むぅ~?」
コニーの返事した声が明らかにおかしい、聞こえてきた声が機械音声だった。
返事したコニーも首を傾げている、しかも普通被り物をしていると程度はあるが、声が聴こえづらくなる、おまけに俺のカボチャは口のところがガスマスクと同じようになっているので尚更だ。
ライトにボイスチェジャーが、今分かってる機能だがさっさと説明書を見たほうがいいな、口から火でも吹かれたらたまらん。
コニーは声が変わるのが楽しいらしく、なにやらむきゅむきゅ鳴いて遊んでいる、その様子を横目に見ながら説明書に目を通す。
カボチャヘッド……ボイスチェジャー、ライト機能を追加し本来のガスマスクとしての性能をアップさせ、さらに魔法による認識阻害を行えるようにしました、認識阻害はこれを被っている間はそれが誰なのか、たとえ知り合いでも分からなくなります、が目の前で被ったり被っているのがこの人だと分かっている状態だと効果がありません。魔力を流すことで口から帯状の炎を吐けるようにしておきましたので活用してください。ボイスチェジャーとライトは魔力で調節が可能です。
俺のカボチャの口に火炎放射が付いてるってことか……アリだな、そしてオルダーもこう言う改造をしてくるのか、悪意が無いだけまだましか?
ピエロスーツ……防刃、防弾、着ている間は暑さや寒さに強くなりますし弱い魔法なら避ける必要すらありません。着る人にジャストフィットするようにしてありますので成長したあとも着続けることができます、しかも洗濯要らずでもし破れたりしても自動修復機能がついているため修繕の必要もありません。
もともとオーダーメイドではあったけど、普通の服だったのになんだか凄い進化を遂げている。
洗濯しなくていいのは楽だし、防具としても使えそうだけど普段着としては微妙だな、自分の仕事着ながら派手だし普段着にするには違和感ありまくりだし、俺だけ快適にってのもな…コニーは暑かったり寒かったりするわけだし。
着る人にジャストフィットか…試しにコニーに着せてみると最初はカボチャの下に服を敷いたみたいな見た目になっていたが数秒後にシュと音がしてコニーにぴったりになっていた、カボチャ頭にピエロ服……ちっこい俺がいる(笑)。
コニーはピエロ服を気に入ったようなので、そのままピエロ服はコニーに譲ることにしよう能力は魅力的だが、だからこそ弱いと思われるコニーが着たほうが安心出来るし、カボチャは回収するけど、可愛くないし。
ピエロシューズ……かかとを2回鳴らすことで中に浮くことができ、魔力調節で飛ぶことも可能です。こちらはキョウジさんにしか使用出来ません。
これは、俺専用か、他のに比べたらシンプルな能力だが、空が飛べるのは大きなアドバンテージになる、なによりパラシュートやパラグライダーより自由に飛べるのは単純に嬉しい。
ブラックアンブレラ……魔法反射、自動修復能力をプラスして、仕込み銃を魔法銃に変更してありますので、弾数を気にする場合は自分の魔力量を気にして下さい。
おお、これもシンプルに強くなってるな…名前がちょっと気になるけど、1発しか撃てなかったのが魔法で撃ち放題なのはいいな。
ガラホ……このガラホはボストール様がご用意しているノートパソコンと連動しており、ポイント変換、ヘルプがこのガラホでも使えます。
また、ログハウスやショベルカー、ゴーレムをこのガラホで出したりしまったりすることが可能です。
残念ながら、今は通話とメールは出来ませんが、持ち主が一定距離離れると手元に戻ってくるようになってます、防水機能と自動修復機能、おまけでレーザーもつけておきました。
レーザーの威力調節とゴーレムやログハウスの出し入れ、ポイント変換はアプリで出来ますのでご活用ください。
ガラ…ホ?レーザーついた時点で兵器じゃね?しかも通話もメールもできないって……相手がいないからしょうがないけどさ、けど今はって書いてあるから、もしかしたら後々使えたりするのかな?
