1:異世界に転生してしまった
目が覚めると、俺は見知らぬ土地の上に立っていた。
見渡す限り、木、木、木のオンパレード。
どうやら俺は森の中にいるらしい。
「ここはどこなんだ?」
目の前の光景に呆然としていると、脳内にアイツの声が響いてきた。
「ヤッホー。無事転生できたみたいだね。よかったよー」
能天気な声で俺に話しかけてくるマリーに悪びれた様子は一切感じない。
コイツ・・・。
「どういうつもりだ⁉俺はまだ契約書にサインしてもいないのに」
「でも結局はするつもりだったでしょ。だったらもういいかなって。テヘペロ」
いい加減テヘペロをやめろ!イライラしてしょうがない。
俺はマリーに注意するが、それでもやめようとしないマリーを見て、俺はぐったりとした表情でこれ以上追求するのは諦めた。
「まぁ、お前の言う通りたぶんサインしただろうからその件はもういいよ。それより、ここは一体どこなんだ?」
「そうでしょ、そうでしょ。マリーちゃんは気が利く子なんだから!」
俺の発言を聞いて、マリーは誇らしげに胸を張る。
正直ウザい。
「わかったから。それより・・・」
「ええ、ええ、わかってますよ。そんなに急かさなくても今から説明しますとも。ちゃんと一言一句聞き逃さないようにしてくださいね。二度は言いませんから!」
それからマリーがこの世界のことについていろいろと教えてくれた。
まず最初に、今俺がいる場所はファルサリアという世界らしい。
ファルサリアは地球とは別の次元に存在する平行世界。つまりパラレルワールドのようなものだ。ファルサリアには人間以外にも多くの種族が存在するらしく、エルフや獣人などもいるとか。
本当にラノベのような世界観だな。
それにこの世界ではステータスというものが存在するみたいだ。日本で言うところのマイナンバーみたいなものらしいのだが、それに俺の個人情報がいろいろと記載されているようだ。
ステータスを確認するには、「ステータスオープン」と言うだけで大丈夫らしいので、早速やってみる。
「ステータスオープン!」
すると、突如として白い液晶型のパネルが俺の目前に出現した。
俺のステータスは以下のとおりである。
エンドウ ヤマト
レベル:1
種族:人間 年齢:18歳 職業:無職 スキル:「クリエイト・ボックス」 称号:大地主
体力:200 魔力:300 筋力:150 防御力:150 敏捷力:100 精神力:500
ふむふむ・・・レベルが1で、種族が人間、年齢が・・・18歳!?
自分の年齢を見て俺は愕然とする。
どういうことだ!?今の俺の年齢は28歳のハズだが・・・。
それに何かが違う。
身長?体つき?顔・・・。
自分自身に少し違和感を感じ始めたところで、マリーが驚愕の事実を告げてくる。
「大和さん、私が言った言葉を覚えていますか?私は転移ではなく、転生と言いましたよ。転生とは文字通り新たに生まれ変わることを意味するものです。つまり大和さんは新たに18歳の身体を手に入れたというわけなのです。これでも気を利かしたつもりだったのですが・・・嫌でしたか?」
転生時に関する謳い文句のような説明を俺にしてくるマリーだが、最後の方は何故か勝手に落ち込んていた。
別に嫌というわけではないのだが、慣れるまでには多少の時間がかかるだろうな。それに、今の俺の顔がどうなっているのか気になってしょうがない。
すると、マリーが土地購入の特典として俺に与えられたスキル「クリエイト・ボックス」を使って鏡を作り出せると言ってきた。
「クリエイト・ボックス」とは、その名の通り何かを生み出すことのできる箱のことである。
マリー曰く、自分が頭の中で想像した物をそのまま生み出すことのできるチートスキルとのことらしい。
ただ、何でも生み出せるというわけではなく、人間などの命がある生き物などは生み出すことができないらしいのだ。
今後、「クリエイト・ボックス」で何ができて何ができないのかを詳しく検証する必要がありそうだな。
まずは、マリーに教えられた手順でスキルを使っていく。
手順1:ステータス画面を出す
手順2:画面のスキル欄から「クリエイト・ボックス」を選択する。
手順3:「クリエイト・ボックス」を使用して頭の中で手鏡を想像する。
すると次の瞬間、いきなり俺の手のひらの上に小さな手鏡が出現した。
うおー、「クリエイト・ボックス」超便利じゃん。
早速、俺はその手鏡を使って自分の顔を確認してみる。
「───!?」
鏡を見て驚いた。誰だ、この爽やかなイケメンは・・・?
鏡に写っていたのは、自分が18歳の頃とはまるで正反対のような顔立ちの青年だった。
パーマがかかったような癖っ毛のある黒髪に青い瞳、オッドアイというやつか・・・。
それに鼻立ちもくっきりとしており、もしもこの青年が日本の高校生にいたならば、おそらく女子からモテモテだったに違いないぐらいのイケメンぶりだ。
「それが今の君だよ、エンドウ・ヤマト君!」
「マジでか・・・!?」
マリーに言われても未だに信じられなかったので、もう一度確かめるように鏡に映る自分の顔を手で触ってみる。やはりこのイケメンが今の俺らしい。
「それじゃあ、これで説明は全部終了です。あとは自分で頑張って何とかしてね。今から一年後に、最初の徴収にやって来るから、それまでにこちらの世界の通貨単位で一千万円用意しておくこと。あっ、それとこの世界では日本の法律は通用しないから気をつけてね〜・・・・・・」
それだけ言い残すと、マリーの声は徐々に遠くなっていき、しばらくして完全に聞こえなくなってしまった。
森の中に手鏡を持って佇む青年──エンドウ・ヤマト。
正直どこまでが俺の土地なのかは皆目見当もつかないが、計算上では、今俺が立っている場所から約半径750メートル、直径にしておよそ1.5キロメートルが俺の土地だと思う・・・。
「実感わかねー!」
数字だけでは全く全容が掴めないので、時間に余裕ができたなら、これは正確に調べる必要があるな。それに森の中には俺一人だけとは限らない。
もしかしたら魔物なんかが潜んでいたりして・・・。
こうして俺のハチャメチャな異世界生活がスタートしたのだった。
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