第二
「ここ……何処だ?」
ボスのなげやりな言葉と指パッチンのあと俺、ハロウィンこと片瀬キョウジは真っ暗な空間にいた。
真っ暗で明かり一つ無い、なのに自分の身体は見えている、先ほどまで被っていた頭の被り物は何故か無くなっており、いつ脱げたのかと周囲を見渡すと、代わりに大学生くらいのヒョロい金髪のへたれな感じのにーちゃんがいた。
「はじめまして、片瀬キョウジさん、僕は貴方に救って貰う予定の世界の神、オルダーです。」
……普段なら自称神様の痛い兄ちゃんは無視する所だが、ボスにこの変な空間に一瞬で移動させられてるから、一応信じれるかな。
それにしても、俺の本名を知っているのはボスに聞いたからか、それとも神だからか……まあそんな些細な事はどうでもいいか。
「そうか、なら早速依頼の内容を詳しく聞かせてくれ俺は何をすればいい?」
キョウジの落ち着いた態度にオルダーは不思議そうな顔になる。
「この空間のこと驚かれないのですか?」
この空間、不思議と言えば不思議だが。
「驚いてはいるさ顔に出にくいだけでな、そんなことより異世界に行って何するんだ?俺に出来ることなんざたかが知れてるぞ。」
キョウジの返答を聞きオルダーは少し笑いながら答える。
「フフッ、ご謙遜を……あなたに頼む依頼は僕の世界アラトスで起こる神が介入出来ない問題事を何とかしてもらいたいのです。」
キョウジはオルダーの曖昧な言い方に顔をしかめながら聞き返す。
「何とか、とは随分雑だな、神が介入出来ない事って例えばどんな事だよ?」
「世界のバランスを著しくかく出来事です。地球でいえばアメリカ人が地球には、白人だけが生きていればいいのです!とか言って白人以外を滅ぼす兵器を使うとかですかね。」
おーわブッタマゲ
「おいおい、俺にそんなデカイ事どうこうする力はないぞ?それに異世界なら魔法とかあるんだろ銃弾レベルなら、何とかなるが絨毯爆撃レベルだとどうにもならん。」
野生動物も熊とかライオンレベルなら、相手できるけど異世界ならドラゴンとかだろうし、頭からぱっくり食われてGameoverになりそうだ。
「それについては安心して下さい、僕に可能範囲で力をお渡ししますし、あなたのボスであるボストール様から、あなたに渡す特別な力を預かっています力の内容は本人にしか分からないと、おっしゃってましたので向こうについてから確認して下さい。それと問題解決のやり方についてはそちらにお任せします。」
ボスの名前そんな名前だったのかどうでもいいけど。
「んまあ、それならいいや力を渡してもらえるなら依頼を受けてもいいぜ。ところで報酬はあるんだろうな?タダ働きは嫌だぞ?」
あ、オルダーの奴なんか真面目な顔になりやがった変顔で対抗したろ。
「ブフォ、いきなりなんて顔をするんですか!?」
俺の渾身の変顔を見て盛大に吹き出し文句を言ってくるオルダーに煽りぎみに返事を返す。
「ヘタレオーラの塊みたいな奴が威厳出そうとしてるからぶち壊したろうと思って、ちょっとしたお茶目だ。」
あ、ため息ついてやがる生意気な。
「ハ~、もういいです、あなたへの報酬は、あなたが地球で手に入れることがかなわなかった、家族を報酬として前払いさせていただきます。」
家族が報酬?ドラマとかなら、家族を殺されたくなかったら依頼を受けろとかなんだろうが、違うわなぁ、俺を産んだ奴らは虐待&ネグレクトの黄金コンボかましてくれたから殺して、逃げてるところをボスに拾われて裏社会入りの俺に人質にされるような家族はいないし、ってことは新しい家族を用意してくれるってことか?家族らしい家族を持ったことないし、今はそうでもないが一時期は家族がほしくて仕方ない時期もあったから、まともな家族なら欲しいな。