他のやつも充分兵器だけど、もともと武器として使ってたやつだったりするから、別にいいんだけどさ。
他のヤツがこんな改造されてるなら、ナイフはどんな魔改造されてるやら……たとえビームサーベルになるとか波動砲が撃てるとか言われても驚かないぜ!。
サバイバルナイフ(ソウルイーター付与)……サバイバルナイフは1から作り直させてもらいました、キョウジさんの持っていたナイフをベースにソウルイーターと言う珍しい武器を融合させたのでかなりの強さになってると思います。
ソウルイーターは、普段は普通の剣なのですが魔力を流すことで相手の魂に直接ダメージを与えることができ、魂に与えたダメージはどんな回復魔法やクスリを使っても治すことが出来ません、この特殊能力を持った武器を混ぜ合わせたのでこのナイフも同じ能力を得ています、なので取り扱いには十分に注意して下さいね。
わーい、見た目はほとんど変わってないのに、能力的に化け物になってる~。
ナンテコッタイ。
これまた普段使いしにくそうな能力だこと、魔力を流さなきゃ普通のナイフなのが救いかな。
しかしソウルイーターとは大層な名前だな、珍しい武器ってあるし、ガラホで調べてみようかなー使い心地も確認したいし。
ガラホを手にとって何回かパカパカしてみる、使いなれたガラホの感覚で少し安心するが子ども状態で手に馴染むってことは少し小さいのか?
コニーがパカパカしているガラホをガン見していたので、手招きして近くに寄せ、頭のカボチャを外し胡座をかいてそこにのせる。
その状態で、ガラホを開き機能欄にあるヘルプを表示する。
ここで言っておきたいのは俺の〔検索〕は対象物が目の前にないと調べられないが、ガラホとパソコンのヘルプはキーワードを入れるとそのキーワードについての説明を出してくれる……俺は誰に説明してるんだろうか?
「なあーコニー?」
「むきゅ?」
「そうだよな、いきなり言われても分からんよな。」
不思議そうに俺を見上げるコニーの頭をポフポフと叩いてガラホを見る。
ヘルプにソウルイーターと打ち込むと、ソウルイーターの説明がでてくる。
ソウルイーター……世界に5本しかない神の雫の1本、魔神竜デラセルナが使用していたが、デラセルナの死後行方が判らなくなっていた。斬った相手の魂に直接ダメージを与えることができ、不死者と呼ばれる者たちを殺すことができる唯一の武器。
オンギャァァァァ!!!!またでたぁーー!!神の雫シリーズぅぅ!!何で!?何でなん!?世界に5本しかないって言ってるのに何で俺の手元に2本もあるの!?しかも、こっちは前の持ち主の名前が載ってるじゃん!! 死後行方がわからなくなってたってことは、オルダーがデラセルナって奴を殺ったんじゃないだろうな!?
俺は普段驚きが顔に出にくい方なのだが流石に2本めは予想外だったので凄い顔になっていたのであろう、コニーが凄く驚いた顔で俺を見ていた。
その顔を見て少し落ち着いた自分がいる。
2本めのヤバイ武器は驚きだが、神の雫と言うシリーズは武器としてそもそもどれ程の物なのかを調べるとしよう、あとついでに魔神竜デラセルナって奴のことも。
俺の表情が戻ったのでコニーも落ち着いたのか、空いていた俺の右手で遊び始めた、頬っぺたをつついたりお腹をわしわししたりして軽く相手をしつつガラホに目を戻す。
神の雫……神の雫とは、千年以上昔に存在していた伝説の鍛冶師ゲンマー兄弟によって作られた武器の中で最も使いにくく使い手を選ぶ武器の総称、過去に神の雫を扱えた者たちは判っているだけでも英雄や魔王と呼ばれる存在だけであり、一般的には持つことさえ難しい。
現在神の雫は、王国ティルニア、魔国スーシャー、聖国ストパンがそれぞれ1本づつ所有しており、残りの2本は行方知れずとなっている。
最も使いにくいってことは、珍しいってだけのハズレ枠なの?不良債権なの?しかも持つことさえ難しいって普通に持ちましたけど?
ボスとオルダーが改造したせいで持ち運び可能になったとか?よくわからんが持っても身体に異常は無いし、とりあえず保留。
5本中2本が行方知れずで俺の手元に2本、姿が変わった状態であると……もし誰かが探してたとしてもこんな姿じゃあ見つけられないだろうし、見つけたとしても知らなければ幸せな真実になるだろうな~。
魔神竜デラセルナ……500年ほど昔に存在していた竜、己が暮らしていた竜国を一夜にして滅ぼし隣国の聖国にも手をかけようとしたが、聖国の英雄エリアスによって消滅させられた、デラセルナがなぜ竜国を滅ぼしたのか原因はわかっていない。
倒されたとかじゃなく消滅させられたなんだな、当時の英雄はなかなかに恐ろしいことをするな。
とりあえず今知りたいことは全部調べたので、風呂に入って寝た。
風呂に入るときにわかったのだか、コニーは無性だったのと湯船に浸かると足が届かなくて溺れてしまうので気を付けなくてはならないこと、シャンプーは平気だかボディーソープは背中のキノコ部分を避けて洗わないと嫌がることがわかった。
………薄暗い洞窟の中を俺は一人で降りていく、長い、長い階段を手に持った松明の灯りだけを頼りに下に下に降りていく、どのくらいの時間がたったのか判らないが、降りていく最中になにやら声が聞こえてくる詩のようにも呪いのようにも聞こえる不思議で不気味な声。
「床に付した父を埋め…すがり付く母を撃ち…怒り狂った姉を刺し…笑い続ける兄を切り…泣き叫ぶ弟を沈め…産まれたばかりの妹を食らう…私は…なぁに…私は…ケモノ…私は…醜い…バケモノ。」
その声を聞きながらも俺の足は止まらず下におりて行き、声の主のいるであろう場所にたどり着く、そこには鉄格子がありその奥に鎖に繋がれた人がいる、暗くて顔は見えない。
鉄格子の向こうの人物もこちらに気づいたのか沈黙しており、俺が声を掛けようとした瞬間。
「あなたはだあれ?」
耳の後ろで声が聞こえ、そこで目が覚めた。
「なんだったんだ今の夢は……。」
えらく生々しい夢だった、寝汗が凄いし、怖い夢を見て目が覚めるなんて初めてだ。
夢に出てきたあの場所に見覚えは無いし、あの歌?に聞き覚えもない、カルト宗教のミサを見たこともあるがあんなエグいことを言っているとこは俺の知る限り無かったはずだ。
ただの夢だと切り捨てるのは容易い事だが妙に頭に引っ掛かる、覚えておかなければならないと、俺の中のなにかが訴えかけてくる。
訴えかけてきてるのがなにかは知らないけども!
外に目を向けると既に明るくなっており、朝ないし昼であることがわかる。
夢のことはとりあえず頭の片隅にでも置いておこう、そう言えばコニーはどこ行った?
目を覚ましたとき、コニーは寝ていた場所に居らず回りを見回して見ても見当たらない。
「コニー?」
「む~。」
コニーを呼ぶと呻くようなこえが聞こえた………俺の頭の上から。
驚いて見上げると、なにやら透明で球状の物体がプカプカと浮いており、その中に気持ち良さそうに寝ているコニーの姿があった。
「…………?」
ナニアレ?どうなってんの?変な夢見て起きたらコレ?コニーは幸せそうに寝てるから害は無いんだろうけど、考えてたことがほぼ吹っ飛んだ……とりあえず〔検索〕。
ノーズバルーン……マイコニドが安眠状態のときに発生する現象、マイコニドの体内で作られた粘菌が体外で風船化したもの、体外に排出される際鼻から出てくることが多いのでこう呼ばれている、風で飛んだりすることはなく、どんな強風でもその場でプカプカ浮いている。
んーつまりスゴイ鼻提灯ってことか!漫画とかで、鼻提灯で浮かんだりするのは見るけど、鼻提灯に包まれてんのは初めて見たわ。
バルーンをつついてみるとプニプニとモチモチの中間のような感触がする、ネバついたりベタついたりはしなかった。
中のコニーを起こすのに少し強めに叩いたりもしてみたが、割れる気配がないのでわりと頑丈なようである。
声をかけたり叩いたり、揺すってみたりを何度か繰り返していると、コニーが目を覚ましバルーンの中で大きく伸びをして眠そうな顔でこっちをむき、一言。
「むにゅ。」
「むきゅじゃないのか。」