「家族を報酬でくれるって言うが、俺の言うことハイハイ聞く用な人形と家族ごっこする趣味はないぞ?」
それとも神様の不思議な力によって元々あるどっかの家族の記憶をいじくって俺をそこに入れるとかかな?……どっちもお断りだが。
「わかってます、正確に言えばあなたの家族になり得る者を運命によって引き合わせます。」
良かったどっちも違うのか、それにしても運命的な出会いってか、まあロマンちっちっちだこと俺が脳ミソお花畑のスィーツ系なら万歳三唱なんだろうな。
「家族になり得る者を運命でって、嫁さん候補にでも出会わせてくれるのか?」
もしそうなら子供に虐待とかしない人が良いな、そして欲を言えば可愛いタイプの人がいいな。
「それはわかりません、運命によって引き合わされる者があなたにとってどんな間柄になるかは、本当に運命任せになります、それこそ嫁のような存在になるか、弟や姉や婿のような存在かもしれません。」
なるほど、どんな関係になるかはわからないと……婿は嫌だなぁ~俺そんな趣味ないし、そういう人達を拒絶する気もないけど俺にむける感情は友情以上愛情未満でお願いしたい、オシリホルダーはするのもされるのもお断りの方向で!
「それではこれから向こうに送りますがどこか送り先のリクエストがありますか?」
アホなことを考えていると、オルダーに送り先のリクエストを聞かれたリクエストを聞くって事は、融通が多少は、きくって事だしちょっと細かい注文つけてやろうかね、どこまでのんでもらえるかの確認もかねて。
「そうだな、場所は森が良いなー殺してもかまわない、俺にも倒せるレベルの獣が出てくるとこで、それからその森を拠点にしたいから、勝手に家とか畑とか作っても文句言われたりせず、人は来るけどなんか訳ありでなければ 基本そこまでは入らないって程度には深い場所にしてくれ、あーあと飲める水が近場に湧いてたり流れたりしてるとこで湿気が少ない日の当たる場所で頼むわ。」
俺の要求を聞いたオルダーは少し考える表情になり。
「確認ですけど、キョウジさんに倒せるレベルなら魔物がいても構わないんですよね?」
「ん?だからそう言ってるじゃん。」
普通の獣が居るのかは分からないけど多少の毒物なら食っても平気だし魔物もくえるでしょ。
むしろ生物が居ない場所に放り込まれる方が困る。
「なら大丈夫です!候補地けっこうありますので、こちらで都合のいい場所を選んで送りますね。」
わりと面倒くさい場所を言ったつもりなんだが、異世界ならそうでもないのか?
「それではこれから、僕の世界アラトスに送ります、ボストール様からの力とそれにプラスして、いくつかの特別なマジックアイテムを僕からお渡しします、向こうでご確認下さい。」
オルダーが頭を下げると俺の体が消え始めた。
「おー、貰える物は病気やごみ以外なら、もらうぜありがとさん!じゃ異世界での在住依頼、楽しませてもらおうか!(ついでに地球では禁止されてた事いろいろやったろ)」
キョウジが消えたあとの空間には、オルダーといつの間にかボストールがたっていた。
「ようやく送れたか、これで四人とも無事に異世界入りをはたしたな。」
「ボストール様、本当に彼で大丈夫でしょうか。」
オルダーが心配そうにボストールニ尋ねる。
「んん?俺がえらんだ部下が信用できないって?生意気言うようになったじゃないか。」
ボストールに凄まれてオルダーが慌てて訂正する。
「い、いえいえ!そういうことではなくボストール様が力を与えたとはいえ彼も人間ですいきなり強い力を手にして僕の世界を壊す側に回らないかと…。」
ボストールは鼻をならして否定する。