バルーンの中でむにゅむにゅ鳴いているが起きたなら良しとしよう。
むにゅむにゅ鳴いてるコニーを眺めているとバルーンがゆっくりと下におりて行き、ベッドスレスレのところでパチンと割れ、コニーがベッドに転がる。
「おはよう、コニー目は覚めたか?朝ごはん作るからキッチンにいくぞ。」
「むきゅう!」
完全に目を覚ましたコニーを抱き上げキッチンに向かい、朝ごはんを作る、今が何時か知らないが起きて1回目の食事なので朝ごはん扱いだ、異論は認める聞きはしないが。
朝ごはんを作るといっても材料は米と調味料、のこしておいたエリンギが1本だけなので、焼おにぎりを二種類作った(味噌を塗ったくったのと醤油ぶっかけたの)
朝ごはんを食べ終えて一息つき、今日やることを考える。
まずは武器の威力確認をし、次に魔法の練習、そして余裕があれば食糧の調達と周辺の探索、おまけで気力があれば地雷の撤去かな!せっかく設置したけどコニーが引っ掛かっても困るし、バリアがあるから役に立たないし、でも空中機雷だけは残しとこうあれはコニーじゃ絶対に届かない位置に飛ばしてあるし、何より初日に頑張った物を次の日にすべて撤去するって虚しいしな。
とりあえずリュックをもち、焼おにぎりの食べ過ぎでお腹がポンポコリンになっているコニーを抱っこして外に出る。
武器の威力の確認のためにあの怪魚たちの泳いでいた湖の側に来たが、やっぱり気持ちの悪い見た目の怪魚が泳ぎまわっているが、カボチャと傘の威力確認は湖に向かってやった方が火災の心配がなくていいし、ワンチャン魚が採れるかもしれないし……食えるかどうかは別にして。
まずは、カボチャをかぶり炎を吐いてみる。
最初はチャッカマンレベルだったのが魔力を増やしていくにつれガスバーナー→火炎放射と威力が上がり、マックスで火柱レベルになった。
もしこれを湖にむかってじゃなく、森とかにむかって試していたら森は酷いことになっただろう、住む場所の周りを焼け野はらにするのはよくない。
さっきの火柱によって魚はほとんどが居なくなったが、魚にも神経の図太いのがいるようでちらほらと残ってるやつもいるようだ。
カボチャを脱ぎ、つぎに傘を構える。
俺が使っていた仕込み傘は、持ち手のところにトリガーがあったのだが、こいつには無い。
とりあえず傘の先端を適当な魚にむけて魔力を込めてみる。
すると先端が薄く発光し始め、魔力を込めるのを止めるとドングリサイズの光の弾が飛んで行き魚に当たった。
弾が当たった魚はプカ~と浮かび上がってきたので、靴の能力も試しつつ魚の回収にむかう。
靴のかかとを二回ならすと説明書にあったとおり宙に浮かぶことができた。気分はなんだかピータパン。
バランスをとるのが少し難しかったが、何とか魚は取りに行けた。
取ってきた魚の見た目はブラックバスの背中に人間の指みたいなのが生えており腹びれの代わりに昆虫の足が6本生えている、その上で大きさが中型犬くらいあるので、はっきりいって気持ち悪い。
この見た目では正直食べたくないが、折角取ったので食べられるかどうかとこのグロテスクな生き物の名前が知りたいので魚に〔検索〕をかける。
フィンガーフィッシュ……背中に人間の指のような突起物があるのが特徴の魚、性格は極めて大人しく鈍重なため近くで爆発が起きてもその場でボーッとしていることが多い。突起部分はコリコリとした食感が人気なのだが、身は臭い、不味い、渋いの3拍子のため魔物も食べない。腹にある足で地面にあなをほりそこに卵をうむ。
なるほど、火柱で逃げなかったのはそのせいか……そして身は食えなさそうな感じかな?こんなにでかいのに食える部位が指だけなのか。
まあ、いいやフィンガーフィッシュはリュックにとりあえずぶちこんでおこう、魚だから傷むの早そうだし。
それからしばらく傘の射撃性能をいろいろ試していたら気づいた機能がある、それは銃の種類が変えられることだ。
1発ずつ魔力を込めて撃つと言う行動を繰り返しているとき、ふとマシンガンのような連射が出来ないかと思ったときダダダっと3発の弾が連射された。
まさかと思い、マシンガンをしっかりイメージしつつ魔力を込める。
ズダダダダダッ!!