「フン!そうはならんさ、もともとあいつらは人間の中では優れた力を持っている、あいつらがその気になれば日本はとっくに無くなってるわ!そんな力を任務中も私生活でも、あいつらは無意味に他人を害する事に使ったことは一回もなかったし、大丈夫だ。」
オルダーはキョウジの強さをよく理解してなかったのか、慌てたようすで聞き返す。
「ちょ、ちょっと待って下さいあの人そんなに強いんですか!?」
「え?そりゃ強いよ?じゃなきゃたった四人で島1島占拠したテロリストを壊滅させられないし、力を与えたとはいえ、普通の人間を単騎で問題だらけの異世界に送り込んだりしない。」
言葉を失っているオルダーにボストールはニヤリと笑い。
「ま、安心しろガキの頃にブレーキが壊れてなお人間できてた奴は案外、安定してるもんだ。」
ボストールの表情にうすら寒い物を覚えるオルダーだった。
「ところで、ボストール様。」
「なんだよ?」
「彼らに対する口調と、僕に対する口調がちがうのは何故ですか?あと彼らに当てた手紙の文面もキャラが違ったような……」
「……大人は相手によって口調や態度を替える生き物なんだよ。わかるか?」
「ええ、まあ、そうですね。」
「つまりそういうことだ。」
納得できたようなそうでもないような複雑な表情のオルダーにボストールはそれにと続ける。
「それに俺達の性格も性別も生き方も人間たちにしてみればどうでもいいことなんだ、考えてもみろよどんなに神を信じてる奴だって自分に都合のいい神にしか祈らないだろ?てことは自分に都合が良ければ神自身の性格やらなんやらは二の次ってことだ。」
オルダーはここまでのボストールの話で何となくボストールが言いたいことがわかってきた。
「つまり、いまのボストール様が素の状態で、彼等と会ってるボストール様は彼等にとって都合が良いボストール様ってことですか。」
「そうだ、あいつらの心の中を覗いたことは無いがあいつらにとっては幾らか都合が良い存在を演じてるつもりだ。殺人や強盗も仕事によっては許容範囲で生きることに全力を出すことを応援してくれる、そんな存在を、な。」
殺らなきゃ殺られるの状態で、生き残ったやつも人殺しだから悪とされるのが当たり前の表社会から追い出されたあいつらにとって同じ状況なら殺そうとした方が悪いと言われる裏社会はかなり心地よい場所だっただろう。
ただ、そんな場所にいきなり飛び込んだところで良くて瞬殺悪ければ生き地獄な表に戻されるのがオチだ。
だから裏社会に組織を作り、表社会で生きにくくなった連中を拾っては鍛えて拾っては鍛えてを繰り返して今回みたいな神が介入しにくい、または出来ない出来事にちょこちょこ放り込んでいって最終的には……って考えてたんだが。
「想定外だったな。」
「え?何がですか?」
「ポンコツが4人も居たことがだ。」
「うう……返す言葉もございません。」
オルダーの所から戻ったボストールはタバコを吸いながら考え事をしていた。
イースター、バレンタイン、クリスマス、そしてハロウィン、四人とも無事に能力を渡してやることが出来た……ちょっぴりミスしちまったところもあったが、あいつらなら何とかすだろう。
四人の神達にもあいつらの扱いは間違わないようにとは一応伝えたが、どうなるかは……それこそ神のみぞしるってことで。
それよりも気になるのはあの野郎の事だ、他の3人と同時期にヘルプを出して来たから一応メンバーの一人を割り振ったが……明らかに怪しいんだよなー。
何か良からぬことを企んでますオーラを感じたし……とりあえず、アイツには直接注意するように伝えておいたし、いざとゆうときの切り札も渡してある、あとは俺の方でもあの野郎の動向は探っておくか、かわいい部下を無駄にしたくないしな。
「あーあ、めんどくせぇことになりそうだ。」
ボストールはそうボヤくとフラフラと何処かに消えていった。