まじでマシンガンになった、単発のときより弾が小さいが紛れもなくマシンガンだ。
イメージで種類が変わるのならと調子にのっていろいろ試してみる。
ショットガン……魔力を込める量によって発射される弾数が違うようで、軽く込めて撃つと2~3発でしっかり込めると数百は出ていた、込めるのに数秒かかるので咄嗟に使うのにはむいてないな。
スナイパーライフル……込める魔力によって飛威力が変わり傘を開くとスコープを覗いているのと同じ状態に。
ロケットランチャー……コレが一番チャージに時間がかかった、少ない魔力だと弾が出来ず、2分ほどチャージしてやっとまともに弾が飛んだ、しかし時間が掛かるだけあってとんでもない威力になった出来上がった弾が着弾した瞬間、アホみたいな轟音と水柱が上がり、後ろでコニーがひっくり返っていた。
コニーを助け起こし傘の性能チェックを終え、さっきの一撃で大量の魚が浮いていたのですべて回収しておく。
浮いていた魚はほとんどがフィンガーフィッシュだったが、1匹だけ違う魚が混じっていた。
大きさはフィンガーフィッシュの倍くらいあり、アロワナの体に怒り狂ったゴリラの顔とカエルの後ろ足をはっつけたみたいな見た目の魚?だ。
フィンガーフィッシュも衝撃的だったがコイツもインパクトの強い見た目してるなぁと思いなら〔検索〕。
ドーバーフロッグ(幼体)Aランク……ドーバーフロッグの幼体、血の匂いを嗅ぎ付けると百メートル先からでもよってくる。肉食の魔物で幼体でありながらAランクと危険度が高い、爆発音に過剰に反応し近くで爆発音がしたときは我を忘れて暴れだす。発達した後ろ足を持つがエラ呼吸のため地上に上がることは出来ない。
耐性属性、水。
弱点属性、雷。
魚じゃなくて魔物だったのかぁ、さらに言えばカエルなのかぁ、幼体でAランクなら成体はどんなランクになるんだか。
しかし、ログハウスのバリアで魔物は近付けないはずなんだが?
もしかして、この湖はバリアの圏外なのかな?少し離れてるし、もしくは魚の血の匂いに寄ってきて射撃の音で興奮状態になり、バリアを突破って感じかな?
とりあえず森に向かって練習するとヤバそうな武器の確認は終わったから、次は魔法と気乗りはしないがナイフと牛刀の威力確認もしないとな。
ここは何処かの地下室、薄暗い階段を下りた先にある広場、その奥には鉄格子があり鉄格子の向こう側には鎖に繋がれた女性が地面に座り歌っていた。
「床に付した父を埋め…すがり付く母を撃ち…怒り狂った姉を刺し…笑い続ける兄を切り…泣き叫ぶ弟を沈め…産まれたばかりの妹を食らう…私は…なぁに…私は…ケモノ…私は…醜い…バケモノ。」
キョウジが夢で聞いたあの不思議な歌を歌いながら彼女は先程見た謎の人影のことを考えていた。
あの人は誰だったんだろう?この場所を誰かが訪ねて来たのは何年ぶりだろう………。
顔も性別も人間なのかすら判らなかったけど、あの人からは何だか……懐かしい感じもしたし、また会えるような気がする。
それが何時になるかは分からないけど……きっとまた会える。
私はココから動けないから会いに行くことは出来ないけれど、幸い私には沢山の時間があるのだから………会えるその時まで、ゆっくり待ちましょう。
私の犯した罪を忘れぬように口にしながら……ゆっくりと……あの人が来てくれるのを……。